Harbeth(ハーベス) HL P3ESR,Monitor20.1HG,Compact7 ES-3,Super HL5 Plus
Harbeth(ハーベス)は、逸品館が古くからお薦めしているイギリス製のスピーカーです。
今回試聴したモデルは、昨年テストしています。「HARBETH ハーベス Monitor20.1 Monitor30.1 HL-P3ESR Compact7 ES3 Super HL5音質比較」
しかし、モデルによる音質の格差が非常に大きいこと、またCompact7 ES-3の評価が極めて低いことなどから、新製品の「Super HL5 Plus」を交えて、もう一度聞き比べることにしました。さらに今回の試聴では、「YouTube 逸品館チャンネル」へ高音質音声付き動画をアップロードし、お客様自身がそれぞれの音質を確認していただけるようにしました。
試聴環境
スピーカーの試聴には、BYouTubeにアップロードしている、BBC Monitorの比較試聴に合わせて、AIRBOW CD3N AnalogueとPM7005 Applauseを使いました。試聴した環境は同一ですので、YouTube動画なら時を超えた相互比較ができると思います。
AIRBOW CD3N Analogue(お問い合わせ・ご注文はこちらから)
AIRBOW PM7005 Applause(お問い合わせ・ご注文はこちらから)
試聴に使ったスタンド
Acoustic Design AD-35a (お問い合わせ・ご注文はこちらから)
Harbeth HSS-7C (お問い合わせ・ご注文はこちらから)
Harbeth HSS-5 (お問い合わせ・ご注文はこちらから)
試聴ソフト
試聴の最初に「ネット付き」と「ネットなし」の音質を比較するために、トニー・ブラクストン&ベイビーフェイスのアルバム「Love Marriage&Divorce」から「Roller Coaster」を聞きました。試聴は、どちらか音が良かった方で行うつもりでしたが、結果としてすべて「ネットなし」での試聴となりました。
TEAC S-300HR メーカー希望小売価格 \62,000(ペア・税別) (このスピーカーのご注文はこちらからどうぞ) |
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音質評価 スピーカーケーブルには、QED Profile79Strand(\910/1m)を使いました。 Roller Coaster ネット付き 価格を超える細かい音、細かい表現が感じられる。従来のS-300に比べて、音はさらに大きく広がる。 ネットなし ネットを外すと、音像が少し後に下がって音に「艶」が感じられるようになる。雰囲気が深くなり、この曲のテーマ「大人の哀愁」が伝わってきた。 ネットなしで試聴 せせらぎ 音質が若干スピーカーにまとわりつく感じがあるが、鳥の声の前後方向は深い。 セレナード
モナリザ
500Miles 国産のスピーカーは、細かい音が聞こえても、音色の描き分けが苦手で、音楽の躍動感や色彩感に乏しいものが多いが、S-300HRはこの価格帯の海外製品と比べてもまったく遜色のない躍動感と色彩感を持っている。S-300 Seriesの中では最良ではないだろうか。 |
Harbeth HL P3ESR メーカー希望小売価格 \290,000(ペア・税別) (このスピーカーのご注文はこちらからどうぞ) |
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音質評価 スピーカーケーブルには、QED Profile79Strand(\910/1m)を使いました。 Roller Coaster ネット付き TEAC
S-300HRも音の広がりには不満がなかったが、P3ESRでは「サラウンドのようにリスナーの背後にまで」音が回り込むほど音場が大きく展開する。 ネットなし 再現される音が、一段と細かくなる。音の広がりもさらに良くなった。低音もさらに伸びる。 ネットなしで試聴 せせらぎ S-300HRと比べて、水の粒子が細かい。空間の見通しも良くなった(透明感が向上した)。 セレナード
