前回に続き、(2)耳以外には気にしていなかったが、他の症状がある。
を、お話しさせて頂きます。
この場合、
全身症状として、熱っぽかったり、元気が無くなってくる。
このようなことがあれば大変なことです。

何度もお話しさせて頂いていますが、
これらの場合においては耳が悪いと言ってお越しになられない親御さんの場合が多く、これは仕方のないことであり、ある意味当然のことだと思いますし、この様な事が起こるのは、犬や猫が色々な状態や症状を自分で告げることが出来ない為に起こる当然であたりまえのことだと思っています。
だからこそ、細部まで診てあげ、あらゆる疾患を疑うことから始め、疑いのない疾患を取り除いていきながら
真実の疾患を導き出す手腕をもってあげる必要があるようにに思っています。
ただ、私も口ではいくらでも良いことは言えます。
このことを実行するのは並大抵なことではありません。
最も簡単なように見えて最も難しいことだと痛感しています。
そして私自身、肝に銘じなければいけないことだと深く反省しています。

これらのような症状(熱っぽい、元気がない)があった場合においては
●中耳炎
●内耳炎 (迷路炎)
をまず疑っても良いかもしれません。
そのなかでも、
・悪心(吐かなくても吐きそうで辛そうな状態)や吐き気・嘔吐がある。
・眼球振動(眼球が振え一点を見つめられない)がある。
・異常な姿勢や異常な行動(くるくる回ったり、倒れたり)をする。
などがあった場合には内耳炎(迷路炎)を疑わなければならないように思います。
これら他の状態や症状を見落としてしまい、
あるいは念頭におかず解熱剤などで対症療法を選択した場合、一時的に良くなったように見えるか、
全く改善されない場合もあるように思います。

まだ、改善されない場合であれば試行錯誤するでしょうが、
一時的に改善されたように見える場合においては病気の進行を余儀なくされ、
最も良くない(重篤)状態に陥る場合があるかもしれません。
原因不明の・・・・・
なんてことがあるやもしれないということではないでしょうか。
対症療法の落とし穴の一つかもしれません。

また、
上述のような症状がなく元気な場合であっても耳以外で、身体の一部や全体にフケがでたり、身体の一部や全体を痒がったり、
身体の部分的な脱毛(毛が抜ける)があったり、身体全体の毛が薄くなってきたり、など
耳とは関係なさそうな状態がある場合においても、下記のような疾患を念頭に置かなければならないと思っています。
●亜鉛欠乏性皮膚炎
●天疱瘡:落葉状天疱瘡・紅班性天疱瘡
●狼瘡:全身性紅班性狼瘡・円板状紅班性狼瘡
●老年性蜂巣炎
●皮膚筋炎
●表皮水疱症
●皮膚糸状菌症
●カンジタ症
●血管炎
●薬疹
●寒冷凝集素性疾患
●パターン性脱毛症
●その他
これらのように、自己免疫疾患群や全身感染症
あるいは皮膚腫瘍などを含む場合もあり、
犬であるのか猫であるのか、
そしてその子の年齢などを考慮しなければならない場合もあることを
念頭に置かなければならないように思っています。
もちろん忘れてはならないのが、
その子たちの種類(品種特異性)。これらの違いにより考えてあげる。
このことが診断を行うにあたっては大きく左右する場合があることを
理解しておかなければならないのはいうまでもないことだと思っています。



耳の病気は外耳炎を代表とし、すべての併発症となりうる可能性がある。
と思って頂いても差し支えがないと思っています。

先天的な素因であるところの耳道や耳介における解剖学的な構造、後天的な素因である内分泌の異常(低下など)
さまざまな要因を含んでおり、耳から見えてくるものの中には
その子の生涯においておこりうる大切なことが含まれているやもしれないと思っています。
そして、それらを抑えてあげる。なにもなかったようにしてあげる。
このことこそが予防医療にほかならないと思っています。
耳ぐらい!
そう思わない方が良い場面に出会うことが少なくありません。
耳の病気ぐらいとあなっどてはいけないと思っています。
たかが外耳炎!
すぐに良くなることも多いと思います。
が、そこから導かなければならないこと、あるいは導き出されたこと。
これこそが大切なことではないでしょうか。
例えば
「このごろ変な動きをするんです。」
「何か目の玉だけが振えているみたいなんです。」
「吐き気があって気持ち悪そうなんです。」
など、
脳の神経が・・・、胃が・・・、
だけではないこともしばしばあるのではないでしょうか。

このように
「お耳の病気」をお話しさせて頂いているのですが、逆転して考えることが大切ではないかと思っています。
それは、症状から耳の病気を導き出すことができるようになることこそが大切なことではないかと思っています。
みなさんも、この病気はこうなるんだ。だけではなく、
こういう時はこんな病気があるんだ!と思い考えてあげる。
その考え方こそが見(診)誤った治療を防ぐ一歩になるのではないかと思っています。


一つの症状にはたくさんの病気が存在します。常に逆転の発想が必要なようにも思っています。
もちろん、主治医さんにはそれを求めると良いように思います。
獣医師はさまざまな病気と症状を、もちろん治療方法や検査方法も含め、
どれだけ知っているかで色々変ってくる様にも思います。
「先生、このごろ耳を振ってかくんです」
「先生、耳がわるいんです」
身体全体を
視診せず、
触診せず、
聴診せず、
眼診(眼底を含め)せず、
体温も気にせず、
問診もせず・・・・・
すぐに耳の治療ですか?

傷の深さを気にせず、
どこまで傷が達しているのか
傷の奥は膿んでいないのか
なにも異物がないのか
傷がほかに影響を及ぼさない
あるいは影響を及ぼしていないのか・・・・・
なにも診てもらわないで
縫ってもらいますか?
薬を塗ってカットバンをはってもらいますか?
大きな傷でも!
たとえどんな小さな傷であっても!!


次回は
お耳の病気で最も多くの方が病院におかかりになられている
外耳炎をとりあげ
「お耳の病気」の最終話とさせていただきます。