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漆器の色んな知識

漆器の素材や、工程、扱い方など、知っておくとお得な色んな情報をご紹介。

樹脂の素材と表示

高度成長期と合わせて、漆器の世界にも新しい素材がどんどん使われるようになりました。

安価な事と気軽さが木製品に代わって、今では市場の殆どが樹脂製品です。しかしながら、その素材の普及スピードに一般消費者に正しく理解されていなかったり、説明していなかったり、粗悪な商品も出回っている事も事実です。

ここでは素材の特徴と塗装との相性、表示などをご紹介したいと思います。

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■木粉入り合成樹脂

漆器業界では一番出回っている素材の一つです。きちんと研いだり、下塗りをして仕上げた物は漆の仕上がりも比較的いい方です。

混合させる樹脂や成型温度によっては、高温にも非常に強い為、ウレタン塗料等で塗り、高温で乾燥したものは丈夫で、業務用などの漆器に使う場合も多いです。

表示名 「木合」、「木質」「木乾」「MDF」「合成漆器」など(産地、メーカーのよって異なります)
主成分 木粉と熱硬化性の樹脂(フェーノール等)の混合材
成型方法 金型で圧縮し、高温で成型します
質量 やや重い
硬度 硬度は高く、温度に対しては強く変形しにくい素材です。若干割れやすい
特徴 木粉が混入されている分、若干木製に近い質感を持ち、やや保温性もある。
注意点 研いでなかったり、研ぎがあまいと密着性が低く、すぐに剥げる事がある。

■メラミン系樹脂

高温や薬品、紫外線への耐久性は非常に強く、殺菌処理の必要な病院や学食、ドライブインなどでよく使われています。回転寿司のお皿などもこの系列の商品です。

最近ではメラミン専用のすばらしい塗料も開発されています。ただ、質量が重く、本来の漆器の質感からは遠い存在です。

表示名 「メラミン樹脂」「プラスチック」など(産地、メーカーのよって異なります)
主成分 熱硬化性の樹脂
成型方法 金型で圧縮し、高温で成型します
質量 重い
硬度 硬度は非常に高く、温度に対しては強く変形しにくい素材です。衝撃にも強い
特徴 塗らない場合は高温や薬品、紫外線への耐久性は非常に強い。木製の質感などは殆ど無い
注意点 研いでなかったり、研ぎがあまいと密着性が低く、すぐに剥げる事がある。

■ABS樹脂

一般家電や生活品の色んなところで使われている素材です。価格も安く、塗料との相性もいいので、漆器製品、特に飲食店、旅館などの業務用でもよく使われています。

ただし、グレードにより75℃以下でも成型ができるため、場合によってはお湯に漬けたら変形する物もあります。

業務用では耐熱ABSなど高温に対応できる商品が主流となっています。

表示名 「ABS樹脂」、「ABS」など(産地、メーカーのよって異なります)
主成分 熱可塑性の樹脂
成型方法 素材のペレットを熱で溶かし、金型に注入して成型
質量 重い
硬度 硬度は低いが粘りがあるので割れ難い。温度に対しては弱く物によっては80度前後で変形する場合あります。(耐熱ABSは120度前後)
特徴 木製の質感などは殆ど無いが、ウレタン塗料との密着は抜群に良い。
注意点 温度で融解するのでコンロのそば等において置くと変形する事があるので注意

■アクリル樹脂

素材そのものに色を混ぜた物は塗装しなくても仕上がりがきれいです。

表示名 「アクリル樹脂」、「アクリル」など(産地、メーカーのよって異なります)
主成分 熱可塑性の樹脂
成型方法 素材のペレットを熱で溶かし、金型に注入して成型
質量 重い
硬度 硬度は高く、粘りがあるので割れ難い。
特徴 基本的にアクリル専用以外の塗料は使えません。
注意点 高温で融解します。

■PET樹脂

みなさんご存知のペットボトルの材料です。

素材そのものの耐久性は非常に高いですが、漆器業界ではまだあまり浸透していません。リサイクル性が高いのですがコスト面や塗料などの相性の問題があります。

表示名 「PET樹脂」、「PET」など(産地、メーカーのよって異なります)
主成分 熱可塑性の樹脂
成型方法 素材のペレットを熱で溶かし、金型に注入して成型
質量 軽め
硬度 硬度、粘りともあるため傷が付きにくく割れ難い
特徴 リサイクル性もありこれから注目される新素材の一つです
注意点 素材は有名ですが、漆器の商品はまだあまり広く認知されていません

■漆器の技術も日々進歩しています。

以上に挙げた素材は漆器製品と呼ばれる代表的な物です。

現在、漆器業界では、リサイクル性、環境性、耐久性を兼ね備えた素材を日々研究しています。

漆器の素材は本来「木」であるべきですが、病院や老人ホームなどコスト面や殺菌問題などでやむを得ずプラスチック製品を使わなければならない人たちもいます。そういう方々にも冷たいイメージの無機質な食器より、少しでも食事を楽しめる漆器があるといいと思います。

素材にはそれぞれ短所、長所が明確にあります。コスト面さえクリアできればやはり平均点が高いのは「木製漆器」であると思います。その事を踏まえ、お客様の使う目的や使用環境に合わせて納得のいくお買物をして頂ければと思います。