Akiko Goto
2013後藤明子さん 25年度産商品ページ

阿蘇五岳を臨む平野部に位置する後藤さんの田んぼ。夏は景色一杯の緑が広がる。

正面に雄大な阿蘇の涅槃像を臨む阿蘇外輪山の山麓に位置する、阿蘇市一の宮町古城地区。
景色いっぱいの田園風景が広がるこの場所で、アイガモを使った除草により、農薬を一切使用することなくコシヒカリを栽培している農家がいます。■ 夫の意思を継ぎ作り続ける、安全なお米数年前、20年以上に渡って無農薬でお米を作っていた夫を亡くした後藤明子さんは、それでもその安全な米作りを止めることなく、今でも同じ田んぼで農薬・化学肥料を使用することなくお米を作っています。
亡き夫ともにずっと作り続けている田んぼ。その無農薬歴は今年で27年目となりました。

水田を泳ぎながら雑草を食べるアイガモたち。

農薬を使用しない米作りにおいて最も大変な作業、それが「除草」。次から次へと水田に生えてくる雑草たちをどう取り除くか。それが昔からの有機米農家の試練なのです。

後藤さんは、水田にアイガモを放ち、そのアイガモが雑草を食べることで水田の除草を行うという、いわゆる「合鴨農法」で除草作業を行なっております。 ■ 「合鴨農法」って、どんな農法? 合鴨農法の手順を簡単にご説明いたしましょう。

田植え前にアイガモ屋さんからアイガモを購入します。アイガモ屋さんがいるのがビックリですね。それと同じ時期に、水田を取り囲む柵を設置します。
この柵には二つの目的があります。一つはアイガモの脱走防止。昨年は九州北部豪雨の際に柵が壊れてアイガモが全て逃げ出し、捕まえるのににえらく苦労されそうですが、アイガモは少しの隙間から逃げ出すため、広い水田の周囲をきっちり取り囲む必要があります。
二つ目の目的は侵入防止。山麓のこの地区はイタチやらキツネ、タヌキなどが度々出没しますが、そういった獣類からアイガモを守る目的もあるのです。

役目を終えたアイガモたちは後藤さんの家にある鳥小屋で冬を待つ。

田植えから一ヶ月程経った6月中旬頃、水田にアイガモを投入します。稲が小さいとアイガモが稲まで食べしまうため、稲が食べられない程度まで成長しているのが投入の条件です。また、アイガモが大きすぎると、その成長した稲まで食べてしまうので、適度な大きさのアイガモを投入します。この辺りの調整を誤ると、全く除草しなかったり、稲が食べられて全くなくなったりと、悲惨な結果になるので要注意です。■ アイガモを放ってからが、また大変なんです で、後はアイガモを引き上げる8月中旬までは何もすることはない・・・わけではありません。
アイガモも完璧に除草してくれるわけではないので、草が取りきれなかった部分は手で除草することになります。後藤さんは念を入れて、雑草の見えない場所にも手押し除草機をまんべんなくかけて回るそうです。
また、水田の水位が低下するとアイガモが活動しなくなるので、泳げる程度の水深を常に確保しておくために、毎日の水管理は欠かせない作業です。
さらにさらに、水田を囲む柵に穴などが空いた場合、アイガモ脱走と獣によるアイガモ殺人事件、ならぬ殺鴨事件が起こってしまいますので、日常的な柵の点検も非常に重要な作業となります。
「合鴨農法は楽でいいなぁ」なんて思ってたら大間違い。実に大変な農法なのです。

阿蘇外輪山から湧き出る岩清水。後藤さんの稲作に使用している水は、この良質な天然水と全く同じものだ。

■ 「名水」が育む、地域でも評判のお米。後藤さんの田んぼのある阿蘇市一の宮町古城の「手野地区」は、昔からお米が美味しいと評判の地域
それもそのはず、この地域は阿蘇外輪山から豊富に湧き出る外輪山と九重山によって涵養された良質な天然水を、惜しげもなく田んぼの利用しているからです。

その美味しさは折り紙つきで、後藤さんの田んぼから3分ほど山を登った外輪山の中腹には「手野の名水」という岩清水の水汲み場が設けられており、毎週末には遠く熊本市内や県外から水を汲みにきた車が列をなすほどの有名湧き水スポット。
この「手野の名水」と同じ天然水を平野部でボーリングによって組み上げて農業用水として利用しているのですから、美味しいのも当然なのです。■ 今年の出来は良好だそうですよというわけで元気なアイガモと天然水によって育てられた、後藤さんの合鴨農法コシヒカリ。昨年は九州北部豪雨の影響で収穫量が少なめでしたが、今年は夏場の気温も高く、かなりいい実りとなったそうです。