DENON デノン DRA-100 marantz HD-AMP1 AIRBOW エアボウ SingingBox5 HD-AMP1 Special 音質比較試聴テスト 販売 価格

  DRA-100  HD-AMP1

  AIRBOW(エアボウ) SingingBox5 HD-AMP1 Special 音質 比較 試聴テスト

最近、ペア5万円以下のブックシェルフ型スピーカーと5〜10万円クラスのネットワーク/USB入力対応小型プリメインアンプがよく売れています。そこで今回は、その価格帯で人気が高く、「クラスD」のパワー素子を搭載する「DENON DRA-100」と「marantz HD-AMP1」、さらに同じく「クラスD」のパワー素子を搭載する、AIRBOWカスタムモデルから、HD-AMP1に価格が近い「SingingBox5(M-CR611カスタムモデル)」とHD-AMP1のパーツを約130個交換して音質を大幅に高めた「HD-AMP1 specila」を、「USBメモリー」に収録したMP3/320bps、WAV 44.kHz/16bit、88.2kHz/24bit,DSD/2.8MHzの各音源で比較しました。

DENON DRA-100

35bit精度の「Advanced AL32 Processor」が搭載され、入力されたデジタル信号は内部でハイレゾ化されます。入力された信号はデジタル信号のまま、35W/8Ω(70W/6Ω)のデジタルパワーアンプに伝送されます。LAN(有線/無線)によるネットワークへの接続、Bluetoothによる対応機器への接続に対応します。USB-A端子を装備し、USBメモリー/i-pod/スマートフォンなどとの接続には対応しますが、PCとのUSB接続は行えません。対応するデーターは、PCM 192kHz/24bit、DSD/5.6MHzまでとなっています。

メーカー希望小売価格 \110,000(税別) (このアンプのご注文はこちらからどうぞ

marantz HD-AMP1

高級プリアンプのために開発された高度なバッファアンプ(プリアンプ)回路「HDAM-SA2」が搭載され、入力されたデジタル信号は内部でアナログ化され、「HDAM-SA2」を経由した後、35W/8Ω(70W/6Ω)のデジタルパワーアンプに伝送されます(DRA-100と出力は同じですが、パワーアンプの素子は違います)。ネットワークへの接続二は対応せず、USB-B端子によるPCとの接続に対応染ます。また、USBメモリー/i-pod/スマートフォンなどとの接続には対応する、USB-A端子も装備されています。対応するデーターは、PCM 384kHz/32bit、DSD/11.2MHzまでとなっています。

メーカー希望小売価格 \140,000(税別) (このアンプのご注文はこちらからどうぞ

AIRBOW SingingBox5

有線/無線 Ethernet、2系統のUSB入力、FM/AMチューナ、CDドライブを備えるオールインワン・ネットワーク対応CDレシーバー marantz M-CR611のパーツを61個交換して高音質化した、AIRBOWカスタムモデルです。ボディーは小さいですが、AIRBOWならではのHi-Fiグレードの新開発パーツの投入、妥協のないサウンドチューニングにより高音質を実現します。また、このモデルは、Bluetooth+NFCペアリング機能を搭し、AirPlayにも対応しているためiTunesやiPod touch、iPhone、iPadからローカルの音楽ファイルやApple Musicライブラリをワイヤレスで再生することができます。AndroidやPC、NASからのネットワークミュージックストリーミング(DLNA 1.5準拠)は192kHz/24bitのハイレゾ音源やDSD(2.8 MHz)に対応するほか、iPod/iPhoneやUSBメモリー/HDDに対応するUSB入力をフロントとリアに1つずつの合計2系統を装備します。さらにCDプレーヤー、「ワイドFM」対応FM/AMチューナー、2系統の光デジタル入力も備えており、多彩なソースのすべてをAIRBOWの高音質で楽しむことができます。

販売価格 \115,740(税別) (このアンプのご注文はこちらからどうぞ

AIRBOW HD-AMP1 Special

marantz HD-AMP1のパーツを129個交換して高音質化した、AIRBOWカスタムモデル。129個ものパーツ交換は熟練工が作業しても、丸一日かかります。妥協を許さない、この徹底的な高音質化により、50万円クラスの大型プリメインアンプに匹敵視する高音質が実現しています。

