Asononaka Store
2013阿蘇のなかストア 25年度産商品ページ

小高い丘に挟まれた田んぼ。計5枚、総面積1haと10aの田で米作りを行う。広い、広いねぇ〜。

昨年は緑米、黒米、赤米という三種の古代米を自然栽培で作った我々阿蘇のなかストアですが、今年度は普通のお米を作ってみようということでヒノヒカリを栽培いたしました。さてさて、ちゃんとお米はできたのでしょうか。■ 無農薬・無施肥でヒノヒカリ作りますまずは左の写真をご覧ください。いや〜、とっても素晴らしい景観ですね。今年は阿蘇市黒川地区にある小高い丘に囲まれたこの田んぼでヒノヒカリを栽培します。面積は1haと10a。普通のお米を作るのは初めてだもんで、ちゃんと作れるかどうか分かりません。しかも農薬と肥料は全く使いませんし。しかし、昨年の「自然栽培古代米」もなんだかんだでちゃんと収穫できたので、今年も何とかなるでしょう。よーし、頑張るぞ!

消毒剤は使わないので、お湯だけで籾を殺菌する。

■ 種籾の消毒はお湯を使った「温湯消毒」で4月。今年植えるヒノヒカリの種籾を北野悦之さんに貰った私は、「喜多無農薬米生産会」のメンバーが籾の温湯消毒を行っていると聞き、ついでにやってもらおうと喜多ライスセンターにやってきました。
やがて苗となり、そして立派な稲となる予定のこの種籾ですが、病気になったりカビが生えたりするとちゃんと成長しないので、種蒔き前にきっちり殺菌しておく必要があります。普通は薬剤で消毒するのですが、当然農薬類は一切使用しませんので「温湯消毒」というお湯を使った消毒を行います。65度のお湯に10分間浸すときっちり消毒できるそうで、昔は自宅のお風呂でやってたそうですが、消毒にむらが起こる場合も多いので、このライスセンターでは専用の機械を購入し消毒を行なっております。■ 田に作った苗代に苗箱を並べる「折衷苗代」200枚ほどの苗箱に種を播き終え、平らな場所に並べ、水をたっぷりやったら後は芽が出るまで放っておきます。芽が出て1cmほどの長さになったら、全ての苗箱を田んぼへ移動。そう!今年は田んぼに苗代を作ってそこで育苗を行うのです。

田の一角を波板で囲って苗代を作った。最初は手間がかかるが、一度作れば苗管理がとても楽なのである。

■ 阿蘇ではめったに見られないこの光景阿蘇地方ではビニールハウス内で苗を育てるのが一般的ですが、高島さんや宇都宮さんなど、折衷苗代育苗を行っている方々もほんのわずかいらっしゃいます。どうせ自然栽培で米作りをやるんなら、面白くて珍しくて自然に近い環境がいいな〜、ということで苗代に初挑戦。

田んぼを軽トラで踏み固め、ザッと平らにして苗箱を並べ、あとは苗箱の高さ+1cmくらいの水位に水を保ちます。あとは水位を保つように水管理をするだけ。毎日水やりをする必要がないし、水に浸かっているのでカビや病気の心配がないため、実は結構楽な育苗方法です。しかも丈夫な苗ができます。通りがかりの農家さんたちに「なんか面白いことやってるね〜」と珍しがられました。

■ あれれれ、田んぼに水が溜まらない6月初旬。さて、そろそろ田植えの準備でもしようかね、ということで棚田の一番上の田んぼに水を入れ始めたんです。次の日田んぼを見てみると、水が全くたまっていない。あれ?おかしいな。まぁ数ヶ月ぶりに水を入れるわけだし、最初は水を吸って溜まらないんだろう。呑気にそう考えておりました。しかし3日経ち5日経ち・・・なんと1週間経っても田んぼに水が溜まらない

田んぼには保水性の良い田んぼと保水性の悪い田んぼがあるんですが、この田んぼは保水性最悪の、いわゆる「ザル田」だったのです。ザルに水をためようとしても溜まるわけはなく、でも田植えしないともう6月終わっちゃうぞ!?どうしよう・・・そうだ、ポンプ買ってこよう。ポンプを使って別の用水路からも水を入れるんだ!

田植えする店長。直線だけは綺麗に植えることができるようになった。でも、まだまだです。

ポンプを使って夢のダブル入水を行うことでなんとか水が溜まり始め、そうして全ての田に水が溜まったのが6月27日。ホホホ、こんな時期にまだ田植え終わってないのってウチだけですわな。ま、田植えできないよりマシです。■ 今年も店長が少しだけ田植えしました翌6月28日。恐らくは阿蘇で最も遅い田植えが始まりました。昨年同様、当店スタッフのお父様に田植えをお願いしたんですが、今年は私も1列じゃなくて1枚丸々田植えしました。慣れれば直線は割りときれいに田植えできますね。これも私の才能によるものかと思われます。コーナーですか?コーナーは難しいんでお任せしました。「んじゃ1枚丸々やってないじゃないか」って?すみません、堪忍してくださいよ。

7月の田んぼ

除草機をかける店長。今年も除草機は北野悦之さんに借りました。来年は自分で買う予定・・・お金があったらね!

