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今回は前回に引き続き、
外耳炎における後天的要因(素因)をお話しさせて頂きます。

言い換えればその疾患において外耳炎になりうる素因が存在するということになるかと思います。
では、その素因となる条件(疾患)にはどのようなものがあるのか。
最も外耳炎を引き起こす素因をもっている疾患としては、免疫介在性疾患があげられるかと思います。
では、そのなかにどのようなものがあるのかと言うと、
大きく分けて[過敏性疾患]と[免疫介在性疾患]があるように思います。

【アトピー】
アトピーの場合、外耳以外の皮膚炎を伴う場合や、それらの兆候を伴わない場合が存在する様です。
一般的には前者を[アトピー性皮膚炎]、後者を[アトピー性耳炎]と言います。
しかし、私は以前お話しさせて頂いた様に耳道は皮膚の一部であることより、今後の病状の進行やその子の体質を考える意味においてはいささか疑問があるようにも思っていますが・・・
外耳道単独で発症した場合とそうでない場合においての使い分けなのでしょう。
いずれにせよ、外耳炎になりやすい(外耳炎にしやすい)疾患として、アトピーが最初にあげられると思います。
アメリカの獣医師であるスコット先生の調べ(Scott, DW, 1981. Observations on canine atopy)によると、
アトピーの犬の50％以上は耳炎を併発し、(アトピーによる炎症が外耳以外の皮膚にも及んでいる：アトピー性皮膚炎)
症例の3％は唯一のアトピーの兆候である(アトピーによる炎症が外耳にのみ見られる：アトピー性耳炎)
と位置付けされています。
アトピーに起因する耳炎の多くの初期発症部位は、目で見える範囲(耳介やその付近の外耳道)に多く、
皮脂線やアポクリン腺の増殖ををもたらすことで、耳道が狭くなりその狭くなることが分泌物の増加や換気の悪化現象を引き起こす。このことは細菌や酵母の増殖にもってこいの環境を与えてしまうことになり、耳道の奥深くに炎症が波及することとなるように思われます。
いわゆる、二次的進行を食い止めることが、初期に必要なことではないでしょうか。
また、アトピーによる耳の病巣は一般的には両側性の場合が多く見受けられますが、どちらか一方の場合も見受けられます。
(片側性というよりは片一方が目立ってひどいといった方が良いのかもしれませんが)これらの多くは二次感染菌が悪化した方に多く存在したものと考えられています。

※日本皮膚科学会ガイドラインでは、アトピー性皮膚炎は表皮、なかでも角層の異常に起因する皮膚の乾燥とバリアー機能異常という皮膚の生理学的異常を伴い、多彩な非特異的刺激反応および特異的アレルギー反応が関与して生じる、慢性に経過する炎症と掻痒(そうよう：かゆいところをかく事)をその病態とする湿疹・皮膚炎群の一疾患である。患者の多くはアトピー素因を持つとされています。
これらは遺伝的素因をもつといわれており、またアトピーの語源は「不特定な場所」という意味をもつギリシャ語からだそうです。


人でも言われている中の一つでもあると思いますが、皮膚の表面から埃や汚れを常に取り除く努力をする。外から帰ってきたらシャワーを浴び、刺激の少ない石鹸で身体(皮膚)をきれいにする。といった事が予防になると思いますが、犬や猫は地べたに近いところで生活をしている為、四六時中埃に触れ、細菌や酵母に接触する機会があるので、一日何十回もシャワーを浴びないといけなくなります。これは犬や猫ではなかなか出来ない事だと思いますし、あまりよくない場面もあるようにも思われます。
そこで、前回お話しさせて頂いた身体を拭いてあげる、耳を拭いてあげる。これが役に立つように思っています。また、耳に違和感を感じた場合は通院し、お薬を処方してもらう事や、耳における局所治療をされることが進行を防ぎ、また、全身への影響を未然に防ぐ一つの方法かとも思っています。

【アレルギー(食物アレルギー)】
ある特定の食物に対し不耐性になったためにおこる耳炎といわれています。
こちらは人と同様に特定の食物に含まれるアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)を口にする事により急性の症状をおこし、速やかに、かつ進行性経過を引き起こす傾向があるとされています。
このことにより続発した耳炎は細菌感染(二次感染)を伴うにせよ、伴わないにせよ、獣医師の治療が不可欠なものであるとご理解頂いても良いと思います。