販売価格 \242,712(税別) (この製品のご注文はこちらからどうぞ

試聴環境

スピーカーには、このクラスのアンプに相応しいモデルとしてaudiopro FS20(Piano Black)を選びました。このスピーカーは、比較的低価格ながら高音質とスタイリッシュなデザイン、レザーとピアノブラック塗装を組み合わせた美しい外観を持っています。

audiopro FS-20(PianoBlack)

audiopro FS-20のピアノブラック仕上げモデルです。ウォールナット仕上げのFS-20の表面は「木目の塩ビシート」ですが、Piano Blackは楽器に使われる「ラッカー仕上げ」が使われています。キャビネットの仕上げが違うと当然音質も変わります。Piano Black仕上げのFS-20は、ウォールナット仕上げと比べキャビネットの響きが美しく、音の純度が高く濁りも少なくなります。価格差は2万円(ペア・税別)ですが、それを大きく超える価値があります。このモデルは、逸品館が100セットを一括してaudioproに発注して販売しています。

メーカー希望小売価格 \140,000(ペア・税別) (この製品のご注文はこちらからどうぞ

試聴ソフト (データはすべてWAV形式。CDのリッピングは、44.1kHz/16bitです。)

MP3/320bps WAV 44.1kHz/16bit WAV 88.2kHz/24bit DSD/2.8MHz

Julie London
「Goody Goody」

Della
「せせらぎ」

ノイマン/チェコフィル「新世界」

noon
「500 Miles」

Mathias Landaeus Trio
What a Wonderful World

Chopin
「夜道の手袋」

DENON DRA-100

メーカー希望小売価格 \110,000(税別) (このアンプのご注文はこちらからどうぞ

音質評価 スピーカーケーブルには、QED Profile79Strand(\910/1m)を使いました。

 Goody Goody (MP3/320bps)

音の濁りが少なく、空間の見通しがよい。低音は、お世辞抜きにとても良く出る。
音源がMP3(320bps)なのでさすがに音の密度が少し薄いが、音数の少ないJAZZをソースに選んであるのでダメージが少なく、聞ける音で鳴る。
広がり感や分離感には優れているが、デジタルなので艶や粘りは少ない。

 せせらぎ (WAV 44.1kHz/16bit)

水の音は、少し堅く、潤いや滑らかさがない。鳥の声は高音が耳障りで、電子バードのように聞こえる。
音の細やかさ、広がり感、透明感は良好。デジタルらしいクッキリ、ハッキリした音。

 新世界 (WAV 44.1kHz/16bit)

低音は豊か。ウーファーの制動も良く聞いていて音が膨らむことがなく、デジタルアンプらしいダンピングの高さを感じる。

管楽器の音は、輝き感(プレゼンス)が弱くくすんでいるが、雰囲気が明るくなくても良いこの曲では、あまり問題にならない。
管楽器と弦楽器の分離は悪くない。S/N感が高い(透明感が高い)ので、ホールの静けさが再現される。
価格を考えれば、十分納得できる音質でシンフォニーが聴けた。

 500 Miles (WAV 44.1kHz/16bit)

ピアノのアタック感の明瞭度は、非常に高い。低音も豊かで濁りがないので、ピアノの「ハンマー動く音」が聞こえて驚いた。
解像度感、透明感の高さは、下手な数十万円のアンプを超えるだろう。
他方、ボーカルはややあっさりとして表情が平坦に感じられる。
音質はとても良いが、音楽のニュアンスの再現、ドラマ性の再現力はそれほどではない。

 What a Wonderful World (WAV 88.2kHz/24bit)

CDリップ音源(44.1kHz/16bit)に比べると解像度感はさらに上がる。しかし、楽器の「音色」や「エネルギー感」の再現性に乏しく、演奏が躍動しない。

良い音だが、心に伝わってくるものが薄く、演奏が冷たく、無機質に感じられる。
生演奏とは「力強さ」が決定的に違っている。

 夜道の手袋 (DSD(dsf)/2.8MHz)

