素敵なティーセット - トワエモア

 大倉陶園さまの一九八〇年頃の社長、百木春夫社長には大変にお世話になり親しくしていただきました。若いのと懸命さあまって、かなり気負っていて、ものを知らないのに生意気なことを恥かしげもなく云ってしまい、それでも笑いながらうまく諫めて下さいました。大きな人でした。
「お啓さんは茶碗を売ってるのじゃなく文化を売ってるんだもんね」等とそんな大げさなことを云った私に、ひやかしながら笑いながら、叱って下さるという風でした。「あまりそんな大口をたたくものじゃないんだよ」と云われているようで、恥ずかしくていつも消え入りたくなったものでした。

 当時、東京のトゥールダルジャンや資生堂、アピシウス、志摩観光ホテルの高橋料理長のための食器、オテルドミクニの三國さんのための食器等をデザインされ、その都度ご一緒につれて行って下さっていろいろのお話をしてきかせて下さいました。
 ようびからも熱海の旅館蓬莱さまやヴィラ・デル・ソル、神戸のV&V、岡山にあった夢のレストランB.E.の桜の食器など作っていただいたり、わがままを云ってはようびのオリジナルとしていろいろなものを作っていただきました。
 その一つがこのトワ・エ・モアでした。異なったシリーズのものを一つのセットにするなどと云うことは禁じ手だったらしく、会社では始めはいぶかしげにされたそうですが、百木さんの御采配で何とかクリア―していただきました。
 昭和十一年に作られたと云うオールドオークラのブルーグレーの色がどうしてもほしくて駄々をこねて、とうとうそれを実現していただけたのでした。

 この色を最初に漆蒔地でしていただいたのは、神戸のアパレルメーカーのワールドさんが経営なさっているV&Vと云うレストラン用の器でした。テーブルの上にだけ当っている照明に映えて、えも云えぬほど美しかったのをはっきり覚えています。表面が均一でなく乱反射する美しさだったのでしょう。それをトワ・エ・モアにも取り入れていただきました。
この美しい光の屈折を起こさせるために考案されたこの秘技は完全な手作業で、このトワ・エ・モアの場合は漆をかけ顔料を蒔く作業を一度ならず二度繰り返し、申し訳ない程の手間をおしみなくかけていただくことによって、初めて可能なのです。さまざまな光による発色が均一でない面白さを造り出すことが、こんなにも大変なものであること、そしてその作業を当たり前の如くなさって来られた大倉陶園さまに脱帽です。

 百木社長にお会いすることが出来た最初の頃に、「大倉は皿を作る機械もみな手の延長と考えています」とおっしゃいました。機械で作ったものの方がよいものは機械で、手作業にしなくてはいけないものは手作業でとあくまでも上質のものつくりをめざす姿勢を貫いていらっしゃいました。
何という貴重なものを商わせていただいているのか、皆様にお伝えするこの文をもって又改めて思い返すことになりました。
エッジはこのプラチナ巻が最高で、他のものは受け付けませんでした。
そんなこんなことをおたのしみいただきつつ、
お幸せなお茶の時をと切に祈りつつ。

工芸店ようび 店主 真木
磁器:トワエモア ブルー ティー碗皿・大倉陶園

大人の女性に相応しいエレガントなティーセット。優しい時間が流れます。





大きなお盆の上に整えられたティーセットは、戦前に作られていた「オールド大倉」の中から、「ティーカップはこの形、ポットはこちらの形から・・・」と、店主がお願いしてできあがった特別なセットです。ティーカップ以外は、店主が実際に使っていたお気に入りのフォルムですが、ティーカップは、戦争で鋳型も無くなっていたものを、店主が是非にと大倉陶園さんに再現して作っていただいたものです。このティーカップは、ペアセットとして大倉陶園さんも販売されたので、お持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

形も美しいのですが、何よりほれぼれするのは、こちらの「ブルー」の色です。白地に漆を施しその上に色を「蒔く」、大倉陶園さん秘伝の技「漆蒔技法」で作り出されています。漆器に見られる蒔絵のような手の込んだ仕事ですが、このとても深みのある色「ブルー」は、特別に2度も色を蒔いていただいた結果生まれました。和名の「薄群青」に近い美しく深い色です。


「オールド大倉」の再現とも言えるティーセット。
ティーカップの碗皿のペアは、贈り物にもお勧めいたします。

トワエモア ブルーコーヒー碗皿・大倉陶園:和食器の愉しみ工芸店ようび