■ 除草機と深水管理で行う雑草対策いよいよ今年も除草の時がやってきたあああ!米の無農薬栽培とはつまるところ除草剤を使わずにいかに除草するか、これに尽きる。
いろいろな文献を参照した結果、田植え直後から田の水位を深く保つ「深水管理」と「田植え2週間以内に除草機を2回かける」、これを実行すれば雑草など恐るるに足らないぜ、という結論に達しました。よーし、まずは「深水管理」だ。水をたくさん入れて水位を深く保つぞ。■ 収量を取るか、雑草対策を取るか・・・ヤバイ、そういえばここは「超ザル田」だった。水を入れれば溜まるのは溜まるんだけど、あっという間に抜けていく。まさにザル。一般的な田んぼの水位は24時間で2〜3cm減少するくらいなんですが、うちの田んぼは・・・あらヤダ、2時間で1cm減ってるじゃないか。
水を入れ続ければ水は溜まる。止めれば瞬時に減っていく。ということは・・・「常に水を入れ続ける」という選択を取らざるを得ないことになります。水はこの田んぼ専用のポンプがありますんで、水量には困らないし、入れ続けても他の田に迷惑はかからないのですが、阿蘇の冷たい地下水を入れ続けるということは水温が上がりにくくなり、稲の成長を阻害するおそれがあります。

深水を行えずに雑草だらけの田んぼになるか、冷たい水を入れ続けて水口周辺の稲の成長が止まり米の収穫量が減るか・・・考える余地はありません。24時間入水をゴーだ!!

あとは除草機をかけるだけ。「かけるだけ」なんて言っちゃってますが、この作業が一番キツいんですけどね。1haと10aといったら昨年の3倍の面積。エンジン付きの除草機とはいえ、ぬかるみに足を取られながらの作業は歩くだけでも体力を消耗していきます。しかも反対側についたらいちいち機械を担いでUターンしなきゃいけませんし。■ 「もしかしてきっちり深水管理すれば除草機いらないんじゃないの」説 と、ここである事に気づきました。
同じ田んぼ内でも、妙に雑草が多いところと、全く雑草が生えていないところがある・・・。草が多いところは除草機でも取りきれないくらいだが、少ないところは除草機をかける必要がないくらいに少ない。なぜだ・・・?

結論。今回、ザル田だったせいで2回ほど行う田植え前の代かきを1回で済ませたために田んぼにやや高低差があり、水がすごく深いところと浅いところがある。浅いところはポンプの水が止まったり、用水路に草が詰まったりして少しでも入水量が少なくなると、すぐに地面が顔を出すために酸素を必要とする雑草(主にヒエ)があっという間に生えてくる。
しかし深い場所は少し水が減っても水位が保たれているおかげで「深水」を維持できており、そのような場所には全く草が生えていないのである。しかも、ヒエはもちろん、酸素を必要としない雑草である「コナギ」の姿も全くない

ということは、田植え前に田や畦の整備を行った上で15cm以上の成苗を植え、すぐに10cm以上の深水を行い、それが90日ほど持続できれば、除草機すらかける必要はないのではないだろうか。実際、以前本で読んだ東北の有機農家は田植えしたら稲刈りまで一回も田には入らず、除草作業は機械除草も手除草も全くしないと言っていた。田植え後2回のチェーン除草だけしか行わない農家も多いそうだ。冬や春の耕起や苗の成苗植え、そして深水だけで完璧に抑草できているのだろう。
うむむ・・・これは来年の米作りに向けて、いい勉強になったぞ。

結局、今年は収穫量を犠牲にして水を入れ続けたことによりヒエはほとんど発生しませんでしたが、途中ポンプが雷で壊れたことにより1週間水が来ず、結果、稲の成長を阻害する雑草である「コナギ」が大量に発生し、無施肥で元々少ない収穫量はさらに減少したのでした。コナギはある程度育ったら除草機かけても無駄ですね。「生えたら取り除く」ではなく「そもそも生えさせない」ことが重要です。

そういえばチェーン除草、一応今年も2回やったんですが、一人で田んぼ行ったんで写真撮りそこねました。チェーン除草による除草と抑草は多少効果があったように思えますが、実際、除草機をかけずにチェーン除草だけなら随分楽になります。1ha作業するのに除草機は10時間、チェーン除草は2時間くらいですもん。