ハイレゾの音に落胆していたので、DSDも期待しなかった。ところがどうだろう、DSDの音は一転して色彩感が豊富でエネルギー感も十分にある。
PCMハイレゾよりも圧倒的に色彩が濃く、音の輪郭も滑らか。密度感も濃い。
楽器の音の変化や、ボーカルのニュアンスも良く出て、PCMハイレゾとは全く違うアンプで聞いているようだ。
Dレンジも大きく、この音ならばCDプレーヤーとプリメインアンプをセットにして20-30万円クラスのコンポに十分匹敵するだろう。

DENON DRA-100 総合評価

可能な限り音声を「デジタル」のまま再生するように作られたプリメインアンプ「DRA-100」の音は、驚くほど細やかで透明感が高い。低音もこのサイズ、この重量という先入観を抜きにして、非常に豊かで膨らみも少ない。これは、デジタルアンプならではの「駆動/制動力」が発揮されているからだろう。
しかし、音はよい反面、音楽のニュアンスやエネルギー感がやや乏しく、生演奏を基本とするなら、その音はかなり無機的に感じられる。
「アナログ」で育った世代には、最初「すごい」と驚かれても、聞き続けていると「何かつまらない」と感じられるように思う。

美しいが熱のない音。「オーディオファン」には好かれそうだが、「音楽ファン」の好みは分かれると思う。

marantz HD-AMP1

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音質評価 スピーカーケーブルには、QED Profile79Strand(\910/1m)を使いました。

 Goody Goody (MP3/320bps)

音の立ち上がりが穏やかで、止まりが遅いので「適度な余韻感(響き)」が演出される。空間はDRA-100よりも濁っているが、ボーカルが一歩前に出て伴奏が少し後に下がる「実際のライブ」らしいバランス感覚は秀逸。

DRA-100と比べて女性の声には色気が出るが、高音は少し「荒れ」ている。かなり高い周波数で何らかの共鳴が起きているが、それはたぶんHDAM-SA2の癖だろう。しかし、アナログレコードでもカートリッジのカンチレバーや、RIAAカーブに使われるフィルムコンデンサーが共振するため、高域がやや強く荒れ気味になるから、そういう意味ではHD-AMP1はいかにもアナログ時代らしい、古き良き味わいでこのJAZZを楽しませてくれる。
アナログ回路が生み出す「響き」が良い方向に働いて、MP3(320bps)とは思えないほど良い音で、JAZZが鳴った。

 せせらぎ (WAV 44.1kHz/16bit)

DRA-100と比べて、水の音が滑らかで潤いが感じられる。鳥の鳴き声の「バリエーション(鳴き声の種類)」も豊富。
空間はDRA-100ほど澄み切っていないが、音の広がりはそれよりも大きい。
大きな音と小さな音の「違い(聞こえ方の差)」が、とても自然。それぞれの音が完全に分離しない、適度な分離感もDRA-100よりも自然で好ましい。
DRA-100よりも肌触りが良く、自然な音でせせらぎが鳴った。

 新世界 (WAV 44.1kHz/16bit)

イントロの管楽器の音に深みがあり、この曲らしい「静かで厳かな感じ」が良く出る。
演奏の強弱の再現が自然で、正確無比に時が刻まれたDRA-100で感じられなかった「シンフォニーの流れ(時間の揺らぎ)」が感じられる。

演奏の流れが「一様」ではなく、時には早く、時にはゆっくりと、その「変化」が感じられる。

透明感はDRA-100には及ばないが、それでもS/N感は十分に高く、ホールの大きさや空気感もしっかりと伝わってくる。
かなりレベルの高い音で、新世界が鳴った。

 500 Miles (WAV 44.1kHz/16bit)

ピアノのタッチは、DRA-100よりも自然だが、響きに濁りが感じられる。また、ピアノの高次倍音に僅かな共鳴が乗っている。
ボーカルは潤いがあって、声の強弱が良く出る。
演奏を「良い音」ではなく、「良い音楽」として楽しむ事のできる、優しくチャーミングな音で500Milesが鳴った。

 What a Wonderful World (WAV 88.2kHz/24bit)

