抜けるような青空と、黄金色の稲穂たち。そして間近にそびえ立つ阿蘇外輪山。やがて迎える紅葉の季節を前に、山々の緑も一段と引き締まっているかのように見えます。
エコファーマー認定農家である緒方孝行さんは、ここ南阿蘇村長陽にて、10年以上前より減農薬・無化学肥料によるお米作りを行なっており、今年度は1枚の田んぼで無農薬・無施肥栽培にも挑戦しております。
品種は「あきげしき」。稲の背丈があまり高くない分、台風などにより稲が倒れる心配も低い等、栽培適正に優れているこのあきげしき。単に作りやすいだけではなく、とっても美味しいのも特徴でございます。
緒方さんは、そのあきげしきを「除草剤一回のみ」という限りない減農薬栽培にて作っております。種籾の消毒も殺菌剤などは使わずに「温湯消毒」というお湯を使った消毒で行なっておりますので、農薬の使用は本当に初期除草のたった一回のみです。肥料は南阿蘇有機肥料生産センターの有機肥料(BMW)のみを使用しております。もちろん無化学肥料です。
実は除草剤の使用が一回だけでは、完全に雑草を抑えることはできません。夏を迎えると、その強い日差しを受けて雑草が結構生えてきます。従って、田んぼに入って草取りをすることになります。平地より涼しい阿蘇の夏とはいえ、暑い中での草取りはかなりの重労働。しかしエコファーマー歴10年の緒方さんとっては、毎年恒例の当たり前の作業です。
あれ?明日稲刈りをするはずなのに、すでに少しだけ稲を刈り取って「掛け干し」してありますね。緒方さん、なぜにこんなことを?
すると緒方さん、その理由をこう説明してくださいました。
「その辺りは下から湧き水が湧いてきて地面が柔いんだよ。それでコンバイン(稲刈機)が入れられないから、あらかじめ手刈りして掛け干ししてるんだよ」
なんと。田んぼの下からじんわりと阿蘇山の湧き水が湧いてきてるというではありませんか。だから稲刈りにそなえて田んぼを乾燥させてもこの辺りは固くならず、コンバインを入れるとズボッと埋まってしまうので、稲刈り前に手刈りしているそうです。 湧き水の豊富な南阿蘇ならではの贅沢な悩みですね。
・・・ってことは、このお米はその湧き水を吸って育っているってこと。当然、美味しさも折り紙付きなわけです。