これは、アレルゲン(不耐性食物)の特定が最も重要になろうかと思います。特定された場合はその食品を与えない事は言うまでもないことでしょう。ではどの様に特定すれば良いのでしょうか。もちろん、獣医師にゆだね血液検査において、アレルゲンを検出してもらうのも大切な一つの方法かと思います。（獣医師が食物アレルギーにおける耳炎を導いた上で）ただ、この方法は経済面で大きな負担となる恐れがあります。食物アレルゲンは数限りなくあり、すべてを検査対象にするのは大変かもしれません。そこで一つの方法としては、人の場合で聞かれた事があると思いますが、食生活日誌をつけることではないでしょうか。
口にしたものすべてをいつ何時どれくらい食べたかを記載するのです。主食からおやつ、拾い食い・・・など口にしたものすべてを記載し、その際のその子の周辺環境、いつシャンプーしたか、部屋の模様替え、エアコンの始動、食器の変更などなど、細かく、できればフードやおやつの内容を記載した袋や容器を取っておいて、身体や耳の変化「赤くなった」「熱っぽくなった」「振るようになった」などの身体の変化もわかる様に記載し、獣医師にご相談されるのも重要な一つの方法かと思っています。お金には代え難い、親御さんの努力を獣医師は決して無駄にはしないはずだと思います。もう一つの方法としては、制限食法であり、病院処方食以外を一切与えることなく生活をし、症状その他を観察していく方法もあります。そして、その食事で問題がない場合、一種類ずつ一定期間他の食物と混ぜ、食べさせることにより不耐性食物を導き出す。この方法も時間と根気が必要と思いますが良い方法の一つかと思っています。

【接触アレルギー性外耳炎】
この耳炎は親御さんが、というより獣医師が細心の注意を払わなければならない医原性(医療行為により)に誘発されるものが多く存在するとされています。
お耳の治療に使用したお薬によりアレルギー性耳炎をおこすことがあり、獣医師はその存在を理解認識し、塗布薬による治療後悪化傾向にある場合は、常にこれらを疑ってみる事が必要であると思っています。

【天疱瘡】
この疾患は自己免疫性皮膚疾患の一つで、
皮膚の中にある成分に対して自己抗体を産生することによって引き起こされるもので、簡単にいえば自分の皮膚に対し自分自身で攻撃(自分の皮膚を悪者だと思いこみ)してしまい、様々な病変を形成してしまうというものです。

【狼瘡】
この疾患も天疱瘡同様だと思って頂いても良いと思います。
いわゆる自己免疫性皮膚疾患は、[天疱瘡群]と[狼瘡群]の２つのグループに分類されており、病状や病巣、組織検査、血液中の抗核抗体、ＳＬＥ細胞の存在などで分類されているようです。

これらの自己免疫性疾患には他に、Ⅰ型過敏症からⅤ型過敏症までさまざま存在し、
上記の疾患はⅡ型過敏症に属しているようです。
例えばⅢ型過敏反応が関与した疾患で耳にも病変がおこる[エリテマトーデス]などがあります。
これら自己免疫性疾患は予防医療も含めその診断を獣医師に的確に行って頂き、
医療的配慮(治療)を生涯において行いながらのものとなるようにも思います。
そのため一人一人にそれぞれの方法が存在するものと思っています。
獣医師とよく相談し二人三脚でそれらを導き出すことが必要になってくるものと思います。
(食生活日誌が大きな意味を持ってくると確信しています。)

また、今回お話しさせて頂いた疾患については、
今後、皮膚病として詳しくお話しさせて頂かなければならないものだと思っています。

今回の素因では、
過敏性疾患と免疫介在性疾患についてかんたんにお話しさせて頂きました。
確定検査等によりこれらの疾患であると診断された親御さんの苦労と努力は並大抵なものではないことと思っています。
もちろん、どの様な疾患であってもそうだと思っています。
頑張って下さい。いや、頑張りましょう。
主治医さんと共に。

次回は耳炎におけるその他の素因をお話しさせていただきたいと思っています。

今年も押し迫ってまいりました。
お忙しい時期とは思いますが、皆様方そしてお子様方におかれましてはお身体にはくれぐれもご留意ください。
良き年末年始を御迎えになられることを心から祈念いたします。

一年間お付き合い下さりありがとうございました。

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