今回からは前回お話しさせて頂いたように
一つ一つの疾患について簡単にお話しさせていただきます。
その最初として、アレルギー性皮膚炎についてお話しさせていただきたいと思っています。
その前に皆様方でこれまでのお話をお読みになられていない方は
少しで結構ですので、前回までのお話に目をお通しいただければ幸いに思います。





アレルギー性皮膚炎とは、
過剰な免疫応答により、掻痒をみとめ、なおかつ、脱毛や皮膚異常を伴うという主要兆候を示す疾患で、
皆さんが最も耳にする一つだと思っています。

このアレルギーという言葉は身体を痒がっていることで動物病院に行かれて、
「アレルギーですね！」と言われると、
ほとんどの方はこの一言で、
魔法にでもかかったかのように一瞬で納得される。
そんな言葉のように思います。
おそらく、メディアや書物やお知り合いとの会話などで
インプットされている、それぞれの知識から
感覚的に納得されているように思います。
（そうでなければ申し訳ございません）
「あ、アレルギーか！」
獣医師にとっては説明もしなくていい、すぐに納得していただける、
治らなくても再発してもアレルギーの一言で説明がつく。本当に魔法のような便利な言葉のように思います。
でも、それだけですましていていいのでしょうか？
治らない疾患だからしょうがない。そうお思いになられる方も少なくはないのではないでしょうか。
治りにくい・治らない疾患だからこそ、もっともっときめ細やかなことが必要になってくるのではないでしょうか。
獣医師も言葉の重みを重々理解しなければならないように思っています。
皮膚病で痒がって来院されれば「アレルギー！」、そんな獣医師はいないと思いますが…。





繰り返しの説明になりますが、

アレルギー性皮膚炎とは、外来抗原（前回のコラム038でいう所の、ヤリの一突き）に対して、
過剰な免疫応答によって起こる皮膚疾患（皮膚病）と思っていただいて良いかと思います。
イヌのアレルギー性皮膚炎と診断された中で多く遭遇するものとして、
・アトピー性皮膚炎
・食物アレルギー性皮膚炎（食事性アレルギー）
・ノミアレルギー性皮膚炎
・アレルギー性接触性皮膚炎
この4つがあげられるかと思います。
もちろん、前回お話しさせていただきましたように、物理的な刺激による皮膚炎との違いを理解し、
区別していかなければならないと思っています。
それでは、今からアレルギー性皮膚炎におけるアトピー性皮膚炎について簡単にお話しさせていただきます。

【アトピー性皮膚炎（Canine atopic dermatitis）】
アトピー性皮膚炎と聞いて何を思い浮かべられるでしょうか？
様々なことがあると思います。
私自身、アレルギーとアトピーを完全に区別することは難しいと思っています。
例えば、アレルギーはある種の物質に対してアレルギーを獲得することにより、その後発症するものであり、
アトピーは既に持つある種の物質に対して生まれながらに(遺伝的)に免疫過剰応答がある。
ともいえるでしょうし、アトピーはその発現する場所が、 [目の周り][口の周り][脇の下][首の内側(のど)][内腿の付け根からお腹にかけて] というふうに、頻発発現部位における慢性的、なおかつ再発性を伴う皮膚炎ともいえます。
もっと単純に言えば、アトピーはアレルギーが原因にもなる。
とも言えるかと思っています。
アトピーは食物・季節・環境・温度・日光・様々なアレルゲン・その他多くの原因が入り混じって
おこるもので非常にお悩みになられる疾患の一つだと理解しています。

余談になりますが、
アトピーやアレルギーという言葉はどちらが古いと思いますか？
私はアレルギーと思っていましたがさにあらず、アトピーの方が古くからある言葉だそうです。
アトピーは「奇妙奇天烈」という意味らしく、古代ギリシャやローマから存在し、
アレルギーは「免疫応答異常」ということで1900年初期に小児科医の先生がアトピーのなかにおいて、
アレルゲンを特定することができ名付けられたようです。
ということは、
アレルギーのなかにアトピーが存在するともいえるような気がします。
そうであるとすると、アレルギーがアトピーを発現させている場合があるとも言えるでしょう。
私自身は、犬におけるアトピー性皮膚炎は、
・慢性再発性であること。
・発現部位が特定頻発部位であること。
・単一要因である場合は少ないこと。
・アレルゲンの獲得がある前に発症すること。
・アレルゲンの特定検査における除去治療に反応しないか、反応が極めて低いこと。
 もちろんアレルギー検査やアトピー検査における数値も見ますが、
費用がかかることや、その他のことより、院外検査を実施しなかった場合においてはこれらの中で当てはまるものがあることで、
アトピー性皮膚炎の可能性を示唆するようにさせて頂いています。



アトピー性皮膚炎の原因として、
「環境抗原に対するアレルギー反応である」と明言されておられる先生もいらっしゃいます。
これは、ハウスダストに多く含まれるコナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニにおいて、その指標となる値が（�儀寝疉匸匹任�IgEの上昇）80％以上にもなったことからそのような結果になったものと思われます。
ですが私は、お話しさせて頂いたように、様々な原因が複雑に絡み合った場合も少なくないように思っています。
もちろん、環境抗原も大きく関与しているのも事実だと思っています。



では、別な見方を少し紹介しておきます。別な見方といっても意味合いは同じで、
考え方や言葉の違いが少しあるものだと思っていただいても差し支えないものと思います。
アトピー性皮膚炎は犬における掻痒性皮膚炎でよく見受けられる疾患であり、
アレルゲン特異性であるIgE抗体（�儀寝疉匸鼻砲糧�生と深い関係があるといわれています。
これは、アレルゲン特異的IgE抗体を形成しやすい体質、すなわち、遺伝的要因と定義されています。
このことは、犬のアトピー性皮膚炎の病理発生として、多くは�儀寝疉卮娠�が関与している。
ということが支持を集めているともいえるのではないでしょうか。

研究をされている先生方によって異なりますが、
15%前後の発症率が犬には存在するとさえ言われています。
また、ほとんどの犬が生後６ヶ月齢〜７歳の間に兆候が発現し、
３歳までには70％以上に症状が現れるといわれています。
症状は季節にかかわらず（非季節性）いつでも通年において発症するといわれていますが、
多くの犬において始めのうちは季節性に始まり非季節性に進行していくと言われています。
これは、当初は夏場の暑い時期や、季節の変わり目、換毛期や排卵期（ホルモン関与）などの時期に症状が出ていたものが、それらの因子に関係なく発症するようになってくるというものです。

では次回からは
アトピー性皮膚炎における診断などについて簡単にお話しさせて頂きたく思っています。




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