珊瑚について5

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珊瑚について

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<サンゴの種類>


サンゴとは腔腸動物で、炭酸カルシウムを主成分とした骨軸をつくる群体の総称です。宝石としての「珊瑚」といわゆる「サンゴ礁」をつくるサンゴは異なる種類の生物です。




六放サンゴ


ポリプ(サンゴ虫)の触手が6本かその倍数に分かれ、いわゆる「サンゴ礁」を形成するサンゴです。テーブルサンゴ、すり鉢サンゴ、石サンゴなど数百種類とイソギンチャク類が含まれます。
六放珊瑚は体内に共生する褐虫藻という植物が光合成を行うので太陽の光を必要とし、熱帯や亜熱帯の浅く(水深50mまで)暖かい(20℃以上)海岸で、多様な生き物たちに生息環境を提供しています。
骨格は小さな穴が開いた軽石状で非常に脆く、宝飾品には適しません。




八放サンゴ


主に深い海(水深100m以上)に生息する硬質のサンゴで、宝石珊瑚はここに含まれます。宝石珊瑚が属す八放サンゴは、ポリプ(サンゴ虫)の触手が8本に分かれていて、多くは太陽の光が届かない深く冷たい海の底でひっそりと生息しています。
数百ミクロン程度までの微小な浮遊物などを捕食して、ゆっくりと成長して行きます。
八放サンゴのうち、硬く、磨いたときに美しい光沢を得られるものが「宝石珊瑚」として用いられます。これらは、モース硬度で3.5(人の歯と同等)、磨くと美しい光沢を放ち、太古の時代から洋の東西を問わず宝飾品として愛されてきました。

 

 

<宝石珊瑚の種類>


宝石珊瑚として用いられる珊瑚は、サンゴの種類や色などからさまざまに分類されています。

日本産・赤珊瑚(アカサンゴ)
   
当店では地中海産の赤い珊瑚と区別するため、特に日本産のものを血赤珊瑚(ちあか・日本産)と表示しています。


血赤珊瑚の生息地


血赤珊瑚は日本近海(小笠原列島・五島列島・奄美・沖縄・宮古島周辺)で特に土佐湾の水深100~300メートルの海底に棲息しています。

日本産・血赤珊瑚の原木は潮流が流れてくる方向に向けて手を広げるような形で海底にくっいています。そのまま引き上げられた原木は扇のような美しい形のまま飾る拝見物としても用いられています。

日本産・血赤珊瑚は裏面と表面があります。潮流が流れてくる表面珊瑚のポリプが付いていて穴跡が多くなりますが、反対側は滑らかな美しい面です。


10ミリ以上の丸玉は希少!


血赤珊瑚の原木は根元付近で直径3センチくらいで高さも30センチくらいとあまり大きくなりません。その上、根元付近は岩に付いていたりしているため丸玉をつくるような状態ではないので、丸玉は枝部分の比較的よい部分で作ります。

平均的な枝の太さで取れるのは8ミリ位の丸玉までです。珊瑚の裏面に穴跡が多いことも大きな玉を取るためには障害となります。
このため、10ミリ以上の綺麗な丸玉は希少性が高く大変高価なものとなります。


「血赤珊瑚」とカラーグレード


本来、血赤珊瑚とは日本産や地中海産に限らず血の色のように赤黒い色(オックスブラッドとも呼ばれています)<カラーグレード4~5>のことで、これが最高の血赤珊瑚とされています。
しかし当店では日本産を血赤珊瑚と表示していますから明るい色である<カラーグレード1~3>も血赤珊瑚と表示しています。

しかし日本産・血赤珊瑚は深海で生育しているため密度が高く色が薄くても透明感のあるとても綺麗な珊瑚となっています。


日本産の証「フ」とは


日本産・血赤珊瑚の大きな特徴は原木の中心を人間の骨のように白い色の「フ」があることです。そのため原木をカットして丸玉を作ると2箇所白い色の「フ」が出て来ます。これは地中海産の赤珊瑚には見られません。

高価な血赤珊瑚の丸玉では出来るだけ「フ」を避けて丸玉を作らなくてはならないため「フ」の無い大きな10ミリ以上の丸玉は殆ど不可能となります。「フ」の少ない原木はとても希少で、あっても高価なものとなります。


天然珊瑚ならではの欠点


珊瑚は何気圧もある深海に生息していてその珊瑚が引き上げられることにより気圧から放たれた珊瑚の原木は「ヒ」と呼ばれるクラック(縦方向の筋目状のひび)ができます。

そのほかにも珊瑚は海中で成育しているため、フジツボ等の貝や甲冑類など、色々なものが珊瑚に付着することがあります。その場合これらを巻き込みながら成長するため、加工の途中に巻き込まれたものが現れてきます。これが不純物となったり、現れたものが取れて、その部分に凹やキズなどが出来たりします。これも天然ゆえの証となります。


