このページはバックナンバーです。(2005年5月16日発行)

東映・松竹編 第2回

 和20年代、天才少女としてスクリーンにさっそうと現れた美空ひばり。幻といわれた作品が最近発見された。東映の前身である大泉映画が昭和25(1950)年に製作した斎藤寅次郎監督の「青空天使」である。音楽は「踊る竜宮城」(49年松竹)でひばりのスクリーンデビューを見届けた万城目正。二年前に大阪で発見された作品を大阪芸大の太田教授の<映画「青空天使」復元プロジェクト」>が復元修正し、平成16年の京都映画祭で特別上映され話題となった。

 空ひばりが東映映画に本格的に出演するのは、昭和29(1954)年の「唄しぐれ おしどり若衆」(5月3日公開)から。この年は、松竹で「伊豆の踊り子」(3月31日公開)、「青春ロマンスシート 青空に坐す」(6月8日公開)などに出演。翌年には「ジャンケン娘」(55年11月1日公開)で東宝映画に初出演するなど、映画会社の枠を越えての活動ぶりに、国民的スターとしての人気が伺える。

 て、東映京都といえば絢爛豪華なチャンバラ映画を得意とした撮影所。歌姫ひばりは、人気絶頂の中村錦之助や大川橋蔵との名コンビで数々の映画に出演。陽気に、時にはセンチメンタルに歌うひばりの姿は、全国の少年少女ファンの圧倒的な支持を受けて、東映のドル箱となる。東映作品でひばりが歌ったシーンを集成したソフト「東映映画で歌う美空ひばりの世界」(全三集)は、まさにひばり版「ザッツ・エンタテインメント」。ニッポンにミュージカル映画は根付かないという説は、こうした映像をみていると吹き飛んでしまう。

 ミュージカルといえば、後年、ひばりのステージ演出もした沢島忠監督による傑作「ひばり・チエミの弥次喜多道中」(62年1月3日公開)がある。時代劇なのにモダン。歯切れの良い台詞と、ひばりと江利チエミのコメディエンヌぶりが実に楽しい。音楽を手がけたのが米山正夫。米山は東映東京撮影所で作られた現代劇「べらんめえ芸者」シリーズの音楽も手がけている。こちらのシリーズでは高倉健とひばりのコミカルな演技が楽しめる。

 本映画黄金時代ならではの楽しさは、まさに映画が庶民の娯楽だったということを再認識させてくれる。

佐藤利明(娯楽映画研究)
 

「美空ひばりとジャズの世界」ほか、バックナンバーリストはこちら>>>
昭和ひばりパノラマ館バックナンバーリストへ



COPYRIGHT (C) Columbia Music Entertainment, Inc. All rights reserved.