Akiko Goto
2011後藤明子さん 23年度産商品ページ

アイガモと共につくる自然循環米。

合鴨の写真。

蘇市一の宮町古城。阿蘇を開拓した神様の祀られる「国造神社」から数百メートルほど山道を登ると、巨大な岩の隙間から音を立てて水が流れでています。知る人ぞ知る湧き水スポットである「手野の名水」です。癒しと長寿に効くとされ、休日には水を汲みにくる人々が列をなす憩いの岩清水スポットより、今度は下ること数百メートル。雄々とそびえる阿蘇五岳を望む水田地帯に後藤明子さんの田んぼはあります。

後藤明子さんの農法は、いわゆる「アイガモ農法」。アイガモを水田内で放飼し、雑草や稲についた害虫を食べてもらう農法です。後藤さんの田んぼでは、このアイガモ農法を利用して「無農薬・無除草剤」でコシヒカリを作っています。
肥料も、入れるものといったらアイガモたちの出すフンくらいのもので、それは当然完全なる有機肥料。化学肥料は一切使用しておりません。

以前は夫の国治さんと共に作っていましたが、5年前に国治さんが亡くなって以来、二人の子どもを育てながら女手ひとつでお米作りに励んでいます。国治さんは阿蘇内において最も早く無農薬栽培米を作り始めた人であり、それは実に25年以上も前のこと。
つまり後藤さんの田んぼは25年以上もの長期に渡り、農薬・除草剤・化学肥料を一切使用していないという、安全・安心な田んぼなんです。

水田を泳ぐアイガモ。

最初から最後まで活躍するアイガモたち。
雑草を食べてくれたり害虫を食べてくれたり、有機性のフンで稲を育ててくれたりと、攻守にわたりご活躍のアイガモちゃんたち。
6月に田植えを終えて2週間。苗が根付いたその頃、アイガモを水田へ放ちます。狐やイタチが入ってこないように電気柵に囲まれた水田で、アイガモたちは泳いで食べて悠々自適に暮らします。前述の通り、害虫や雑草がアイガモが食べてくれますが、さすがのアイガモたちも稲の病気までは食べてくれません。しかし阿蘇は標高が高く、夏でも気温が低いため、稲が病気になりにくいという特徴があります。そのため、完全無農薬でのお米作りが可能なのです。
そして暑い夏真っ盛りの8月下旬。稲の穂が出る少し前に、アイガモを引き上げます。この時期に引き上げないと、アイガモが稲の穂を食べちゃうそうです。

さーて、アイガモちゃんたち、おつかれ様でした。じゃあ山に放して自然に還しましょう。バイバ〜イ!・・・とはいきません。アイガモを山に放つと、まだ稲刈りが終わっていない田んぼや畑を荒らしたり、勝手に交配して生態系を乱してしまうので、山には放てません。
じゃあ役目を終えたアイガモちゃんたちをどうするのかと言いますと、これは当然自然の循環を行うことになります。つまり、食べるんです。

手野の名水。

後藤さんの家では鍋にしたりして、このアイガモたちを食べます。近所にも配ってるそうで、ご飯にお酒のおつまみにと毎年大好評のようです。
店長の私はカモを食べたことがないので、どんな味なのか全くわかりません。後藤さんの二人のお子さんに話を聞いてみましょう。君たち、アイガモ美味しい?「・・・う〜ん」。子供たちにはちょっと早い、大人の味のようです。

土、水、自然。そしてアイガモと人間。
後藤さんの田んぼがある古城の手野地区。ここで育つお米は地元でもとっても美味しいと評判なのですが、そのポイントは「」。手野地区の周囲を取り囲むようにそびえる阿蘇外輪山が数十年かけて育んだ天然水が川となり、川下に広がる水田地帯へ流れていきます。米作りに最も重要な要素である「美味しい水」が、とっても豊富な地域なのです。

25年間の無農薬・無除草剤・無化学肥料。阿蘇カルデラの粘土質の黒土と、阿蘇の自然が育む美味しい水。水田に放つアイガモが雑草や害虫を食べ、そのフンで稲が育つ。収穫した米とアイガモを人が食べ、また次の年に米とアイガモを育てる。一切の無駄のない後藤さんのアイガモ農法は、雄大な自然の中で培われる完全な循環型農業なのです。

  • 勢い良く流れ出る岩清水。
  • 流れでた岩清水が大きな川となる。
  • 稲刈りの終わった後藤さんの田んぼ。