下地の工程
漆器
  下地の工程は塗りのよしあしを左右する重要な工程であり、漆器作りの中でも最も手数がかかります。
漆器の特徴の一つは、堅牢さです。たとえば、輪島塗では、この下地の工程で、木地に布を貼ることと、漆に地の粉(じのこ)と呼ばれる珪藻土の粉を混ぜることで実現されます。漆が珪藻土の焼成され固くなった細かな孔に入り込み、漆と地の粉の両方で木地をしっかりと守っています。


  ※地の粉 珪藻土の一種の黄土で、これを焼成粉末にして、漆に混ぜて下地に使用します。
珪藻土は植物プランクトンの化石がたまってできた土です。特徴としては保温性と断熱性、吸着性、耐火性、保水性、吸音性などがあります。
余談ですが、珪藻土は七輪の材料としての方が有名かもしれません。こちらももともとは石川県の特産品です。昔からかまど、七輪、断熱材などに使われてきました。
 
  「工芸店ようび」で扱う漆器は「本来あるべき漆器の様」を先人のうつわに求め、その技法もいわゆる「輪島塗」にとらわれることはありません。
たとえば「まり椀」など椀ものは、より堅牢さを追求し、湿度の高い暑い日本の夏に「蒔地」をし、しっかり乾燥させる方法を採っています。この工程は2回繰り返され、都合2度の夏を越します。一般的な輪島塗の制作日数が1年ほどに比べ、3年もの月日がかかっています。
 
    輪島塗の一般的な下地の工程
    木地の表面を整える
 ↓ 切彫り(きれぼり)
刻苧(こくそ)
    木地に生漆を染みこませる
 ↓ 木地固め
木地磨き
    椀の縁や底の割れやすい部分に漆で布を貼り補強する
 ↓ 布着せ
布削り
    木地と布との境をなくすために漆を塗る
 ↓ 惣身(そうみ)付け
惣身みがき
    粗めの地の粉を漆に混ぜて塗る
 ↓ 一辺地付け
空(から)研ぎ
    地の粉を細かくして漆に混ぜて塗る
 ↓ 二辺地付け
空研ぎ
    さらに地の粉を細かくして漆に混ぜる
 ↓ 三辺地付け
地研ぎ
 
    一般的な蒔地の工程
    蒔地は、3度の地付けに替わり、漆が乾く前に地の粉(珪藻土)がまかれる。しっかりと乾燥させ、2度工程を繰り返した後空研ぎする。

  木固め 生漆を塗る
蒔地 地の粉をまく
地固め 生漆で蒔地を固める
   ↓  
空研ぎ  
       
[colse]