4月9日、緒方孝行さんがイセヒカリの種まきを行いました。今年度はヒノヒカリ、イセヒカリ、酒米の山田錦、それから自宅用のあきげしきを栽培します。
床土を入れておいた苗箱に種籾を播いたら梯子の上に並べ、ホースでたっぷりと水をかけます。苗箱の底面から水が滴るほど十分に湿ったら、土を振りかけていきます。その後、育苗器に苗を入れますが、緒方さんは育苗器の電源は入れずに無加温で発芽させます。加温せずに発芽させたほうが、その後の成長が良いそうです。
午後になると1週間後に種まきを行う山田錦の温湯消毒を行うため喜多ライスセンターへ。この日は長野訓之さんも同じく山田錦の温湯消毒を行いました。
4月16日の熊本地震では緒方さんの自宅や田んぼがある地区は幸いにも被害は少なく、5月7日に無事にイセヒカリの田植えを行うことができました。緒方さんがイセヒカリの種籾をもらった古澤昭夫さんは自宅が全壊し、水路も壊れ今年度の米の作付けはできなくなったことから、イセヒカリを栽培するのは緒方だけとなりました。
7月19日、生産者の田んぼを回っていると、緒方さんが山田錦の田んぼで手除草を行っていました。
緒方さんは東海大学農学部阿蘇キャンパスでバスの運転手として働いておられますが、熊本地震で阿蘇キャンパスが閉鎖となったため、熊本市内のキャンパスとの行き来が多くなったそうです。「昼間は暑いけど、空いた時間に草ば取っとかんと」
9月中旬にイセヒカリの稲刈りを行いました。9月に入ってからの阿蘇は雨続きでなかなか稲刈りができなかったのですが、当日なんとか稲刈りができそうになったため急いで刈ったそうで、撮影にはいけませんでした。稲刈りの写真は10月中旬のヒノヒカリの稲刈りの時に撮影します。
1989年、伊勢地方を襲った強い台風により伊勢神宮の神田で栽培していたコシヒカリは完全に倒伏しました。しかし、その中に2株だけ倒伏せずに直立していた株がありました。その株の籾を採取し、栽培したのが「イセヒカリ」です。
コシヒカリの突然変異種であるこの品種は、その発見の経緯からも分かる通り、倒伏に強いのが特徴です。稲は倒れると、当然倒れた下側の葉は影になり光合成ができなくなります。しかし、倒伏に強い=倒れないということは、全方向から光合成をきちんと行うことができるので登熟が進み、美味しいお米ができるのです。
また、イセヒカリは硬質米であり、コシヒカリ系のお米の割にはベチャベチャせずにしっかりとした歯ごたえがあります。品種特性としてたんぱく含量が低いこともあり、非常に良食味であることがイセヒカリの最大の特徴です。