ますます希少に、高価になる日本産の血赤珊瑚


特に土佐沖で採取される血赤珊瑚は世界最高の評価を受けています。しかし、日本産・血赤珊瑚は採れる量が非常に少なく土佐沖は採れたうちの の虫食い珊瑚が8~9割の為、宝石珊瑚として加工できるものは1、2割しかありません。
そのため価格は20数年来毎年右肩上がりです。

特にここ数年は、中国で日本産・血赤珊瑚の人気があり、日本で採れる血赤珊瑚はほぼ全ての原木が高値で台湾に輸出されています。このため質の良い血赤珊瑚はますます手に入りにくく高値になっています。(2011年)


血赤珊瑚の拝見物


珊瑚の表面と裏面の違い


岩についている所


断面に白い「フ」の部分が見える


血赤珊瑚の丸玉。フの部分に穴をけをするのが普通


わずかにフが見えるが、欠点の少ない希少な10mm丸玉


巻き込まれた不純物が取れた穴


「ヒ」と呼ばれるひび割れ



地中海産・赤珊瑚
   

当店では地中海産の赤珊瑚を赤珊瑚(地中海産)と表示しています。


赤珊瑚の生息地


赤珊瑚は地中海沿岸の各国(イタリア・フランス・スペイン・チュニジア・アルジェリア・ユーゴ・ギリシャ)で採取されています。赤珊瑚は業界でサルディとよばれていますが、これはイタリア半島西方の地中海にうかぶ島の名前(サルディニア)のことで昔から宝石珊瑚が採取される好魚場で名前がそのまま珊瑚の名前になっています。

日本では、別名「胡渡り(こわたり)」とも呼ばれ、これは胡(ペルシャ)をはじめ西方から伝来したという意味でつけられた名前です。

地中海産の珊瑚は日本産と比較して浅いところ(水深50~200メートル)に棲息しています。日本産の赤珊瑚のような、裏表がなく、全体にポリプがあります。他の珊瑚に比べて柔らかく、内部にキズや内包物、薄い白濁などの欠点が潜んでいる場合が多くあり、廃棄率が高く歩留まりが悪いのが欠点です。

品質的に比較的欠点の少ない珊瑚は水深80メートル以上のところから採取され、研磨したとき色調や艶の美しいものが得られます。


日本産の赤珊瑚との違い


日本産・血赤珊瑚のような白い色の「フ」が無く単一な色で、珊瑚自体の色ムラは少なく、仕上がり面の色調は美しい赤色です。

しかし、日本産・血赤珊瑚のような透明感はなく、日本産ほどの希少性もありません。そのため、日本産の血赤珊瑚に比べて割安感があります。殆どの日本の小売業者は地中海産の赤珊瑚を販売しています。

また、原木の形が日本産・血赤珊瑚のように美しいものはなく、拝見物は地中海産珊瑚では作られません。


日本産に比べて小ぶりなものがメイン


地中海産の珊瑚の原木は高さが20~30センチ程度で枝の広がりも10~15センチ程度、枝の直径も10~15ミリと小さく、重さも100~150グラム程度のものがほとんどです。そのため出来る丸玉は6ミリ玉前後で10ミリ以上の丸玉は地中海産では稀です。

逆に「フ」がなく均一な色であるため、かなり小さなサイズの玉も作られています。これを活かした細い連を束ねたり、小さなパーツを編んだアクセサリーなどがあります。


赤珊瑚でも見られる値上がり傾向


最近の地中海産・赤珊瑚は価格が以前に比べ3~5割り高くなっています。
(2008年)


地中海産の赤珊瑚の丸玉ネックレス


枝の形を活かしたネックレス。凹や、色むらもある


小さな赤珊瑚の玉を編んだブレスレット



 

桃珊瑚(モモイロサンゴ)
   

桃珊瑚は赤に近い色から白に近いピンク色まで色調は幅広く、宝石珊瑚の中で最も大きく成長します。


桃珊瑚の生息場所


血赤珊瑚と同じく日本近海(小笠原列島・五島列島・奄美・沖縄・宮古島周辺)で採取されます。水深200~500メートルの場所に棲息しています。

宝石珊瑚の中で最も大きく成長し、高さと幅が1mを超える原木も珍しくなく重さも40キロの珊瑚も採れます。


彫刻作品にもなる桃珊瑚


珊瑚の中でも粘り気のある桃珊瑚は彫刻がしやすく、彫りの入った帯止めやブローチやペンダントなど、仏像などに使われています。

とくに、大きさゆえに、昔から仏像をはじめとした置物になる大き目の彫刻物にも使われています。


幻の本ボケ


桃珊瑚の中でも薄いピンク色の均一な色調のものは海外では「エンゼルスキン」、日本では「本ボケ」と呼ばれて、高く評価されてきました。しかし、今では採取されておらず幻の珊瑚といわれています。

