Tadaaki Sakai
2013酒井忠晃さん 25年度産商品ページ

酒井さんの水田。アイガモの鳴き声はするものの、姿は見えない。

グワッグワッ、バシャバシャバシャ・・・。音は聞こえど、姿は見えぬ。ええい、どこだどこだ。

7月、阿蘇。猛烈な暑さとなった今夏の日本列島ですが、標高の高いここ阿蘇郡産山村とて例外でなく、少し歩き回るだけで汗たらたらと流れ落ちてきます。
おまけに酒井さんの田んぼにいるアイガモたちは警戒心の強さゆえか一向にその姿を現してはくれず、私は田んぼの畦をぐるぐると周りながら音のするほうへ追いかけてはまた逃げられる、という、イタチごっこならぬアイガモごっこを強制されているのです。

この暑さではいつまでも追いかけっこをしていられません。私は酒井さんからもらった「奥の手」を使うことにしました。

水田を泳ぎながら雑草を食べるアイガモたち。

■ 写真を撮らせてくれないアイガモちゃんたち「く〜ず〜ご〜め〜」テッテレテーレーテーレテー♪
人気のない山奥の水田でひとりドラえもんの真似をしながら奥の手である「クズ米」を取り出した私は、そのクズ米を勢い良く田んぼへ振りまきました。

「クズ米」とはお米の選別過程で取り除かれる粒の小さなお米のこと。酒井さんはこのクズ米をアイガモの餌として利用しているのです。

振りまいたクズ米が水を張った水田に着水した瞬間。バシャバシャバシャバシャグアグアグアグア。それまで逃げ回っていたアイガモたちが、恐ろしいスピードでこちらへやってきました。よし今だ、とカメラを構えると・・・・バシャバシャバシャバシャグアグアグアグア。こちらへやってきたスピードを遥かに上回る逃げ足で、水田の奥へと消えていきました。残念ですが、アイガモのアップの写真を撮るのは諦めるほかないようです。

と、別の場所にある酒井の田んぼに行ったところ、なぜかこちらのアイガモたちは警戒心がまるで緩く、好き放題写真を撮らせてくれました。

酒井さんが飼育している牛。良質な堆肥作りに欠かせない存在だ。

■ 農薬と化学肥料を使用しない米つくりこのアイガモの放たれている田んぼでお米を作っている酒井忠晃さんは、その昔、農薬の使用により年々ホタルやドジョウなどの生物が減少していくという現代稲作の環境破壊を目の当たりにし、農薬の使用を一切止めることを決意しました。それ以来、様々な除草方法を模索した酒井さんは、やがてアイガモを利用した除草方法である「合鴨農法」に辿り着き、現在でも農薬を一切使用することなくコシヒカリを栽培しております。

田んぼに投入する肥料分も、自身で飼育している牛から生産した、有機肥料である牛堆肥のみ。その牛は阿蘇の原野で収穫された牧草だけを食べ、外国産の飼料や病気防止の抗生物質などは一切投与されていない、健康的な牛ばかりです。

稲の登熟をチェックしに田んぼへ向かう酒井さん。

■ 熊本のお米が美味しい、その理由とは その昔、産山村を訪問した東北の米農家から「九州で美味い米が作れるわけがない」と言われた酒井さん。「本当の美味い米を食わせてやる」とばかりにその農家から送られてきたお米を食べてみたが自分の米のほうが美味しかった、とのエピソードを教えてくれました。

たしかに昔は九州産の米はそれほど人気がなかったので、「九州の米は不味い」という偏見があったのも仕方がありません。しかし、現在では熊本県内の米が24年度産米の食味ランキングで全国1位と2位になり、また、佐賀産の米も2位タイに入るなど、九州産の米は東北産に劣っていないどころかそれ以上に美味しいという事実が広がってきました。

その美味しさの秘密は、やはり「」。米の絶対的なブランドとして君臨する「南魚沼産コシヒカリ」の美味しさの理由として、越後山脈から流れ出る雪解け水が大きく貢献していると言われておりますが、だったらこっちも負けてはいないんですよね。こっちは「蛇口をひねればミネラルウォーター」と言われる水王国・熊本なんですから。
しかもその熊本に良質な天然水を提供しているのは、他でもない、この阿蘇地方の雄大な山々。その阿蘇で栽培したお米が美味しくないわけがないんです。

水源から湧き出る阿蘇の天然水。酒井さんの田んぼで使用している用水はこの水だ。

酒井さんの田んぼもすぐ横を川が流れており、その川の水を米作りに利用しているのですが、んじゃあ酒井さん、この川はどこから流れてきてるんですか?

「すぐ上に水源があるんだけど・・・行ってみるかい?」もちろんですとも!
普通の車じゃいけないから、ということで軽トラに乗り換えてきた酒井さんの後ろをついていき、辿り着いたのは人知れぬ小川。車を降り、さらにその小川を上流に200mほど歩いていくと・・・ありました、沢水水源です。■ 田んぼに注がれる、良質な阿蘇の天然水 位置的には、有名な「池山水源」と「山吹水源」のちょうど間くらいですが、道路が全く整備されていないので観光客が来ることはまずありません。地域住民の飲水として利用するために水の出口が取り付けられホースが引っ張ってありますが、それ以外は手つかずの自然のまま。酒井さんの田んぼまでは家もなんらかの施設も全く存在せず、よってこの水源から湧き出る天然水はなんの不純物が入ることもなく酒井さんの稲を潤しております。

酒井さんのお米の美味しさの理由。それは農薬や化学肥料を一切使用せず、これでもかと言うほどの良質な水で大事にお米を育てているからなんですね。