DRA-100では、CDリップよりもハイレゾの音は明らかに細く、力が弱く、元気がなかった。けれど同じハイレゾをHD-AMP1で聞くと、そんなことはない。
量子化ビット数(音量方向)の解像度が、16bitから24bitに上がった(×256倍細かくなる)効果で、音の密度が高まり、粒子も細やかになる。
ピアノの音が「生音」にかなり近いイメージで聞き取れ、ピアノのメーカーまで判別できそうに感じられる。
ドラム、シンバルの音にも強弱とバリエーションが生み出され、CDリップよりも明らかに良い音でハイレゾが鳴った。

 夜道の手袋 (DSD(dsf)/2.8MHz)

ハイレゾに近いが、それよりも少し滑らかだ。けれど濁りは若干ハイレゾよりも大きい。

DRA-100で聞くDSDには驚かされたが、HD-AMP1で聞くDSDはそれほどではない。
ハイレゾに比べてパワー感が弱く、音の線が細い。DRA-100が良かったか?微妙な感じだ。

HD-AMP1 総合評価

デジタルパワーアンプを搭載するにもかかわらず、HD-AMP1の音はややおっとりとして、空間にも濁りがある。けれど、その雑味のある感覚に「アナログらしい味わい」が感じられて好ましい。また、音の両端(最高音と最低音)が少し丸くなっていて、音の「端っこ」が消えているが、それは悪いことではなく、逆にある種の「ソフトフォーカス感」が演出され、音楽の味わいが深まっている。
フルデジタル構成にせず、HDAM-SA2という「高級アナログ回路」を搭載した良さが音に出ている。DRA-100がデジタル時計なら、HD-AMP1はゼンマイ時計だ。その音には、音楽と一緒に時を歩んで行くような、オーガニックな味わいがある。

AIRBOW SingingBox5

販売価格 \115,740(税別) (このアンプのご注文はこちらからどうぞ

音質評価 スピーカーケーブルには、QED Profile79Strand(\910/1m)を使いました。

 Goody Goody (MP3/320bps)

音色や音楽の表現はHD-AMP1に近いが、重低音(低音の一番低い部分、空気の揺らぎのようなもの)は、HD-AMP1ほどは出ない。また、低音の膨らみも若干多い。ベースとギターのパワー感、密度感も僅かにHD-AMP1に及ばない。しかし、ボーカルの表現力はなかなかで、艶もある。

DRA-100との比較では、格段に滑らかで音に艶があり、表情豊かに再現される。明るく楽しい音でJAZZが鳴った。

 せせらぎ (WAV 44.1kHz/16bit)

DRA-100との比較では、格段に音が滑らかで水の音にも潤いがあり、鳥の鳴き声も自然に聞こえるが、このソフトでもHD-AMP1の方が密度が高く感じられた。HD-AMP1が1000万画素なら、SingingBox5は800万画素程度だろうか。僅かに情報は減るが、変わらないイメージでせせらぎが鳴った。

 新世界 (WAV 44.1kHz/16bit)

「空気感」という意味では、SingingBox5とDRA-100との差は非常に大きい。DRA-100の音は解像度S/Nが高く、研ぎ澄まされているが、楽器の余韻がとても短く、ホールを満たす空気が希薄で、真空中で楽器が鳴っているように感じられることがある。DRA-100の持つ「止まり」が早く、純度の高い音は「電気楽器」の再生には向いているが、アコースティック楽器の再生では、味わいが薄く、音が堅く、音色の変化が不十分に感じられることがある。
SingingBox5とHD-AMP1の音は、低音がやや膨らむが、アナログ回路によって生み出される響きが、楽音や演奏をより「豊か(リッチ)」に再現する。
HD-AMP1よりもほんの少し、音の重心が高く感じられるが、楽器の質感やホールの響き広がり感、空気感はきちんと出てくる。
「新世界」を十分に楽しめる、味わいのある音だ。

 500 Miles (WAV 44.1kHz/16bit)

ピアノのタッチは良く出るが、響きの濁りはHD-AMP1より少し多い。HD-AMP1で感じられた、高音の強調感も共通している。しかし、その僅かな強調感がボーカルを伴奏と適度に分離させ、ソノリティーを高めている。ボーカルは表情が豊かで、声の抑揚も大きい。
DRA-100よりも格段にアナログ的な音で好ましいが、表現はHD-AMP1が僅かに深いように感じた。
 What a Wonderful World (WAV 88.2kHz/24bit)

