革メンテナンスの基本 雨・水濡れ対策

2016.6.7

革メンテナンスの基本 雨・水濡れ対策

革製品でよくあるトラブルが、雨や不意の水濡れによるシミや型崩れ。天気予報はチェックしていても、出先でにわか雨に見舞われてしまったり、強い風雨が傘で防ぎきれなかったりすることはよくあるものです。お気に入りの革製品を長く使い続けるために、水とのうまいつきあい方を知っておきましょう。

もし濡らしてしまったら…… 雨・水濡れ対策の基本

種類や加工によって差はありますが、革は全般的に水には弱いものです。濡れるとシミになったり、水膨れを起こして傷つきやすくなったりします。革の脂分が抜けて風合いが変わってしまうことも。革の芯まで水分が浸透してしまった場合、乾燥するまでの間にひび割れを起こしてしまったり、変形してしまったりすることもあります。

特別に防水加工がなされていないもの以外は、「雨が降ったらレザーバッグは使わない」のがベスト。雨の日用にナイロン製のビジネスバッグを持っておくのも良いでしょう。

とはいえ、お気に入りのバッグはいつも使いたいし、出先で突然の雨に降られることもあるものです。もし水に濡れてしまったら、なるべく早く対処しましょう。

水濡れ度 少しだけ濡れた場合は…… Point すぐに乾いた柔らかい布でこすらず拭く

すぐに柔らかい布で拭くことでトラブルは防げます。こすったり叩いたりすると色落ちやキズにつながるので、優しく押さえるように拭きましょう。帰宅後は中身を出し、風通しの良い場所で乾燥させましょう。

水濡れ度 水分がかなり浸透してしまった場合は…… Point 形を保って乾燥させる

中身を全部出し、新聞紙などを詰めて形を保ちます。日陰で充分に乾かした後は、クリーム等でメンテナンスをしてください。ドライヤーによる乾燥は厳禁。ひび割れにつながる可能性があります。

濡れる前に対策を! 鞄を守る防水テクニック

雨の日もレザーバッグを使いたい場合は、防水スプレーを活用すると安心です。鞄にできる限り汚れをつけずに使いたい場合にも役立ちます。ただし経年変化はしにくくなるため、風合いの変化を楽しみたい場合は使わないほうが良いでしょう。

明日が雨の予報ならぜひ! 防水スプレーで鞄を守る

なんといっても、防水スプレーは、吹き付けた直後では充分に防水効果を発揮できないことがあります。できれば鞄を使う前日には処理を済ませておきましょう。

防水スプレーの使い方
  1. STEP.01 鞄全体を柔らかい布で拭く
  2.  
  3. STEP.02 まんべんなく防水スプレーを吹き付ける
  4.  
  5. STEP.03 そのまま自然乾燥させてから乾拭きする

効果はだいたい1週間〜10日程度防水スプレーにより異なるので、確認しておくと良いでしょう。

ほかにもある! 防水スプレー以外の水濡れ対策

防水スプレーのほかにも、自ら革を守るためのポイントをご紹介します。

<メンテナンスオイルの使用>
メンテナンスオイルのなかには防水効果を持つものもあります。革に合ったものを用意し、普段からメンテナンスしておくのも良いでしょう。
<バッグの選び方>
鞄選びの段階から防水を意識しておくのも一つの選択肢です。革は染色のされ方によって、水分の染み込み方が変わってきます。
  • – 顔料仕上げ染色した革に不溶性の着色剤を塗布する仕上げ法です。もともと水分が染み込みにくく、雨でも比較的安心して使えます。
  • – 染料仕上げ水などに溶解させて使う染料を革に浸透させて仕上げたものです。アニリン仕上げとも呼ばれます、素仕上げの革よりは水に対する耐性はありますが、シミになる確率も高いのですぐに拭くほうが安心です。
  • – 素仕上げ着色剤や仕上げ剤をほとんど使用せず、フェルトバフ等でツヤを出した仕上げの方法。ヌメ革はこの状態で出回ります。水分が染み込みやすく、非常にシミになりやすいという統制があります。

専門バイヤーが答える! バッグのお悩み解決コーナー

お客様から寄せられる悩みを疑問を、 Transicスタッフ山家が質問するお悩み解決コーナーです。

今回のテーマ 「梅雨の時期でも雨にも強い革は?」
  • スタッフ 山家 「革が好きなので、梅雨の時期でもやっぱり革のバッグが持ちたい」というご意見をよくもらいます。革の中でも比較的水に強い革の種類や加工ってあるんですか?
  • 専門バイヤー 川端 そうですね、加工方法によって差はありますが、基本的には本革は「水に弱いもの」と考えていただいたほうが良いでしょう。防水スプレーなどの水濡れ対策はしっかりしていただいたほうが安心です。メンテを意識せず、見た目も妥協したくない! というなら合成皮革(PUレザー)が良いかもしれませんね。

フリートーク Free talk

水に強いのはブライドルレザーやオイルレザーです。

  • – ブライドルレザー ブライドルレザーは、革に蝋やオイルを染み込ませたもの。水や汗には比較的強いほうです。ただ、濡れたまま放置しておくと水膨れのようになることもあります。濡れてしまった場合は乾いた布で拭き取り、乾燥させることが基本です。
  • – オイルレザー オイルレザーはタンニンやクロームでなめした後、オイルを豊富に染み込ませたものです。オイルのおかげで撥水性があり、水にも比較的強いのが特徴。クリームを塗らずとも、乾拭きのみでメンテナンスが簡単なのも嬉しいところです。
  • – PUレザー PUレザーのPUはポリウレタンの略で、いわゆる合成皮革です。水濡れを気にする必要がなく、また汚れがつきにくいのも嬉しいところ。ただし、耐久性は本革と比べるまでもありません。寿命は2〜3年といったところで、経年変化は楽しめません。

ビジネスバッグは頻繁に使うものですから、自分にとってメンテナンスの負担が大きすぎないものを選ぶと良いでしょう。