熊本地震からおよそ1ヶ月が経った5月13日、荒牧さんが田植えを行いました。
幸い家や圃場の被害は少なかったのですが、辺りの家や駅舎の屋根はブルーシートで覆われ、家のすぐ近くにそびえる夜峰山には大きな亀裂が何本も入っているのが見えます。「大雨が降るたびに避難せんといかんけん大変ばい」と話す荒牧さんは、それでもなんとか田植えにこぎつけた安堵感からかホッした様子にも見えます。
田植えも順調に行っていきますが、ここへ来るまでは相当苦労があったとのこと。「地震で田んぼの中にかなり高低差ができた。水入れたあとに初めて分かったけん、慌てて代掻きで均したよ」とはいえ、震度7でできたズレはそうも簡単に直せるはずもなく、今でも田んぼの上と下では10cm近く差があります。「もう直す暇はないけん、冬にどうにかするしかないね。まぁ今年は田植えできただけでもよかったばい」
田植えから40日経過し除草作業も一段落する頃ですが、さすがは荒牧さん、今年も雑草が全く見当たりません。地震の影響で水が途絶えないか心配でしたが、どうやら大丈夫のようです。
今年の米作りは最初から最後まで大変な年でした。
4月の熊本地震の後は6月から7月にかけて毎日のように豪雨が降り注ぎ、度々の避難を余儀なくされました。7月後半〜8月は好転に恵まれたものの、9月に入ってからはまた長雨。当初は稲刈りを9月13日頃に予定しておりましたが、雨で田んぼに水がたまりコンバインが入れないため、なかなか稲刈りができません。9月24日になってなんとか田んぼに入れるようになりましたが、また明日は天気が悪いようなので急いで稲刈りを行います。
田んぼへ着くと北野悦之さんがもう半分ほど稲を刈り終えていました。「まーだ水が抜け切れとらんけん地面が柔いけど刈らんとしょうがなかばい」と、ぬかるみの中、コンバインをなんとか動かしていきます。最近の大型コンバインはクローラ(キャタピラ)の幅が広いため、多少のぬかるみでも沈まずに作業できるのが利点です。
荒牧さんは軽トラに乗り込み籾を運ぶためライスセンターと田んぼを往復しています。刈り取った籾はすぐに乾燥作業を行い、次の日には籾摺りをして玄米となります。