お茶の時間にお話させて頂いた様に、
猫はお水の少ない状態でも生活が出来る様に、
身体の仕組みが備わっているのがお分かり頂けたと思います。
そこで皆さんにお伺い致しますが、
多くの水分が身体から無くなる状態の一つとして、どの様な事が考えられるでしょうか?
「熱性疾患」「下痢」「嘔吐」・・・・その通りです。
そして自然な状態においては「」もその一つではないでしょうか。
我々人間に比べて運動量がはるかに多い猫では、相当量の汗が出ても不思議ではない様に思います。
しかも暑い所ではより以上でしょう。

もし、その汗が出てしまっては、大変な事になるのは必然的です。
水分をいつでもとれる環境においては必要な事であっても、
それが出来ない環境では生死に係わる問題に発展する場合もあるかと思います。
その為、上手く出来ているのが、汗をかかないような仕組みを持つようになったという事でしょう。
(汗をかかないということは、水分の保持だけではなく、毎日お風呂に入り、石けんで体を洗う事の無い子たちにとって、体表の汚れを少なくすることや、それに伴う感染などの軽減にも役立っているようです。汗でべちょべちょしてると我々でも気持ち良くないものです。)
その仕組みの一つが
猫において、「汗をかいている!」と言うのは
一般的に足の裏を表す表現で、身体(体幹)は汗をかかない様になっています。
ただ、「汗腺がありません。」と言うのは間違っているのです。

ここで、前にお話しさせて頂いた様に、
生命は昔々のそのまた昔はみんな同じ。と言う事でしょう。
生活環境により、都合のよい様に、生活しやすい様に、生きていく為に、進化してきたと言う事です。
進化する場合は、必ずと言ってよいほど痕跡が残ります。(前回コラムの尿道の様に)
その痕跡で、汗腺はあるのです。
ただ、汗腺から汗が分泌しない非分泌汗腺へと変化したようです。
「汗腺はあるよ、ただ分泌汗腺が無く、非分泌汗腺が大半を占めているんですよ。」が本当の表現かもしれません。
そこで、皮膚の下にある非分泌汗腺が、高温により異常を起こさない様に
皮膚そのものが厚く強度を増した理由の一つとも言えるようです。
(当然、傷に強い、地面や熱い場所に直接触れる事に耐えれる様、少々の傷では貫通しない様、
[ヨロイの代わり]などもあるでしょうが。)
皆さんならもうお分かりでしょう、[三味線]の革は、その様な事から使われたようです。身近に居て強度があって大きさもちょうど良い。と言うあたりでしょう。昔の事でしょうが。

ただ、今度はそれがまた不都合になることもあります。
猫は犬に比べ単独行動をする場合が多く、これも昔々の習性でしょう。
犬は群れで暮らしていたようですが、猫はそうではなかったようです。
その為、猫は単独で食糧の捕獲をする必要性があり、より俊敏性が求められたのでしょう。それだけに、テリトリー争いや食糧争奪戦など、猫同志のケンカも多いのではないでしょうか。
また、犬はリードを付けてのお散歩、猫は気ままに自由なお散歩、の違いから、犬に比べて猫のケンカの方が飛躍的に多い様に思われます。

それにもう一つ。猫の爪は極めて鋭くなっています。(いざという時に隠しているほどです。でないと危険物所持?)
そこで怖いのが、そして多いのが、[ケンカ傷]です。
皆さんもご経験がおありだとは思いますが、猫に引っかかれた傷は深く治りにくかったでしょう。
それに、[猫ひっかき病]と言う疾患がある様に、猫の爪には怖い病原性のある菌をも保有している場合があります。
(これは余り大げさにはとらえないでください。私自身、何百何千と引っかかれても何も無いですから。ただちゃんと治療して下さい。お医者さんで。)

そこで思い出して下さい。猫の皮膚。丈夫で厚い皮膚である事を。
猫のケンカ傷はひっかき傷でも咬み傷でも鋭く、皮膚を貫通する事がしばしば見受けられます。
ところが、鋭ければ鋭いほど猫の皮膚は短時間でゴムの様にもどり、そして治った様に見えてしまいます。
これも必要な防御機能の一つである事も事実です。早く皮膚を修復する事で、外部からの様々な(菌など)侵入を防がなければならないからです。

ただ、歯や爪から汚いものが入らなければそれでも良いのでしょうが、そうはいかない事の方が多いのです。
皮膚自体はひっつき、いったん治ったかの様に思われます。しかし、それが最も猫の皮膚でやっかいな所なのです。
何故なら、病原菌の中には閉ざされた皮膚の下が格好の増殖場所になる種類の菌がたくさんいるからです。

その為、数日以上経ってから食欲や、元気が無くなったり、皮膚が盛り上がりブヨブヨしてきたり、皮膚が黒くカチカチになってきたり、ドロッとした物がべっとり付いていたり、色々な兆候が出だします。
その時には、もはやかなりの時間が経ってしまっているという事になります。
この様な状態で病院におこしになられた親御さんにお伺いすると、ほとんどすべての方が
だいぶ前にケンカか何かで怪我をして来た事があったが、それは治りました。
とおっしゃいます。
お分かり頂けるでしょう。
親御さんは表面(皮膚)が治っていたように見えたのでしょう。
或いは消毒をされ、よりその様に思われたことでしょう。無理もない事だと思います。
お話しさせて頂いた様に、なぜ?どうして?をお分かり頂く事で、
「どうしてそんなに日数が経ってから?」
「どうしてそんなに前の傷が?」
をご理解していただけると思います。

納得して、分かって、様子を見てあげて下さい。
納得できないまま様子をみるよりきっと早く良くなってくれるでしょうし、もっともっと前に対処できる事でしょう。
また、お家で様子を見られる時でも見る目が違ってくる事でしょう。
傷を見つけてから数日以上気を付けてあげなければならない事も。

傷を見つけたら、
ちょっと可哀想ですが・・・・
消毒は、グリグリと奥まで、もし皮膚の奥まで入るようならもっと気を付けて。
傷によってはお医者さんで消毒やお薬を。
これらの必要性も分かって頂けるでしょう。

猫の傷。
皮膚がくっ付くその前に、奥の奥までグリグリと。
外から帰ってくれば、必ず身体のチェックを!
濡れていないか?(ケンカ相手の唾液など)
汚れた部分が無いか?その下の皮膚に傷は無いか?毛が抜けていないか?

タオルかティッシュなど白いもので身体をなぞってあげるのも一つでしょう。
その場合は毛並みに逆らってなぞるのもよいかもしれません。

ひどくなる前に、[お家の獣医さん]に見つける事が必ず出来るはずです。

見つけてあげましょう!
痛みや症状が出る前に。
見つけてあげましょう!
ひどくなる前の小さなときに。