カレン族の求婚は女性から

伝統的にカレン族は女性から男性にプロポーズします。カレン族の求婚が女性側から行われるのは、カレン族の社会制度が母系社会であるからです。

純潔、未婚を表す白の民族衣装を着たカレン族の幼い姉妹
純潔、未婚を表す白の民族衣装を着たカレン族の幼い姉妹

求婚は女性から

カレン族銀細工の村に3日間滞在し、カレン族の風習、文化、歴史などを学んできました。

日本ではプロポーズは通常、男性側から行われます。最近は「草食系男子」なんて言葉も作り出され、私のまわりでも女性側から結婚を迫ったケースを何件か知っていますが、それでも「結婚してください!」とお願いするのは圧倒的に男性の方が多いはずです。

しかし、カレン族では伝統的に結婚の申し出は女性から行われます。
「もし女性がプロポーズして断わられたらどうするの?」
と疑問に思った方、当然です。私もそう思いました。

そこで、カレン族銀細工の村で滞在先と食事をお世話してくれたジョディ氏に上の疑問をぶつけてみました。

ニコニコしながら「そういうことはないです。事前に2人で話しあって決めますから」と答えてくれました。

白の民族衣装を着たポー・カレン族の少女。白は未婚を表す。

カレン族は母系社会

カレン族の求婚が女性側から行われるのは、カレン族の社会制度が母系社会であるからです。伝統的に結婚するとカレン族の男性は女性の家に婿入り婚します。親の財産を相続し、家を守るのは娘です。母から娘へと伝えられていくのです。

赤の民族衣装を着て幼子を抱くカレン族の老女と女性。赤は既婚を表す。

年頃になると豚を育てる

伝統的な風習を守り続けているカレン族の村では、女性が結婚できる年頃になると自分の豚を育て始めます。この豚を大きく育て、結婚資金にあてるためです。

家で飼育されている豚。カレン族女性は年頃になると結婚資金などにあてるため豚を育て始める。

古代日本も母系社会だった

日本でも古い時代は母系社会だったと考えられています。
源氏物語で光源氏が夜な夜な女性の家に出入りしているのは、女性の家に通う「通い婚」で、源氏物語の時代の貴族社会で一般的な結婚制度だった思われます。
女性の家族が男性を迎え入れることで結婚が成り立つ、女性が中心の家族制度でした。

現代の日本では女性が男性の家に入るのが一般的で、これは父系社会と呼ばれます。
平安時代の日本では古来からの女系社会の影響が残っており、「通い婚」は母系社会から父系社会へ移行する過渡期にあったと考えられます。
「通い婚」はカレン族と同じ山岳民族でやや低地に住むモン族で風習として残っている村もあります。

源氏物語、若紫/北山の垣間見 – Wikipedia

森に暮らすカレン族

カレン族は伝統的に木々が鬱蒼としげった豊かな森の中に住み、狩猟採集の色合いを濃く残した焼畑農業を基盤とする争いのない平和な生活を送っています。
森に暮らすため、カレン族の居住域は象の居住域と重なります。象を解し、象を操ることができるのは多くの山岳民族の中で森に暮らすカレン族だけです。
ジョディ氏も「昔は象を3頭飼っていたこともありましたよ」と懐かしそうに語ってくれました。