このページはバックナンバーです。(2005年3月31日発行)

日本のジャズアーティストたち
PART 2

 空ひばりがジャズをも歌いこなしていた時代、彼女とほぼ同世代で、ジャズやポピュラーを中心に活躍したアーティストたちを追ってみよう。まずはシャンソン系カヴァーも多かったペギー葉山。米軍キャンプでジャズを歌ったことがきっかけとなり、52年にキングからレコード・デビュー。この辺りの経歴は江利チエミと合致している。出世作「南国土佐を後にして」のヒットは、当人にとっては本意でなかった様だが、息の長い歌手活動への布石となったことは事実であろう。「爪」「学生時代」「ドレミの歌」など、ヒット曲には、オリジナル楽曲も多い。

 ーサ三宅もペギー同様、現役のベテラン・ジャズ・シンガーである。55年のデビュー以来、ジャズ・ポピュラー一筋に活動を続け、主催するヴォーカルハウスからは、今陽子、芹洋子、大橋純子ら、多くの逸材が輩出されている。ジャズ評論家だった大橋巨泉の元夫人であったことも有名。海外で活躍したナンシー梅木などと並ぶ、女性の本格派ジャズ・ヴォーカリストとして、ひばりも一目置く存在であったことは想像に難くない。

 ょっと毛色の変わったところでは、「バナナ・ボート」のヒットで一世を風靡した浜村美智子がいる。<カリプソ娘>の異名をとった彼女は大胆な露出も厭わず女優活動を行ない、東宝でひばりが主演した『大当り狸御殿』(58年)にも出演。同じ年に『ジャズ娘に栄光あれ』と云う主演映画も撮っている。

 時輸入音楽はジャンルを問わず、ジャズとして一括りにされていたこともあり、カヴァー作品の歌い手たちが広義でジャズ歌手の扱いになる。例えばシャンソンの越路吹雪、カントリー&ウエスタンの小坂一也、ラテン系のアイ・ジョージや坂本スミ子らも、ひばりの佳きライバルであった。群雄割拠の歌謡界は、正に充実期を迎えようとしていた。

鈴木 啓之(音楽評論家)
 

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