Rakuten EXPO 2018

楽天市場出店者やECに関連する多様なビジネスパーソンが一堂に会し、最先端の情報を交換しながら、明日につながる学びを得る「楽天EXPO 2018」。「モテクリエイター」という新しい肩書きでタレント、モデル、SNSアドバイザー、インフルエンサー、YouTuberとして幅広く活躍している「ゆうこす」こと菅本裕子(すがもと・ゆうこ)氏と、バリ島を拠点に世界中を飛び回る・尾原和啓(おばら・かずひろ)氏という注目のお二人のセッションのテーマは「モテ」。ファンに喜んでもらうためには、単に情報を届けるだけでなく、そこに「自分の想いを乗せる」ことが欠かせないという菅本氏。尾原氏による的確な整理もあって、モテクリエイターがモテる理由が徐々に明らかになっていきました。

菅本 裕子 氏
1994年、福岡県生まれ。2012年にアイドルグループ「HKT48」を脱退後、タレント活動に挫折しニート生活を送るも、2016年に自己プロデュースを開始、「モテクリエイター」という新しい肩書きを作り自ら起業。現在はタレント、モデル、SNSアドバイザー、インフルエンサー、YouTuberとして活躍中。10〜20代女性を中心に自身のInstagramやYouTubeチャンネルで紹介するコスメ等が完売するなどその影響力は絶大であり、またライブ配信中に商品を販売する"ライブコマース"におけるパイオニア的存在。
Instagram、Twitter、LINE@、YouTubeなどのSNSのフォロワー100万人以上。近著に『SNSで夢を叶える〜ニートだった私の人生を変えた発信力の育て方〜』。

菅本裕子公式ブログ https://lineblog.me/yukos0520/
Twitter/@yukos_kawaii https://twitter.com/yukos_kawaii
Instagram/@yukos0520 https://www.instagram.com/yukos0520/
YouTube/ https://www.youtube.com/channel/UCxS4vbIvtjHQcEW61J2KQIw

著書はこちら(楽天ブックス)


尾原 和啓 氏
京都大学大学院で人口知能論を研究。マッキンゼー、Google、iモード、楽天執行役員、2回のリクルートなど事業立上げ、投資を歴任。現在12職目、バリ島をベースに人事業を紡いでいる。ボランティアでTED日本オーディション、Burning Man Japanに従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。
著書「ザ・プラットフォーム」(NHK出版新書)はKindle、有名書店一位のベストセラー。前著「ITビジネスの原理」(NHK出版)もKindle年間ランキングビジネス書7位のロングセラー。韓国語、中国語版にも翻訳されている。

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「ナラティヴ」であることが行動の連鎖を生み出す

尾原:いま仕掛けていることや、次にやろうとしていることって、何かありますか?

ゆうこす:「TaVision(タビジョン)*1」というサービスでオリジナルブランドを仕掛けているので、制作過程までも生配信するなど、そこに力を入れていますね。あとはツアーを組んだりもしています。

とはいえ、私自身は旅が苦手だったんですよね。ガイドブックを見て、その場所に行っても、「なんだ、写真の撮り方が良かっただけじゃん...」とガッカリすることもありましたし、そもそも飛行機の中で記入する「出入国カード」の書き方がわからなかったくらいで。でも、海外旅行には興味があるけど、私みたいに不安を抱えている人って、絶対にいるだろうなと思ったんですね。なので、その過程をすべて生配信することで、不安感を少しでも解消することができると思ったんです。苦手だったり、不安感があるからこそ、気がつくこともあるはずなんですよね。

尾原:苦手というのも共感を生むひとつの要素ですよね。「あれだけ不安がってるゆうこすができるなら、私にもできるかも!」と思えるということですね。

ゆうこす:「TaVision(タビジョン)」というのは、旅好きのための旅情報サイトではなく、「旅が苦手な人のための旅情報サイト」なんですね。

尾原:そうやって、ゆうこすさんの旅を見て実際に旅に行った女の子は、「ゆうこすのおかげで私旅(わたしたび)ができた!」という風に、きっと素晴らしい物語を発信してくれますよね。そういう情報伝播の仕方を「ナラティヴ」というんですね。

ゆうこす:「ナラティヴ」?