500Miles 新世界 HL P3ESR総合評価 この価格帯で同じサイズには、「Stirling Broadcast LS-3/5a」という強敵が存在する。個人的には、LS-3/5aの方がバランスが良く好みだが、P3ESRはそれよりも音が明るく、明快な鳴り方が魅力的に感じられた。 |
Harbeth Monitor 20.1HG メーカー希望小売価格 \320,000(ペア・税別) (このスピーカーのご注文はこちらからどうぞ) | |
音質評価 スピーカーケーブルには、QED Profile79Strand(\910/1m)を使いました。 Roller Coaster ネット付き HL
P3ESRに比べ、さらに音が細かく、音に「艶」がある。高音の透明感も高く、音場が透き通っている。 ネットなし 音像が少し後に下がり、エコー(音の余韻)が長くなる。音の細やかさや、明瞭度も向上した。 ネットなしで試聴 せせらぎ P3ESRに比べて「音の繋がり」に優れ、空間がシームレス&滑らかに繋がる。 セレナード 分離感、立体感も改善し、Vl.(バイオリン)、Vc.(チェロ)、CB.(コントラバス)のそれぞれの音階がよりハッキリとした。
モナリザ
500Miles 新世界 Monitor 20.1HG 総合評価 Stirling Broadcast LS-3/5aと比べ表現はまだ少し「若い」感じがあるが、音に「艶」がある。 上質な深みのあるクラシックを聞きたいなら、大人の雰囲気を持つLS-3/5aをお薦めするが、新しいボーカル(若い女性ボーカル)を聞くのであれば、Monitor 20.1HGの方が、より良くマッチするだろう。 |
Harbeth HL Compact7 ES-3 メーカー希望小売価格 \396,000(ペア・税別) (このスピーカーのご注文はこちらからどうぞ) | |
音質評価 スピーカーケーブルには、QED Profile79Strand(\910/1m)を使いました。 Roller Coaster ネット付き Monitor
20.1HGにくらべ低音が豊富だが、高音とのバランス、ツィーターとの繋がり部分の音が少し引っ込んでいる。 音の広がりが大きくなり、音が細かくなり、音の余韻が長くなった。 ネットなしで試聴 せせらぎ Monitor 20.1HGに比べて、水(清流)の勢いが弱い。鳥の鳴き声は硬く、高音がピーキーで電子音のように聞こえる。 マルチマイクで録音したソフトのように、鳥の鳴き声と川の流れる音が調和せず、まるで別の空間に存在しているように感じられる。 セレナード
モナリザ
500Miles 滑らかさや暖かさは、ヨーロピアンな感じがする。 新世界 Compacth7 ES-3 総合評価 ツィーターとウーファーの繋がり部分に、エネルギーの落ち込みが感じられる。 |
Harbeth Super HL5 Plus メーカー希望小売価格 \600,000(ペア・税別) (このスピーカーのご注文はこちらからどうぞ) |
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音質評価 スピーカーケーブルには、QED Profile79Strand(\910/1m)を使いました。 バイワイヤリング対応のSuper
HL5
Plusをシングルワイヤリングで繋ぐ場合には、+−の両方を「高域側に繋ぐ」、「低域側に繋ぐ」、さらに「+を高域、−を低域に繋ぐ」、「−を高域、+を低域に繋ぐ」の4通り接続方法が考えられます。事前のテストでは「−を高域、+を低域」に繋いだときのバランスが最も好ましく、「両方を低域」に繋いだときもほとんど変わらないバランスで鳴りました。最も好ましくなかったのは「+を高域、−を低域」に繋いだときでした。 Roller Coaster ネット付き Compact7
ES-3と音の広がりが全く違って感じられる。音が大きく部屋一杯に広がるが、この点で好ましかったMonitor
20.1HGよりも「密度感」が高い。 ネットなし 空間の透明度が増し、音がクッキリする。子音は少し強いが、気になるほどではない。 従来のHL5よりもクッキリ・ハッキリした感じが強いが、明るく聞いていて楽しい雰囲気は引き継がれている。 ネットなしで試聴 せせらぎ Compact7