この曲でも、SingingBox5の音の重心はHD-AMP1よりも僅かに高い。けれど、DRA-100と比べると、楽音が力強く、色彩感も豊富だ。
CDリップ音源との差は、HD-AMP1よりも大きく、ハイレゾ音源を使うことで、グッと音が良くなっている。
ピアノとドラム、ウッドベースの「関係」がとても自然でライブの雰囲気が良く出る。
CDリップでは、HD-AMP1に若干譲る印象のあったSingingBox5だが、ハイレゾ音源での「雰囲気の濃さ」は、HD-AMP1を上回っている。

 夜道の手袋 (DSD(dsf)/2.8MHz)

音源がDSDになるとSingingBox5の音質は一段と向上し、HD-AMP1を上回る様に感じられ、DSDで最も音が良いと感じられたDRA-100すら上回る音が出る。
かなり高級なコンポに匹敵する音の細やかさが感じられ、楽音の力強さも格段に向上した。
多機能、軽量をまったく感じさせない、豊かな表現力で夜道の手袋が鳴った。

SingingBox5 総合評価

この試聴を行う前は、SingingBox5はHD-AMP1よりも音が良いだろうと想像していた。しかし、実際に慣らし比べてみると、HD-AMP1は想像以上に良くできていて、USBメモリーを音源に使う比較では、音の密度感や低音の量感では、HD-AMP1がSingingBox5を上回った。しかし、SingingBox5の音質も、それにかなり近い。

SingingBox5にはHD-AMP1に搭載されなかった、ネットワーク(有線/無線)接続がサポートされるから有線のみであまり長距離を引き回せないUSB接続よりも音源の設置の自由度が高い(PCやNASと離して設置できる)。スマホと繋ぐなら、ブルートゥースも便利だろう。また、タイマー機能やFM/AMチューナ、CDプレーヤーも装備されるので、ベッドルームやリビングなどで「カジュアルによい音を聞きたい」とお考えなら、HD-AMP1よりもSingingBox5の多機能が重宝するだろう。

オーディオルームでじっくり聞くなら、HD-AMP1。リビングやベッドルームで、いつでも音楽を聞きたいなら、SingingBox5がお薦めだ。

AIRBOW HD-AMP1 Special

販売価格 \242,712(税別) (この製品のご注文はこちらからどうぞ

音質評価 スピーカーケーブルには、QED Profile79Strand(\910/1m)を使いました。

 Goody Goody (MP3/320bps)

一音が出た瞬間に、ジュリー・ロンドンの声質、ライブ会場(スタジオ)の雰囲気感の濃さが、先に聞いた3台とは全く違っていることが感じられる。
DRA-100では、やはりMP3はこの程度の音かと思わされた。それがHD-AMP1(SingingBox5)では、ほぼ不満のない音になった。しかし、HD-AMP1 SpecialではMP3(320bps)の音が、誇張抜きに高級コンポで聞くCDと違わないように感じられる。密度が高く、色彩も濃い。
低音は僅かに響きが残り、そのためやはり僅かに膨らんで感じられるが、この適度な「緩さ」がアナログらしい味わいを生み出しているのは、HD-AMP1と共通する長所だ。
高級コンポを聞き慣れた「耳」でも納得できる音が、HD-AMP1 Special+FS20 BK+MP3(320bps)から再現された。

 せせらぎ (WAV 44.1kHz/16bit)

水の「潤い感」、「滑らかさ」が全く違う。鳥の声は最高域まで柔らかく、細やかで表情が驚くほど豊かだ。
空気感も濃く、目の前に「せせらぎ」が流れているように錯覚するほどリアルな音だ。

 新世界 (WAV 44.1kHz/16bit)

