このページはバックナンバーです。(2005年6月28日発行)

JAL機内オーディオ番組にて先行発表された“霧のロンドン・ブリッジ”を含む、
1955-1966にかけて録音されたひばりジャズ&スタンダード全41曲を完全収録!

「LOVE! ミソラ ヒバリ」

 空ひばりは子供の頃からジャズが好きで歌っていただけに、彼女の歌うジャズやスタンダードは本格的であり、大いにその天才ぶりが発揮されている。ジャズを専門に歌ってきた歌手だってひばりにはかなわないのだ。

 れは「恋人よ我に帰れ」「A列車で行こう」「スターダスト」「歩いて帰ろう」「ペイパー・ムーン」といったジャジーな歌を聴けば、誰もがそのうまさとジャズのセンスに圧倒されると思う。ぼくも彼女が歌うジャズやスタンダードが好きで、CDを何枚か買ってきたが、うれしいことにこの2枚組CDは1955年から1966年にかけて発売されたSPとライヴ録音を除いて彼女が歌ったジャズ、スタンダード、ポップスを集大成したもので完全収録されており、なんと41曲も聴くことができる。

 かもこの中のボーナス・トラック「霧のロンドン・ブリッジ」はこれまで発売されてきたライヴ・バージョンとは違い、今回はじめて発掘発売されるものである。1962年に高倉健と共演した東映映画、『ひばり民謡の旅』の音楽用テープでお蔵入りになっていたものである。この歌はジョー・スタッフォードの歌で大ヒットし、日本ではひばりの親友だった江利チエミのカバー版でもヒットしたが、ひばりも好んで歌っていた歌である。

 の2枚のCDに収められた41曲はじつに多彩で、アメリカのスタンダードはもちろんだが、世界各国のポップスや民謡に及んでおり、ひばりの多芸さに驚かされるが、さらに感動し、感心するのは、それぞれの歌が持つ原曲の味わいを生かした上で、どの歌も間違いなく個性的でひばりの歌になっていることだ。

 イルランドの民謡「ダニー・ボーイ」など民族の哀感を伝えて余すところがない。フランスにちなんだ歌「アイ・ラヴ・パリ」、「薔薇色の人生」、「愛の讃歌」の適確な表現には心を打たれるし、エキゾチックな「ブンガワン・ソロ」も素敵だ。イタリア民謡、ハワイアン、ラテンまでも自分の歌としてこなしてしまう才能は驚異的だ。美空ひばりの絶妙な表現で、歌による世界旅行ができてしまうのだから、なんというぜいたくなアルバムであろうか。

(ジャズ評論家 岩浪洋三)
 

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