増田十九男さんの無農薬・無施肥栽培のお米。
Harvest 稲刈り
10月13日、稲刈りです。
昨年度よりお米の無農薬栽培を始めた増田十九男さん夫妻ですが、今年度は昨年度入れた土壌微生物活性水(BMW)も入れず、無施肥で栽培いたしました。本日稲刈りするそうですが、さてさて、出来はどんなもんだったんでしょうか。
増田さん宅へ到着すると、奥さんが稲刈りの準備をしておられました。今年の出来はどんな感じですか?
「そっがですたい、今年はたいぎゃー草が多くてですよ、こんコナギですばい、もう4回も5回も田ん入って手でかきまわしてですよ、あん写真撮りんこられた日の後もまー1回入ったとですばってん、もうえらい生えてですよ、こっち道べたは良かばってん水尻んほうに浮いた草が吹かれて溜まったごたって、まぁ〜えらい生えて、もうどぎゃんしこ米が取るっか分からんですばい。だけんあっちはあんまり写真ば取らんでください。でも下ん田んぼんは……」
えー、奥さんの話の途中ではありますが解説を挟みたいと思います。稲の無農薬栽培のキモはなんと言っても雑草対策であり、その雑草の中でも特に脅威となるのがヒエとコナギなんですが、コナギの方は窒素吸収量が多いため大量に生えるととにかくお米の収穫量が減るんですね。で、増田さんとこはコナギが多いので今年は収穫量が減りそうだ、と。
でも見た感じ結構分けつして穂数もありそうですね。コナギもおそらく手で土をかき回してプカ〜と浮いたやつが中干しで再活着したんじゃないでしょうか。一見すると確かにコナギは目立ちますが、ヒエもホタルイやクログワイもないので除草は比較的成功したのではないでしょうか。
そんなことを話していると籾コンテナを積んだ十九男さんとコンバインを積んだ北野悦之さんが到着。田の入り口と角はすでに刈ってありますので、すぐに稲刈りを始めます。まずは午前中に自宅近くの4枚の田んぼを刈り、午後から少し離れた田んぼへ移動。奥さんが言われいたようにこちらの田んぼのほうが草は少ないですね。しかもこの辺りはイモチ病が多かったにも関わらず、増田さんとこにはほとんど入っていないとのこと。窒素肥料をやらないと確かに収量は減りますが、その代わり病気にかかりにくくなるので結果的にそれほど収量は変わらなかったりするんですよね。慣行栽培で平均反8俵がイモチと倒伏で反7俵に、一方で有機肥料や無施肥では病気にかからず倒伏もしないためクズ米が少なく反6俵取れたり、とか。
というわけで増田さん夫妻が除草機も使わずに全面積を手でかき回して除草した、無農薬・無施肥栽培のヒノヒカリです。
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今日は稲刈りは北野悦之さん、籾の運搬は増田さんと古澤昭夫さんが行う。運搬の合間に刈り取りの様子を見守る。
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株間に生えたコナギ。見た目はそれほど目立たないが、高い窒素吸収量で米の収量を減らすやっかいな雑草だ。
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午後から下の田んぼに移動。この日は天気がよく、阿蘇五岳の一つである杵島岳もとてもよく見えた。
Summer 夏
やはり一筋縄ではいかないのがお米の無農薬栽培。やることやったら、あとはお天道様と稲任せ。
7月30日。長かった梅雨が明け、ようやく夏らしい天気が続いております。増田さん宅へ行くと、十九男さんの姿はなく。奥さん一人。「旦那は草刈りに行ったバイ」とのことですので、では奥さん、田んぼを見せてもらっていいですか?「うーん、今年はあんまり見せとうなかバイ……」あら、なんだか弱気ですね。
「端っこはあんまり撮さんでね」見ると、田んぼの端には少々コナギが生えております。「あれからもう2回草取りに入ったばってんね、なんか今年は草が多かとですよ」さらに梅雨が長かったのであまり生育が進んでないとのこと。でもこれくらのコナギなんて全く問題ないでしょう。それに梅雨明け後は暑い日が続いてますからね。ここからどんどん成長しますよ。
自宅前の田んぼからやや離れた田んぼに移動しますと、こちらは除草に入った回数が少ないにも関わらず草の発生が少ないそうで、生育も良好そう。「こっちの田んぼはどんどん写真撮ってよかよ!」とのことでした。
同じ集落の生産者の古澤昭夫さんの田んぼを周り増田さん宅へ戻ると、十九男さんもちょうど戻っておられました。
「やっぱ無農薬は一筋縄ではいかんな〜と思いましたね」
昨年はだいたい雑草を抑えられたんですが、今年は同じやり方にも関わらず雑草の発生は多め。慣行栽培であれば雑草が多ければもう一回除草剤振っとくか、となるんでしょうが、そうはいきませんもんね。稲の生育もそう。増田さんは今年度は無施肥栽培で育てておりますので(昨年も肥料はBMW液のみだったんですが)、天候不順で生育が遅れたとしても「んじゃちっと肥料足しとく」か、とはいかないのです。ある意味天任せと言いますか「人事を尽くして天命を待つ」のが無農薬・無施肥栽培。あとは元気に育ってくれるように稲に頑張ってもらいましょう!
Weeding 除草
稲の周りの土を一株一株手で混ぜ合わせる。増田さん夫妻の、気の遠くなるほどの除草作業。
増田十九男さんの住む南阿蘇の沢津野地区は標高550mに位置する高冷地のため、田植えはヒノヒカリとしてはずいぶん早い5月初旬に行います。夏場でも冷涼な気候のため、早めに植えないと分けつが進まないのですね。
5月21日。当店はまだ一枚も田植えを行っていないこの時期ですが、増田さんはもう2回目の除草を行っております。増田さんの除草方法は、昨年度のお米の商品ページでもお伝えいたしました通り、「全面手除草」です。
草の生えていないこの時期の手除草というのは、除草と言うよりは「抑草」と呼んだほうが正確かもしれません。まだ田植え後2週間ほどの弱々しい稲の周りの土を、手で一株一株攪拌していきます。そうすると、一見全く草が生えていない箇所でも、小さな白い根をつけたヒエやコナギなどの水田雑草がプカリと浮かんできます。
しかしお二人での作業とは言え、ご覧の通りの広い面積の田んぼを全て手除草となると……その苦労は計り知れません。「あとどれくらいで終わる、なんて考えたらダメよ。キツイだけ。手元だけ見て毎日毎日やってればいつかは終わるんだから」奥さんは笑いながらそう仰いますが……うーん、これはさすがに真似できません!
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腰を曲げ、両手で稲株の根元を丁寧に攪拌していく増田さん。とにかくキツい作業であることは言うまでもない。
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2回目の除草とあって雑草の姿はほとんどない。それでももう一度除草する。まさに「上農は草を見ずして草をとる」だ。
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そりゃ理屈的にはずっとやってればいつかは終わるのだが、なんせこの面積。しかも田んぼはここだけではない。
生産情報
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生産者
増田十九男
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生産地
熊本県南阿蘇村河陽
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品種
ヒノヒカリ
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農薬の使用
なし
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肥料の使用
なし
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除草方法
手除草
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種籾の消毒
温湯消毒を実施
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種籾の入手
自家採種
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栽培の履歴
田植え … 2015年5月
稲刈り … 2015年10月13日