尾原:数年前は楽天でも「ストーリーテリングが大切」と言っていましたが、いまは「ナラティブが大切」と言われています。「ストーリーテリング」が「決まった形の物語を、ある特定の人が語る」のに対し、「ナラティヴ」は「聞き手が次の語り手になり、より自由な形で物語が伝わる」ことを指します。「昔話」というのは、親から子へ、子から孫へと、語り手たちが変化しながらも、それぞれが主体的に世代を超えて物語を伝えていきますよね。これが「ナラティヴ」ということです。

先ほどの「TaVision(タビジョン)」の話も、ゆうこすの旅を話を見聞きした人が、次に自分が旅をし、その話を見聞きした人がまた旅に行きたくなる、という連鎖を生むんじゃないかと思います。「旅が苦手な人のための旅情報サイト」というかたちで、ターゲットを絞っているのも重要なポイントですよね。

楽天大学で教えているインターネットマーケティングと、書籍などで教えているインターネットマーケティングの最大の違いが何かというと、普通は「AIDMA(アイドマ)*2」や「AISAS(アイサス)*3」のように「Attention;注目・認知」から入るんですが、楽天の場合は入口が「警戒」なんです。人は何か新しいことをやるときは怖いし、警戒するから、その警戒をいかに解くか、というところから入っているんですね。

Amazonなどに慣れすぎて、インターネットが自動販売機化したことで、「新しいことをするのは怖いことだ」ということを、意外とみんなが忘れてしまっていますよね。「怖い」「警戒する」ということに、いま敢えて言及するのは非常に本質を突いていると思いますね。

*1 TaVision(タビジョン) | 「可愛い子には旅をさせよ」をコンセプトに、おしゃれ大好き旅女(TABIJYO)が、ガイドブックには載っていない場所やグルメ、ファッションアイテムを伝えるメディア。 旅女(TABIJYO)たちがセレクトしたアイテムを、自宅にいながらにして購入して楽しむこともできるとして、10代から20代女性を中心に支持を集める。

*2 IDMA(アイドマ) | 1924年、サミュエル・ローランド・ホール(Samuel Roland Hall)がその著書「Retail Advertising and Selling(小売りにおける宣伝と販売)」の中で提唱した概念。広告宣伝に対する生活者心理プロセスで、「Attention(注意・認知)」「Interest(興味・関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の頭文字を取り「AIDMA(アイドマ)」と名付けられた。

*3 AISAS(アイサス) | インターネット時代の変化に対応した購買行動モデルのひとつ。生活者の購買行動プロセスを「Attention(注意・認知)」「Interest(興味・関心)」「Search(検索)」「Action(行動)」「Share(共有)」で整理し、それぞれの頭文字をとって「AISAS(アイサス)」と名付けられた。長く主流と考えられてきた「AIDMA(アイドマ)」をベースに、インターネットに特有の概念を組み込んでいるのが特徴。秋山隆平氏によって提唱され、2005年6月に電通が商標登録を行なった。

ファンでい続けてもらうためにフォロワーを巻き込む

尾原:ゆうこすさんはフォロワーの方とコラボレーションすることも多いですよね。この間もタイトル画像を作ってもらっていましたよね?

ゆうこす:はい。私はいま色々なお仕事をしていて、そのことをフォロワーの方は喜んでくれるんですが、「私とフォロワーの方の距離」が離れてしまうという面もあるわけですよね。その距離をいかに縮めるか、というのが私の課題なんですが、それはブログやInstagram(インスタグラム)の更新だけではなかなか埋まりません。フォロワーの方に「ゆうこすを自分ごと化してもらう」ことが必要なんですね。そのために、次のイベントの告知をフォロワーの方に作ってもらって、一緒になって「モテクリエイター 菅本裕子」を発信しているんです。

尾原:「弱みを晒け出して仲間にする」という方法がありますが、ゆうこすさんが苦手なことを手伝えるという点では、コアなファンほど喜んでいるかもしれませんね。

ゆうこす:何かをするときには、「自分のコアなファンが喜ぶか」ということを、いつも考えていますね。

尾原:さて、ここで会場から質問を受けたいと思います。

ゆうこす:そうですね。お話できる時間が一番嬉しいですからね。

尾原:さて、ではそちらのメガネの方、どうぞ。

聴講者A:私の店舗ではダイエット商材を扱っていて、少しずつSNSも始めているんですが、自撮りが大の苦手なんです。どうしたら自撮りを上手に撮影できるでしょうか?

ゆうこす:そういう方は多いですよね。女性服を売っている男性も多いですしね。

尾原:それはご自身をモデルにするか否かということよりも、「一貫性があること」が重要なんじゃないでしょうか。画像でコミュニケーションするSNSで、ある人は空の写真ばかりをアップしているんですね。すると、毎日その空の写真を見ていると、「あっ、今日この人、機嫌悪いのかな?」ということがわかるようになってくるんです。なので、テーマを持って、想いを込めてアップし続けることが重要だと思いますね。

ゆうこす:あとは「キャラクター化」もアリですよね。顔を出せない歌手や声優さんのマネジメントをしていますが、その人たちのSNSはイラストでやっています。いまは「V Tuber(ブイチューバー)*4」などもありますし、感情も伝わるのでオススメですね。

尾原:「感情が伝わる」というのが一番大切ということですね。では、次の方。

聴講者B:私はアパレル商材を扱っているんですが、店舗のInstagram(インスタグラム)がスタッフのスナップばかりが上がっているという、かなり古いスタイルなんですね。SNS担当として、そこにテコ入れして、ルックブック的に運用していこうと考えているんですが、そのやり方が今ひとつ分かっておらず、未だに投稿できずにいるんです。過去の微妙な写真も残すべきなのかもわからず、ベストな方法を教えて頂けないでしょうか?

