今までいろいろな事柄についてお話しさせて頂きましたが アトピー性皮膚炎を一言でいえばどのようになるのでしょうか。 [アトピー性皮膚炎とは・・・] 特定の部位である顔面・四肢端・屈曲部・腋下(わきの下)・鼠径部(内もも周辺お腹にかけて)などに生じる激しい痒みが、慢性あるいは慢性再発性に起こる皮膚炎といえるのではないでしょうか。 ただ、ある研究者の言葉を借りれば「すべてにおいて例外は存在する。」常に念頭におかなければならない大切な言葉だと思っています。なぜなら、その[例外]を導きだすために、病院があり獣医師の存在意義があるように思うからです。 |
それでは本編に入らせて頂きます。 典型的なアトピー性皮膚炎についてお話しさせていただきます。 典型的なアトピー性皮膚炎については今までお話しさせて頂いたように、 初期においての発症は季節性に始まるとされていますが、これは春から秋の間に発症する率が80%以上であったという研究者の報告からのことのようです。 ただ私は、生活環境の変化(室内犬における冷暖房などによる)などから数字は変化しているのではないかと思っています。 私の中で多く認めているのはホルモンの動きを生じる時期が多いように思っています。 これは換毛期や生理期(排卵準備出血)などで、他にはダニなどの活動期でおそらくこれが春から秋にかけてといわれている原因ではないかと思っていますが、近年では室内におけるダニの活動期は空調の状態から通年に変わりつつあるといわれています。 いずれにしても最終的には通年(年中)にかけて症状を引き起こすようになってきます。 ホルモンの変化する時期はやはり体調が崩れやすい時期ではないでしょうか。季節の変わり目もそうかもしれません。 そのようなときに悪いものが出てくるもので、人でもよく聞くところだと思います。 ダニの活動期においては、以前お話しさせて頂いたように環境抗原のなかで全体の80%をも占めるとされているのが、コナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニなどのハウスダストマイト(屋内のほこりにまぎれているダニ)といわれているダニ類であるからだと思います。 もちろんダニの環境のなかにはカビやほこり(ハウスダスト)が混在しているわけですから(カビやほこりも環境抗原の一つになりうる)より多い環境抗原となっていることだと思います。 そうであれば、現在の生活現状からいえば室内犬において季節性はあまり意味をなさないようになってきているのではないかとも思っています。 室外犬においてはダニの問題だけではなく花粉やその他を考慮すれば十分に意味を成すものだとは思っています。 |
ではどのようなことで病院にお越しになられた場合にアトピー性皮膚炎と診断されることが多いのでしょう。 親御さんのお言葉のなかでも多い表現を以下に挙げてみることにします。 |
「手や足をひまがあったらペチャペチャ舐めるんです」 「手の先や足の先(爪)をカチカチ噛むんです」 「腋の下あたりを後足でカリカリ掻くんです。散歩中でも立ち止まって掻くんです」 「顔を前足や後足で掻いたりこすりつけたりするんです」 「耳のあたりを前足や後足で頻繁に掻くんです」 「頻繁に頭を振るんです」(外耳炎のお話し参照) などが多いように思われます。 またそれらの結果(臨床的結果)としておこる状態として多く見受けられるのは |
・紅斑 炎症を伴っているため赤く充血している。 湿疹状のものや、広範囲に円形を呈するものや、アメーバ状のもの、中心部や全体がジュクジュクしたもの(感染)などさまざまではあるが、紅斑部は少しなりとも盛り上がった状態を呈することが多いように思われます。 ・苔蘚化(たいせんか) 皮膚が黒っぽくなったりカサカサな手ざわりであったり、見た目に象さんの皮膚のように |
固そうなザラザラとした感じに見えたり(実際に硬くなっている場合も少なくない。角化している。) おそらくコケが生えたかのように見えたのでしょう。苔→塊状のコケ、蘚→糸状のコケ ・・・らしいです。 ・脱毛 その部分の毛が抜け落ち、なくなっていたり薄くなっていたり、 皮膚から少しだけ残った切れた毛でその部分が薄く見えたりしている。 以上のような事が大半を占めるように思われます。 そして僅かながらにおいて、結膜炎や鼻炎を認める場合も存在するようにも思っています。 |
また、アトピーと診断された場合において念頭に置いておかなければならない物の一つに二次感染による皮膚異常があります。 その一つは皮膚ブドウ球菌感染症で、もう一つは皮膚マラセチア感染症といわれている疾患があります。これらはアトピー犬において極めて発現しやすいとされており、言い換えればこれらによる皮膚疾患が発現した場合アトピーを疑うにあたいするといってもよいようにも思われます。 ・皮膚ブドウ球菌感染症 皮膚に常在しているといってよい細菌であるブドウ球菌が毛包炎(毛穴に化膿性炎症を起こす)や、膿皮症(皮膚が化膿し炎症を起こす)を引き起こす。 ・皮膚マラセチア感染症 皮膚に常在している真菌の一種であるマラセチア(マラセチア・バキデルマーティス)が皮膚真菌症を引き起こす。 これらは人にも常在しているとされいるようですが、アトピー性皮膚炎が発現することで皮膚のバリアシステム(皮膚抵抗性)が低下し、何もない健康な皮膚であれば問題にならないはずの菌が感染を起こし発症に至るように思われます。 皮膚病においてブドウ球菌性膿皮症やマラセチア感染でお悩みになられている方はアトピーも視野にいれられてもよいのではないかと思っています。 |
最後に猫とお暮しになられている方に、 猫のアトピーについてですが、教科書的な書物においても見当たりにくいのが現状のように思います。 |
また報告においてもあまりなされていないようにも思います。 犬にくらべ絶対的に猫のアトピーは少ないように思っていますが 決して無いということではなく私自身、猫におけるアトピーを診ていることも 事実だと思っていただいても差しつかえがないと思っています。 つまり猫さんにもアトピー性疾患は存在し、皮膚疾患でお悩みになられている中にも アトピー性皮膚炎が存在しているのではないかと思っています。 |
次回は アトピー性皮膚炎と少しでもうまくお付き合いする方法って? についてお話しさせて頂きたく思っています。 |