今回が涙やけにおける最終話になると思います。
その前に、少し話が逸れるかと思いますが、前回お話しさせて頂いた、
涙やけにおけるお薬が、他の疾患に良い影響があるんだ。
という事に少し触れておきます。



皆さんがお悩みになられている疾患の一つとして
アレルギーや耳導炎(外耳炎)があげられると思います。
アレルギーにおいては様々ありますが、皮膚炎が目に見えて存在する為、アレルギー性皮膚炎としてお悩みの場合が多いのではないかと思っています。
また、外耳炎においても、アレルギー(自己免疫)が関与している事も少なくないように思われます。
個々の疾患につきましては機会があればお話しさせて頂くこととし、
いずれにせよこれらの疾患は、皮膚や粘膜における、細菌感染・酵母感染・糸状菌感染などがそれらの症状の悪化に大きくかかわっていることは間違いがない様に思います。
言いかえれば、皮膚や粘膜の汚れがアレルギーなど他の疾患を誘発・悪化させる一つの原因である事は疑いのないことではないでしょうか。
もちろんこれらの要因は、悪臭ともいえる臭いをだす原因の一つにもなっているように思います。
 それらの細菌や酵母などの多くは、分泌物に含まれる蛋白を好む習性をもっているものと思われ、
これらの蛋白を効率的に少なくする事で、少しでもそれらの疾患が悪化することを防ぎ、少しでも誘発する一つの原因を取り除くことが出来るように思っています。
それは、一つでもそれらの疾患における薬を減らすことができ、一日でも長く良い状態が維持できることではないかと思います。
これらをふまえ、涙やけの軽減に使用させて頂いているお薬は その子の体質や持っている疾患にとって、よりよいものでなければならないと思っています。

私自身、涙やけに限らずその薬を使用する事で、長期にわたりそれらの疾患でお悩みになられていたお子さんが、それらから解放され、親御さんのお気持ちが和らげられた事にしばしば遭遇している事も事実であることを書き加えておきます。
また、臭い(動物臭)も軽減されたとのお話もあるようです。

とはいっても涙やけではない他の疾患においては、そのような良い結果がすべてのお子さんで現れるものではないことも頭におかなくてはなりません。
それらの原因以外におけるさまざまな要因が存在し、その子その子におけるその子その子にあった治療方法やお薬が存在することを忘れてはならないと思っています。

涙やけにおいては、このお薬は
染まってしまったものを脱色するのではなく、涙の量を少なくするものでもないということ。
お薬を飲ます以前の染まってしまったものは毛を切ってあげなければいけないということ。
毎日一回投与しなければいけないということ。
薬をやめればまた元にもどってしまうことがほとんどだということ。

などが欠点としてあげられるように思います。



薬は投与する必要がなければ飲まさない方が良い。
薬に代わるケアをすることで必要が無くなる場合は労を惜しまずにそれらをしてあげること。
この苦労が何らかの理由で功を奏さない場合においてお薬が存在する様に思います。
使用する場合においても、一つの効果のみ考えるのではなく、
良い事・悪い事そして全体に対して良い意味においても悪い意味においてもどのような影響を及ぼすのか、それらを考え理解し考慮した上で投薬におよぶ必要があるのではないかと思っています。
もちろん親御さんもこれらを理解された上で投与におよんで頂きたいと思っています。

今までお話しさせて頂いたことから、解剖学的に異常を認める場合においては、
涙の排泄路の正常な解剖学的関係を作りだすのが理想であるのは間違いのないこと。
しかし極めて困難であり難しい目標であるのも事実。
結膜鼻管吻合術または結膜口腔吻合術を行うことにより、鼻または口へ新しい涙排泄路ができます。
内眼角靭帯を切断する事で多少なりとも眼瞼構造を改善することもできるかと思います。 しかし、これらの外科的方法に代わって、涙による染色を軽減する療法としてお話しさせていただいた薬の長期投与があるように思います。
この薬は涙量を減少させることが無く染色性蛋白とよく結合するようです。
また、瞬膜腺切除により涙分泌を減少させる方法は、乾性角結膜炎になりやすい動物ではその可能性があるため好ましい処置とはいえないように思っています。

最後になりますが
一般市販され、涙やけに使用されている物も、局所におけるケアとしては有効である場合があることも理解しておかなければならない事だと思っています。
これらを考慮し、外科的・内科的なことを含め総合的に判断する必要があるのではないでしょうか。

以上をもって涙やけ最終話とさせていただきます。
ありがとうございました。