ゆうこす:これまでの投稿は絶対に残すべきだと思います。まず、いま現在のコアなファンが残念がりますよね。そして、ガラッと新しいスタイルに変えた時に、「過去からの成長の軌跡」を見ることができます。新規フォロワーを獲得する点においても、過去からのストーリーを見ることができるのはメリットになります。なので、私はこれまでに過去のツイートを削除したことはありません。

尾原:ゆうこすさんの過去の炎上事件や「お料理タレント」を名乗っていた頃のツイートなんて、それはひどいものですが(笑)、それも含めて成長を共有するということですよね。

ゆうこす:ファッションとInstagram(インスタグラム)は相性抜群だと思います。最近追加された「IGTV(インスタグラムTV)*5」では縦型動画が採用されて、全身を映すことができますし。

尾原:ファッションブランドの場合、ターゲットやコンセプトを細かくお聞きしないと、具体的なアドバイスは難しいですが、「自分たちのブランドの背骨は何か?」ということを意識すべきだと思いますね。ゆうこすさんのTwitter(ツイッター)を見ると、一つひとつのツイートは一貫性がないんですが、全てのツイートが「モテクリエイター」というフィルターを通しているんです。そうすると、次のツイートも見てみたいと思うわけですね。そういう点は参考になるのではないかと思います。では、最後の質問に行きましょう。そちらの方、お願いします。

聴講者C:Twitter(ツイッター)に関してお聞きします。情報として必要なものを入れていくと、どうしても文章が長くなってしまいます。バズっているツイートを見ると行間をうまく使っているものも多く、その「引き算」をどうすべきか、アドバイスがあればお願いします。

ゆうこす:私が気をつけているのが「このツイートをRT(リツイート)するのは、どんな人なのか?」「その人がRT(リツイート)するとき、恥ずかしくないか?」という点です。RT(リツイート)するという行為は、意外と恥ずかしいものなんです。なので、YouTubeでタイトルに「ゆうこす」という文字を入れないのも、恥ずかしくないようにするためです。

例えば、「新商品発売」などの情報系を発信する時は、「見出し」「情報」「メリット」「写真」「リアルな感想」「行動先」を入れています。これがあれば、コアなファンは拡散しやすですよね。必要な情報が詰まったカードみたいなものです。

この間、東京から新潟へ行く新幹線に乗った時に「遠距離恋愛っていいよね」みたいなコピーがあったので、写真を撮ってツイートしたんですね。このツイートをRT(リツイート)してくれるのって、「いま遠距離恋愛している人」ですよね。遠距離恋愛している人っていうのは、そもそも「エモい」じゃないですか。そんな人たちにゴチャゴチャと色々なことを書いても、邪魔なだけですよね。なので、写真と「これ、エモくない !?」の一言だけの方が拡散すると考えたんです。敢えて短文にして、ゴチャゴチャ書かなかったんです。

尾原:なるほど~。ちなみに時間過ぎてるんですよね~。

ゆうこす:え~っ! ごめんなさ~い!

尾原:この最後のゆうこすの暴走っぷりこそが、今日の一番の真実だと思うんですよね。SNSの場合、「シェアされる」ということは、「その人のウォールに情報が乗る」ということですよね。言ってみれば、「自分の部屋に入れる部屋飾り」のようなものですよね。なので、ゆうこすさんは相手の気持ちになって「どうすれば喜んでもらえるだろう?」ということを、すごく考えているんですよね。一方で、「モテ」というブランドに沿って一貫性を持って「想い」を乗せている。その両方のバランスが取れているところに、ゆうこすさんの強みがあると思いました。

ゆうこす:「ぶりっ子」とSNSの相性は間違いなく良いです!

尾原:「ぶりっ子」というのは、「自分の想い」がありつつ「相手がどう思うか」を考えている、という掛け算ですからね。というわけで、皆さん、ぜひ「ぶりっ子」になりましょう。ちょっと変わった締めになりましたが、皆さん、ありがとうございました!

ゆうこす:ありがとうございました~!

*4 V Tuber(ブイチューバー) | Virtual YouTuber(バーチャル・ユーチューバー)の略。主にYouTube(ユーチューブ)上で動画などの配信活動を行う架空のキャラクター群を指す呼称で、「キズナアイ」「ミライアカリ」「輝夜月(かぐや・るな)」「電脳少女YouTuber シロ Siro」などが注目されている。

*5 IGTV(インスタグラムTV) | 2018年6月下旬から始まったInstagram(インスタグラム)の動画投稿機能。Instagram(インスタグラム)では通常投稿では60秒、ストーリーでは15秒であった上限時間に対し、この機能では最大60分の動画を投稿できる。また、それまで正方形の画角に対して、スマートフォンと相性の良い縦長のアスペクト比を採用している。