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2005年10月16日(日)、爽やかな秋晴れの下、熊本県阿蘇郡南阿蘇村にある野外劇場アスペクタにて第17回カントリーゴールドが開催された。主宰者である熊本在住のカントリー・シンガー、チャーリー永谷氏は05年5月に、米国のACM(Academy of Country Music)から、カントリーを国際的に広めた人物に授与される“Jim Reeves Memorial Award”を受賞。もちろん日本人初の快挙である。また05年11月には初の自伝『My Name Is Good Time Charlie』を発刊[熊本日日新聞社]。発売日に先がけ会場内でも販売されていたが、好評のうちに持参分完売となったようだ。今回はチャーリーにとって、一段と思い出深い日となったことだろう。
前日は小雨が降り、音合わせに苦労する等スタッフを悩ませたようだが、当日は朝からそんな杞憂を吹き飛ばす快晴。観客も早くから大勢詰め掛けた。出店は例年よりやや少なめだったが、飲食物はじめウエスタン・ファッション、カントリーCD/DVD等、開演前からどの店も賑わっていた。
10時からは舞台前に設置されたダンス・フロアにて、恒例のカントリー・ダンス講習会が開かれた。10/26発売のコンピレイションCD『Let’s Boots Dancin’ 2005』[BMGジャパン BVCM-31174]に合わせ、皆楽しそうにダンスを練習していた。CDも会場内でいち早く販売され、こちらも好評のようだ。興味のある方は『あめりかん☆ぱい』までお問い合わせいただきたい。
正午過ぎに開会セレモニーが行われ、引き続きチャーリー永谷&キャノンボールの演奏が始まった。いつも通り、最新ヒットとフェイヴァリット・ナンバーを組み合わせた構成。安定感のあるバンド・アンサンブルはいつ聞いても心地よい。演奏終了後はこれまた例年通り、会場内を回りファンと交流するチャーリーの姿があった。たとえ名誉ある大きな賞を受賞しようとも、その真摯な姿勢に全く変わりはない。
2番手はライアン・ホラデイ[Ryan Holladay]。92年6月30日生まれの彼は05年にやっと13歳になったばかりという、天才少年の呼び声高いブルーグラス・アーティストだ。音楽一家に育つという恵まれた環境の下、5歳でナッシュヴィルのGrand Ole Opryに出演。家族のバックアップを得て順調にその才能を伸ばし、05年にRicky SkaggsのレーベルSkaggs Familyよりアルバム“New Kid In Town”でメジャー・デビュー。Dierks Bentley, Chris Thile (Nickel Creek), Steve Warinerらの書き下ろし曲やトラディショナル、そしてEagles[表題曲]らのカヴァーを収録したこのアルバム、ぜひ一聴をお勧めする。今回音楽の国際交流として地元の中学校を表敬訪問したとのこと。中学生たちも彼の腕前にさぞかしたまげたことだろう。バンドは父親のMark(ギター/ヴォーカル)、おじのMike(ベース/ヴォーカル)、そしてTyler Andal(フィドル/こちらも17歳!)との4人編成。CD同様、父親とリード・ヴォーカルを交替しつつ、その天賦の才を披露。今後ショウビズ界の荒波に飲まれず、大きく伸びて行ってほしいものだ。
3番手はケイジャン・ミュージックのヴェテラン、ジョーエル・ソニエ[Jo-El Sonnier]。10代から活動を始め、70年代にカントリーにも進出。87年にリリースしたアルバム“Come On Joe”[88年第17位]から“No More One More Time”[88年第7位]“Tear-Stained Letter”[88年第9位]が大ヒット、注目を集めた。ライヴも“Come On Joe”収録曲を中心に、カントリー・クラシック“Jambalaya (On The Bayou)”から、“Polk Salad Annie”“Johnny B. Goode”“A Whiter Shade Of Blue”といった有名曲まで、軽快なアコーディオンの音色、ケイジャンの陽気なサウンドと相まってノリノリ! 観客もダンス・フロアで踊りまくっていた。
