南部鉄器のふるさと・岩手県奥州市水沢で、創業300年を超える及精鋳造所。 当店で大人気の「グリル用ベイクパン」、そして洗練されたデザインの両手鍋22cmを製造している。

ニッポン人ならではの繊細な技で作り上げる南部鉄器の鍋の製造現場をレポート。



及精鋳造所社屋。この裏に
工場が併設されている。


(Report, photo by yamaguchi 2011.4.22


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「水沢鋳物(いもの)」

水沢の鋳物業は、今から約900年前の平安後期、豊田館 (現在の江刺市岩谷堂餅田)に居た藤原清衡が近江国(滋賀県)から鋳物師 を招き、それが水沢市羽田町に伝わったものと語り継がれてきた。

伝統ある鉄瓶、鉄鍋、風鈴でおなじみの「南部鉄器」 と、多くの産業用鋳物を製造している。 60社の鋳物工場と40社の鋳物関連工場から成り立っている。

【鋳物とは?】

砂をガチガチに固めた型(砂型)を造り、そこに溶けた鉄を流し込む。冷めたら砂型を壊して中から取りだす、昔ながらの製造法。

 

 


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【砂型づくり】

鋳物工場のシンボル、キューポラ(鉄の溶解炉)。コークス燃料のものと、電気式がある。

今回はこの手作り両手鍋「リーフ」の 製造
過程を取材。伝統産業ならではの技が光る。

 

1.砂型を作るためには、まずは金型が必要になる。これがその金型。色もついてしまっていてちょっと写真ではわかりづらいが、この四角い1枚の金属プレート全体が金型。この金型自体も鋳物で出来ていて、精巧なレリーフをイメージして欲しい。 2.プレート金型をひっくり返すと裏側はこのような形。こちらは鍋の下側(外側)。
3.四角いアルミ枠で、金型プレートを上下から挟み込んでしっかり固定。ここに砂を詰めて鋳物の砂型を作る。白い表面は、砂をこびりつきづらくする塗料をぬった状態。
4.砂をふるいにかけて枠に入れる。この砂は、溶けた熱が直接触れるため、砂の塊があると製品にそのまま反映されてしまう。よって細心の注意を払う。職人の手の感覚が頼りだ。 5.金型にむらなく砂がつくように手で押しつけて整える。
6.溶けた鉄の温度は1500℃!通常の砂では熱に耐えられないため、珪砂(けいしゃ・けいさ)と呼ばれる石英粒からなる砂を使用。花崗(かこう)岩などが風化してできる。 及精さんでは栃木の日光産のものや、オーストラリア産を使用。 7.珪砂は溶けた鉄が直接触れる部分のみに使用し、砂型の外側には別の種類の黒い砂を使用。上からどさっと落として作業効率を高めている。
8.黒い砂は、小麦粉等を混ぜて粘性を出し、型が固まりやすいように調整されている。砂というより土に近い感触。 9.黒い砂を半分ほど入れてから、圧縮機でまんべんなく押し固めていく。
10.再度、砂をびっしり詰めてから、木蓋をして大型万力でさらに圧縮。そして、ひっくり返して今度は下側を。 11.同様の行程で、鍋の下側(外側)の砂型を作る。
12.砂を詰めたら木蓋をして、こちらも万力で強力に圧縮し、上下の砂型が完成する。 13.溶けた鉄を流し込むための穴を開ける。通常の製品は一カ所だが、この薄さと独特の形状だと2カ所必要となる。

上下の四角いアルミ枠を外して、挟み込んでいた金型プレートを取り外す。

完成した砂型 1

砂型 2 



14.キメの細やかな砂型が完成。 砂型1には、溶けた鉄が流れ込むための通路が整形されているのがわかる。この通路設計が製品の出来上がりを大きく左右するのは言うまでもない。
15.金型プレートを外してから、砂型1と、砂型2を貝合わせにする。これだけ薄い鋳物の砂型は歴史と伝統のある日本でしか作れないのだ。海外の展示会に出品すると、鋳物ではなく鉄板の鍋と勘違いされることもあるそう。
16.生地が薄くて特殊なハンドル形状の鍋は不良品率が高いため、普通のメーカーは作りたがらない。及精さんの高い技術力だからこそ市販品でできるのだ。 17.砂型を囲っていた金属枠を外し、砂型が完成。
18.いよいよ次は、溶けた鉄を流し込む作業に入る。

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