ES-3に比べて、水の音が滑らかで柔らかい。また、(水面)の揺らぎが大きく、流れに勢いがある。 セレナード ボーカルも子音がやや強く感じられるが、艶が出て濃密になり、ギターとボーカルの「絡み」がしっかりと再現される。
500Miles 新世界 Super HL5 Plus 総合評価 3Way化されたことで、従来のHL5と比べてレンジが広がり明瞭度感が増した。けれど、レンジの狭さ故の「濃さ」は薄らいでいる。 元々、Harbethは「BBSモニター」よりも、一歩現代的な鳴り方が特長だった。Super HL5 Plusではそれがさらに進化している。 |
試聴を終えて
今回、Harbethの試聴に「TEAC S-300HR」を加えたのは、たまたま試聴機が同時に手元にあったことと、6.2万円(ペア)のS-300HRと30万円クラス〜のHarbethにどれくらいの違いがあるかを確認する目的がありました。目的は達成されたように思いますが、S-300HRの価格以上の実力が確認できたのは、嬉しい驚きでした。
今回も試聴でもHarbethは、モデル毎に評価が分かれました。Compact7
ES-3の評価が低いのですが、前回Harbethを比べたときに「Compact7
ES-3」のユーザー様から、「Compact7
ES-3の試聴記事に愛情が感じられない」とおしかりのメールを頂戴しました。けれど、それは愛情がないのではなく、Harbethを愛するが故の苦言です。なぜならば、Harbeth製品に対するお問い合わせで、最も多いのがCompact7のユーザーからの「どうしたらもっと良い音になるだろうか?」という問合せなのです。私の答えは決まっています。「Harbethの違うモデル(Super
HL5
Plusなど)を一度聞いてみて欲しい」。それが答えです。40万円(ペア)は安くない価格です。それを何とかしたい気持ちはわかります。けれど、それはなかなか難しいのです。
けれど、それはあくまでも私の「好き嫌い」です。
食べ物と同じように「音」にも好き嫌いがあり、個人差は相当大きなものです。だから、Compact7 Es-3の音を気に入って使っていらっしゃっても、それはまったく問題のないことです。個人それぞれの「好みの違い」は、尊重されるべきですし、人の意見を気にする必要はありません。自分と違う意見に、いちいち振り回され、そんなものに異を唱え続けても、きりがないと私は考えています。私が伝えたいのは、「私が聞いた感覚」です。もちろん人間ですから、正確な評価、常にフェアな評価が下せるわけではありません。けれど、その感覚をストレートに伝えることが、お客様が製品の音を判断していただくための助けになればと思っているのです。
そして、私の意見を聞きたくないというお客様のために、最近は「YouTubeに高音質音声付き動画」をアップロードしています。「マイク」は、嘘をつきませんから、是非ご自身の耳でお確かめ下さい。それでも「何か細工をしている」という書き込みがYouTubeにされることがありますが、それならば「聞かなければよい」でしょう。何が何でも自分の意見を押し通そうという、一部のマニアの存在が、オーディオと音楽の関係を不自由にしています。音楽を聞く、オーディオを楽しむという趣味は、もっと楽しく優雅であるべきです。
話しは戻りますが、私がHarbeth Compact7 ES-3(Compact7 Series)の音を好きになれないのは、ウーファーとツィーターの繋がる帯域にエネルギーのギャップが感じられ、「調和」が乱されるからです。そして、それが元々「HL Compact」の特長であれば、問題はないのですが、初代の「HL Compact」は、見事な調和を聞かせてくれただけに、Compact7 Seriesの変貌への戸惑いが大きいのです。
けれどスピーカーから再生される音楽に、「調和」をより強く求めるのであれば、Stirling Broadcast社やGraham Audio社の「復刻版BBSモニター」がHarbethよりも適しています。Harbethは常に、それらよりも優れた特性を求め、ワイドレンジ化しています。それによって得られたものと、失われたものがあります。私が好きなHarbethのモデルは、Super HL5 PlusとMonitor 20.1HGです。
2016年1月 逸品館代表 清原裕介