9月。穂はまだ青々としている。周囲のコシヒカリの田はもう稲刈りをしているところもある。

■ 除草作業より草刈りのほうがキツいかも雑草の蔓延る時期が過ぎたら、あとは毎日の水管理定期的な畦の草刈りを行なっていきます。
実は畦の草刈りも除草作業と同じくらい・・・いや、除草作業以上にキツい、非常に重労働な作業でございまして、特に当店の田のように棚田状になっている田は、切りにくいし足場が不安定で危ないし、とかなり大変。1ha以上の草を刈ると丸1日かかってしまします。しかも今年は阿蘇もかなり暑く、店長も草刈り中に熱射病にかかってしまいました。畦の草刈りは効率化が難しいですからね。辛いところです。

記録的な暑い夏が過ぎ、すこし遅い秋が訪れ、そして田植えから約4ヶ月。いよいよ稲刈りの時がやってきました。

稲刈り中の田んぼ

稲刈り中の田んぼ。残すところあと5列。うーん、我ながらなんていい写真を撮るんだろう。

■ 阿蘇地方で最も遅い稲刈り、始まるハッハッハもう11月だ!田植えが遅けりゃ稲刈りも遅い。いいんだいいんだ、昔は6月末に田植えして11月に稲刈りが当たり前だったらしいから、昔に戻っただけです。

稲刈りは笠野真喜さんにお願いしました。笠野さんは南阿蘇村の村議会議員、兼、農家でして、以前より無農薬でお米を栽培されております。今年から「喜多いきいきくらぶ」に所属し、酒米の無農薬栽培も始められました。

稲刈り当日。笠野さんと笠野さんの息子さんがそれぞれ3条刈りと2条刈りのコンバインを操り、丁寧に稲を刈り上げていきます。まず2条刈りの小型のコンバインが田に入り周囲をぐるりと刈り上げ、その後、小回りは効かないが刈る範囲が広い3条刈りで一気に刈っていきます。
途中、宇都宮さんも応援に来て下さり、コンバインで刈れない端っこの稲を手刈りしてくれたり、笠野さんちのライスセンターに収穫した籾を運んだりしてくださいました。笠野さん、宇都宮さん、本当にありがとうございました。
朝9時から始めた稲刈りは午後2時には終了。昨年の掛け干しと違って、あっという間に終わってしまいました。明日は籾摺り作業。阿蘇のなかの米作りもいよいよ大詰めです。

籾摺り前の籾。選別機を通していないので、雑草の実やら石やらいろいろ混じっている。

■ 乾燥したら籾摺って、ようやく米作り完了収穫された籾はすぐに乾燥機に入れられ、米内の水分量が15%程度になるまで乾燥されます。米の水分量が多いほうが炊いた時に美味しいのですが、その半面カビが生えやすいので、食味と保存を考慮した結果、この15%が最適な水分量なのです。
また、収穫した籾をそのまま放っておくと、微生物の活動によって熱が発生し品質が低下するので、必ず収穫後4時間以内に乾燥機に入れなければいけません。収穫後もいろいろ大変なんです。

収穫時の水分量によって乾燥時間は異なるのですが、おおよそ10数時間程乾燥させ水分量が15%程度になったら籾摺り作業に移ります。
籾から籾殻を取り除くと、おなじみの「玄米」となります。取り除かれた籾殻はライスセンターの裏側の籾ゾーンに吹き飛ばされて降り積もり、阿蘇山のように高くそびえ立っております。

籾を摺ったお米は網を通し、ある程度の大きさの以上のものだけに絞っていきます。小粒のものは弾かれ、別の袋に入れられていきます。俗にいう「くず米 」ってやつです。その後、色彩選別機「ピカ選」で混入している雑草の実などの異物などを選別して取り除き、出荷用のきれいなお米となります。機械で30kgずつ計量しながら袋詰めを行い、袋をきっちり結んだら・・・・ようやく阿蘇のなかのヒノヒカリが完成となります。やったぜー!!

田んぼで新米を食べてみる。

■ 阿蘇のなかのお米は美味しいのか自分の作った米がどれくらい美味しいか。これは全ての米農家が気になるところであると思います。
一般的に、無施肥の自然栽培のお米はさっぱりとした味わいになると言われておりますが、どうなんでしょう。

前日に籾摺りを終えたばかりの玄米を精米し、さっそく食べてみました。
どうせなら「究極の地産地消をしてやれ」と思い、米を作った田んぼで食べてみることに。
お櫃に入れてきたご飯を茶碗によそって、それではいただきます。モグモグモグ・・・。



・・・あれ?結構美味しい。
 ちゃんとヒカリ系品種特有の甘みもある。でもモチモチ感は普通のヒノヒカリより控えめかなぁ・・・うーん、分かんねぇや

というわけで、生産者的には結構美味しいような気がする「阿蘇のなかの自然栽培ヒノヒカリ」、お一つどうですか。
よーし、来年はもっと頑張って作るぞー!!