4番手は大ヴェテラン・シンガー、ストーンウォール・ジャクソン[Stonewall Jackson]。50年代半ばに活動を開始、Acuff-Rose出版社のWesley Roseに認められ、レコード契約のないうちからGrand Ole Opryのステージに立ち、次いでErnest Tubbとツアーに出る。57年にColumbiaと契約、59年にGeorge Jones作の“Life To Go”が初ヒット[第2位]。続いて発表した“Waterloo”はクロスオーヴァー・ヒット[59年No.1/ポップ第4位/R&B11位]となり、人気を決定付けた。その後も70年代初頭にかけてヒットを連発。05年10月の時点で72歳の彼は、普通の会話ではどこにでもいる好々爺という印象だったが、音楽の話となるとやはりホンキートンク・サウンドの求道者としてのプライドが感じられた。彼にとって最後の大ヒットとなった“Me And You And The Dog Named Boo”[71年第7位/Loboのカヴァー]からスタートしたライヴは、予想通りヒット曲のオン・パレード。派手さはなく、残念ながら声にも衰えが見られるが、静かに歌い続けるその姿勢はやはりスターの貫禄。今回のライヴを見られた人は実にラッキーである。
夕日が西空に傾きかけた頃、いよいよヘッドライナー、トリック・ポニー[Trick Pony]の登場だ。Joe Diffieのバンドにいたギタリストのキース・バーンズ[Keith Burns]、Tanya Tuckerのバンドにいたベーシストのアイラ・ディーン[Ira Dean]、そして紅一点のリード・ヴォーカリスト、ハイディ・ニューフィールド[Heidi Newfield] が96年に結成。全員がヴォーカルをとり、曲を書き、楽器を演奏するというそのスタイルは、Highway 101を彷彿とさせる。2000年にWarner Bros.からセルフ・タイトルのアルバム[00年第12位/ポップ第91位]でデビューし、シングルも“Pour Me”[00年第12位/ポップ第71位]、“On A Night Like This”[01年第4位/ポップ第47位]、“Just What I Do”[02年第13位]とヒットを連発。第2作“On A Mission”[02年第13位/ポップ第61位]からは表題曲[02年第19位]、“A Boy Like You”[03年第47位]がヒット。契約問題から発売が遅れた第3作“R.I.D.E.”[05年第4位/ポップ第20位]からは“The Bride”[04年第27位]、“It’s A Heartache”[05年第22位]、“Ain’t Wastin’ Good Whiskey On You”[06年第42位]がヒット。またJohnny Cash, Waylon Jennings, Willie Nelson, George Jones, Kris Kristoffersonといったゲストを各アルバムで招聘、70年代アウトロー・カントリーの影響を感じさせるイキのいいサウンドで注目を集めている。なお3作目の“R.I.D.E.”[Curb原盤]だが、06年2月22日に遅ればせながら日本発売される[コロムビア COCB-53512]。ぜひ『あめりかん☆ぱい』にてご購入の上、お聞きいただきたい。
さて肝心のライヴだが、最新作を中心にヒット曲や未発表曲を絡めて、噂に違わぬ迫力の、若さ溢れるパフォーマンスで観客を魅了。特に美しい容姿に表現力豊かなハスキー・ヴォイスのハイディは、その爽やかな色気も相まって一際光り輝いていた。正にライヴ映えするバンドといえよう。もっと多くの人に見てもらいたいものだ。
青い空に白い雲、澄み切った空気。豊かな緑に包まれた阿蘇の山並。ああ、またここに戻って来たんだなあ、と感動する瞬間。1年経ったというのに、まるで昨日もいたかのような錯覚。年1回顔を合わせる友人、名前は知らずとも毎年お馴染みの人たちの笑顔。そこで繰り広げられる、人間味溢れる温かい音楽。カントリーゴールドほど心が癒され、また豊かになるイヴェントを僕は知らない。それこそが僕を、そして多くの人々を毎年アスペクタへと引き寄せるのである。
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