だんだん色が濃くなると「マガイ」と呼ばれ(海外では「フェニックス」)、これも綺麗な薄桃色の珊瑚です。


「フ」や年輪状の筋目


また、桃珊瑚も血赤珊瑚と同じく骨軸の中心に白い色の「フ」があります。


近年の桃珊瑚の値段


ここ数年で原木の価格が倍近くになりました。イタリアへの輸出で日本の輸出目的の業者が無秩序に価格を吊り上げたため日本の珊瑚職人が価格高騰で原木が手に入らず困っているのが現状です。


いろいろな色の桃珊瑚


桃珊瑚の白い「フ」


桃珊瑚の仏像


両面彫りのペンダント


幻の本ボケ

 

白珊瑚
   


白珊瑚の生息場所


白珊瑚は南シナ海、沖縄近海、五島列島から長崎沖、土佐湾など水深100~400メートルの海底に分布する種類です。

骨軸はすべて白色ですが、原木の表皮は柿色をしており、研磨されない状態の外見は桃珊瑚に似ています。


白珊瑚の色


白珊瑚は白色が基調ですが、淡いピンク色がわずかに混ざっている場合があります。色は純白から乳白色、セピア色までありますが、純白のものは貴重です。

一方で、東シナ海で採取される白珊瑚には象牙色をしたものがありこれも珍重されています。最近は採取されておらず、ほとんど市場での流通もなく貴重な品です。

シナ海産の白珊瑚は殆ど流通しておらず原木を持っている業者がときどきオークションに出してきますが、白珊瑚としては高値で取引されます。

純白の白珊瑚原木も殆ど見ることがありません。


深海珊瑚


下に説明する深海珊瑚は、白とピンク色が混ざり合った色ですが、研磨した結果、まれに白の均一な色のものが得られます。これも白珊瑚として用いられます。


白珊瑚の丸玉


セピア色の白珊瑚の彫り物


ピンク色の斑紋が見える

 

深海珊瑚(ピンク珊瑚)
   

深海珊瑚の生息場所


深海珊瑚は宝石珊瑚の中でも際立って深い水深1,000メートルを超える深海底で採取されるのでこの名称が商品名になっています。
この珊瑚の発見は比較的あたらしく昭和39年にミッドウェー海域で発見されました。


深海珊瑚の色と評価


深海珊瑚は白色とピンク色が混ざり合った珊瑚です。ピンク色が濃く色が単一なものほど、高く評価されます。

特に均一な色のものは、色合いによって「ピンク珊瑚」「白珊瑚」として用いられます。


圧力差によるひび割れ


深海珊瑚は深海から珊瑚が引き上げられることにより気圧から放たれた珊瑚の原木は「ヒ」と呼ばれるクラック(縦方向の筋目状のひび)が非常に多く見られます。

研磨の際のロスも多く、ほとんどのものは一律に研磨されて、安価な評価になります。


ピンクと白の混ざった色


薄いピンク色


濃いピンクの深海珊瑚


「ヒ」といわれるひび割れ

 

ピンク珊瑚
   

ピンク珊瑚といった場合は、珊瑚の生物的な分類ではなく「ピンク色をした珊瑚」といった意味合いで、色々な種類の珊瑚が含まれます。

上の深海珊瑚のほかにも、ミス珊瑚(淡いピンク色)、ガーネ珊瑚(ピンク色に白色のコントラストが美しい珊瑚)、ミッド珊瑚(少し濃い目のピンク色)などの珊瑚があります。


均一な色のものは希少


ピンク珊瑚はいろいろの種類がありますがほとんどがピンクに白い色が混ざり合うか、「ヒ」が多いため完璧なものは数十個に1個あるかないかというくらいです。故にピンク一色の珊瑚で傷のないものは希少価値です。


ミス珊瑚のカメオ


ガーネ珊瑚の薔薇


ミッド珊瑚

 

黒珊瑚
   

他の宝石珊瑚とは異なり、六放珊瑚の一種で、今では輸入が禁止されています。

このため、現在流通しているものは禁止される前に輸入されたものです。

黒珊瑚はモーニングジュエリーとしても使われています。特に丸玉のネックレスやイヤリングなどは、喪服に合わせてもお使いいただけます。


黒珊瑚のネックレス



生木と枯れ (虫食い)
   

海の中で倒れた珊瑚は時間がたつに連れて、風化して穴が開き、色があせて行きます。

こういったものは、「枯れ」「虫食い」などと呼ばれます(これに対して海中で生きていたものは「生木」などとも言われます)。

また、倒れていた時間によって穴の開き具合や色味なども異なっており、それほど時間がたっていないものは穴も少なく色も濃いですが、時間がたつにつれて穴が多く軽石のようになっていきます。倒れてからの時間によって「一番枯れ」「二番枯れ」など呼ぶ場合もあります。

生木に比べると評価は低いですが、枯れ具合によって独特の味があります。ちょっとマニア向けの珊瑚かもしれません。


色も濃く、穴もそれほど多くないもの


かなり軽くなった虫食い珊瑚


虫食い珊瑚のネックレス