イントロのハーモニーが格段に深い。HD-AMP1も良かったが、HD-AMP1 Specialはそれを4Kハイビジョンにしたように、あらゆる情報が増えている。
楽音は力強く張りがあり、低音の腰も据わっている。複雑な音色の変化が見事に再現され、奏者の細やかな楽器使いが音に反映され、演奏が深く豊かに再現される。目を閉じると生演奏を聴いているように錯覚するほど、リアルな音が出る。
デジタル臭さなど微塵も感じられない、滑らかさと潤い感。USBメモリーからの再生だが、ハイエンドコンポに匹敵するほどの調和を感じる美しい音で、新世界が鳴った。

 500 Miles (WAV 44.1kHz/16bit)

ピアノのアタックの立ち上がりが素早く、ストレスを感じさせず心地よい。HD-AMP1で僅かに感じられた響きの濁も消えて、倍音は複雑だけれど透明で美しい。DRA-100で聞くピアノもクォリティーも高かったが、響きが少なく「純音」的な美しさだった。HD-AMP1では、それに「僅かな濁り」が加わり、ピアノらしい「複雑な感じ」が再現されるようになったが、倍音は若干濁っていた。HD-AMP1 Specialのピアノは複雑さを持つが倍音には透明感があり、ピアノの質感がグッと高まったように感じられる。
USBメモリーから出てくる音だとは、信じがたいほどのクォリティーだ。

 What a Wonderful World (WAV 88.2kHz/24bit)

HD-AMP1ではハイレゾとCDリップの差は小さくなかったが、HD-AMP1 Specilaではその差はかなり小さい。それは、ハイレゾの音がプアなのではなく、CDリップの音が大幅に良くなっているからだ。
HD-AMP1 SpecialではCDリップとハイレゾの差は「聞こえる音」ではなく、「感じられる音」の差となって現れる。テンポが少し遅くなり演奏がより「丁寧」に聞こえるようになる。楽器の倍音も豊かで、グランドピアノの「重厚感」が醸し出される。ドラムやシンバルは、奏者が楽器を微妙にコントロールしている様子が伝わってくる。バスドラムの「空気を揺らす」感じも伝わってくる。
音の切り替わりがとても鮮やかで、生っぽさが格段にアップした。

 夜道の手袋 (DSD(dsf)/2.8MHz)

イントロのウッドベースの音が力強く、ベルの音の色彩感と余韻の変化が出てくる。また、ベルが勝手に鳴っているのではなく、人間がそれをしっかりとコントロールしているように聞こえる。ボーカルは、際だって上手になった。
HD-AMP1 Specialは、PCMデーターのCDリップとハイレゾ、DSDデーターのDSF/2.8MHzの音質差が極めて小さく、何を聞いても不自然さがない。
HD-AMP1 Specialで聞くDSDは、PCMに比べて音が細やかで滑らか。線が細くなることはなく、力強さもある。
DRA-100やHD-AMP1、SingingBox5では聞こえなかった「細かい音」までハッキリと聞き取れ、S/N感も驚くほど高いが、その音はあくまでも自然だった。

HD-AMP1 Special 総合評価

HD-AMP1 Specialは、HD-AMP1に129箇所の変更を加えている。それは、単なるパーツ交換だけには留まらず、電磁波シールドの追加などその改良には隙がない。特に、HD-AMP1の心臓部である「HDAM-SA2」回路は、交換可能なパーツをすべて最高級オーディオグレードに交換している。もちろん、低音の厚みやパワー感の決め手となる、メインの電源平滑コンデンサーも大幅にアップグレードしている。
その成果があって、音はさらに細かくなり、音の端っこ(聞き取れるぎりぎりの限界)まで綺麗に再現されている。だからHD-AMP1に比べて「音質(音のクォリティー感)」が高く、よりリアルで生々しい音が出る。

USBメモリーに記録したCDリップの音源から、30万円クラスのCDプレーヤーと30万円クラスのプリメインアンプの組み合わせに匹敵する音が出た。省スペースで高音質なプリメインアンプ、ハイレゾやDSD音源に対応する音の良いコンポーネントをお探しの方に、先入観を抜きにして是非一度聞いて頂ければと思う。

