前回のコラムでお話しさせて頂いた、「治療と薬と副作用」。
今回は、その事をお考え頂くにおいて、少しでもお役に立てればと思い、
悩まれた親御さんの現状と、歩んでこられた路を少しお話しさせて頂きたいと思います。


可愛い家族が一人増える!
そんな喜びの中、どの様に思ったでしょう・・・?
出来る事はすべてやってあげたい!
健康診断、予防注射、なんでも、獣医さんが良いと言う事はやってあげるんだ!
---そう思ってあげられたことでしょう。
そして、半年・1年・5年・・・と、月日が経つにつれそんな思いがだんだんに薄れ、
そして身体に異常が現れ出した時、
あるいは、獣医さんが目に見えない異常(変化)に気がついた[あの時]・・・



まだまだ食欲もあるし、元気もある。
今調子が悪いのも、ちょっとした事でその時だけの事だろう。
獣医さんが色々と言っていても様子を見よう・・・
検査をするにしても、生涯、薬を飲ますにしても費用もかかるし、高齢になれば誰だって 仕方が無い。歳で起こる事は様子を見るし、その時は病気であっても様子を見よう。
今はこんなに元気じゃないか!
悪くなった時の事はその状態を理解するし、今は、今が良くなれば様子を見る・・・



食事を食べれる様にしてあげたい。
吐かなくしてあげたい。
苦しさをとってあげたい。
少しでも元気になってほしい。
もっともっと一緒にいてほしい。
症状が出てくればその症状を少しでも改善してあげたい---。

親御さんの本当のお気持ちでしょう。
私は親御さんの本当のお気持ちは、
「出会い」と「別れ」のお気持ちに現れるのではないかと思っています。



[あの時]、元気に走り回り、ご飯も良く食べる。
そんな時期に、獣医さんから将来に起こりうるであろう事を聞かされ、
検査や生涯投薬など、それらに掛かる費用の事を言われても
本当にそれが起こりうる事で、本当にその予防療法が元気に長生きしてくれるかどうか、
分からない事だと思われればそうかもしれません。
私も獣医でなければそう思っていたに違いないと思っています。

ただ、吐き気、下痢、食欲廃絶、元気消失、歩行難・・・・
などお話しさせて頂いても、その様な状態になっても「理解しているから」様子を見る。
そうおっしゃっていても、やはり本当のお気持ちが[今の思い]に出てこられます。

でも、
食事だけでも食べてほしい。食欲が出てほしい。吐くのだけでも・・・。下痢だけでも・・・。
そういった状態の場合でも、身体自体が良くなって頂かなければ一つ一つの症状はおさまらない事を理解して下さい。
特に進行してきた時間が長ければ長いほど、良くなる度合いが少ない事も。

私は病気は必ず起きるものだと思っています。そして、残念なことに必ず旅立つ日が来る事も事実です
歳を重ねる事における病もあるでしょう。
歳をとった為にかかってしまった病もあるでしょう。
少しでもその様な病になった時、
自分自身の身体でその病に勝てる様、そして、治療の効果が最大限に出せるような身体をより長く保ってあげたい。
その様な予防医療も必要ではないかと思っています。

薬の力ではなく、あくまでも薬の力を十二分に発揮できる身体があっての治療ではないでしょうか。


[最初の思い]
思い出してあげて下さい。
[あの時の考え]
もしその様な時期が来れば、最初の思いを思い出し、
来るであろう、[今の思い]を想像して下さい。
本当のお答がそこにあるように思います。


その子その子の将来を分かってくれて、起こりうる状態を分かってくれる。
そして最も大切なこと、
その予防対策をしっかり理解し把握してくれている獣医さん。
その様な獣医さんが必要ではないでしょうか。
もちろん高度医療においてその場その場を診て頂ける獣医さんあっての事でしょうが。

私は、病気にせよ、怪我にせよ、何にせよ、
病は点では無く、線の上にある一部だと思っています。
生まれそして旅立つまでの生涯の道のり、この道のりこそが線であり、
線の上でその時々に起こる障害の一つが病ではないかと思っています。

点(病)と点(病)はバラバラではなく、点を結んだものが線(生涯の道のり)であり、
その線を分かってあげる事こそが予防医療の目指す処かもしれないと思っています。