試聴後感想

今回聞き比べた4機種のアンプの中では、HD-AMP1 Specialが音源の品質により音質が最も左右されにくく、常によい音で音楽を楽しめました。対照的にDRA-100は音源の品質によって再現される音が比較的大きく変わり、ソフトを選びます。私なりの考えで「それ」を説明しましょう。

「エレキギター」は、アコースティックギターと違って「共鳴部(胴鳴り)」が格段に小さいため、ギターそのものから生み出される「響き」に、ギターアンプ(ギターヘッド)やエフェクターで、さらに「響き」を付け加えて音に「複雑さ」を与えます。つまり、エレキギターでは「電気回路が生み出す響き」も楽音の一部として積極的に取り入れられているのです。

この考えは、オーディオ機器に当てはまらないでしょうか?

アナログ回路に比べて「歪み」が小さい「デジタル回路」では、回路そのものが発生する「響き」が少ないのでソースに対する忠実は高くなりますが、回路が生み出す響きが楽音を補助しません。しかし、HD-AMP1に搭載される複雑なアナログ回路「HDAM-SA2」は、その回路が生み出す響きにより、エレキギターのアンプと同じように、音源を「原音」よりリッチな音で再現することができるのです。

これに対して、「歪み」の原因となるアナログ回路を極力廃した、フルデジタルアンプのDRA-100は、価格の割に音の純度が高く、低音もリニアな代わりに、ソース(音源)の善し悪しが、ダイレクトに音質に反映されます。結果として、ソフトをかなり選び、心地よく聞けるソフトが限られてしまいます。これは、ICが多用されコストのかさむ複雑なアナログ回路がほとんど使われない、低価格なオーディオ機器にも通じることです。

あくまでも入力に忠実に、良い音源はよい音で、悪い音源は悪い音で再現する。それは一つのオーディオの考え方だと思います。けれど、世の中に存在する「ソフト(デジタル以外の古いソフトも含める)」の大部分は「理想的な音質」で録音されているのではありません。むしろ、そのほとんどが「悪い音」なのです。

私は、良い音源はよい音で、悪い音源でも良い音で再現できるのが最高級のオーディオ機器だと考えています。なぜならば、演奏の善し悪しを録音の可否によらず伝えられる所に高級機の価値があると思うからです。だから高級機には、「響き」という付加価値を持たないデジタル回路よりも、むしろ「歪み」という味わいを持つアナログ回路がより相応しいと考えています。真空管アンプが現代に生き残っているのも、ギターアンプ(ギターヘッド)に真空管が多用されるのも、結局は「真空管が生み出す響き」を人間が「美しい(好ましい)」と感じるからでしょう。

こういう考えから、最新型アンプをデジタル一辺倒にせず、デジアナのハイブリッドにしているmarantzは「伝統の音作りをわかっている」と感じます。しかし、ノーマルのHD-AMP1は量産と価格の限界で、生み出される響きが完全ではなく、それが「音の濁り」を生み出していました。

HD-AMP1 Specialは、この優れた「HDAM-SA2」が持つ本来の能力を完全に発揮させるため、交換可能な回路のパーツ(電源用コンデンサーとフィルター用コンデンサー)の全数を交換し、音の美しさに磨きを掛けています。さらその美しさを躍動させるエネルギーの源である、デジタルパワーアンプ・モジュールや主電源回路も徹底的に強化改良を加え、この小さなコンポーネントから高級アンプに匹敵しうる音質を発揮させることに成功しています。

最近は、若者のイヤホン離れが進んできたのか、低価格で小型のプリメインアンプやペア数万円程度のブックシェルフ型スピーカーがよく売れています。一昔前(2000年以前)と比べると、デジタル技術と音響機器測定装置・シミュレーションソフトの進歩が、このような低価格コンポーネントの音質を飛躍的に高めました。しかし、marantzのような「伝統に培われた音作りのノウハウ」を持っていなければ、音は良くとも音楽に感動できない製品になります。そういう音で音楽を聞いていては、いつまでたっても演奏家の魂に手(耳)が届きません。

これから本格的に音楽を聞き始めようとするお客様が購入することの多い「バリュー価格帯」の製品こそ、専門店の「物選び(セレクト)」は慎重に成されるべきだと思うのです。

2016年3月 逸品館代表 清原裕介 

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