|
空腹が満たされ、かゆみから開放された犬達は、ゆったりとしたサークルに移されました。しかし、その直後、犬同士の喧嘩が始まりました。餌の取り合いで大型犬が噛み付きあっています。幸い、小型犬は寄付されたゲージに入っていて巻き込まれずに済みました。
そんな中、『ばっちゃん』は顔から血を流し、想像もつかぬほど長く伸びた爪のため、立つことさえおぼつかない足で震えていました。耳もシッポもお尻も赤剥けで赤黒くなった皮膚ばかりが目立ちます。
『ばっちゃん』のおっぱいは大きく垂れ下がり、陰部は人間のこぶし程の大きさになっています。獣医さんの診断では、少なくても100匹以上の子犬を生まされているということでした。真っ茶色になった歯は、小児ジステンバーによるエナメル質の破壊だそうです。
余程疲れていたのでしょう。『ばっちゃん』は薬浴の最中に居眠りを始めました。薬湯に浸かったまま、30分ほどコックリコックリと気持ち良さそうに居眠りをして舟を漕いでいました。
人間の利益のために、たくさんの子犬を産まされ、年をとって使えなくなったら捨てられて・・・・この可哀相な『ばっちゃん』を一日でも早く幸せにしてやりたい。
でもここには他にもたくさんの可哀相な犬達がいる。年寄り犬もたくさんいる。喧嘩に負けて、群れに入れずいじけた犬は、脅えた様子で助けを求めています。喧嘩によって発熱し、丸まったまま顔を見せない犬。恐怖のあまり、横になれず座ったまま居眠りをしている犬。小型犬達は皆、ガタガタ震えています。
みんな連れて帰りたい。でも我が家には、ラリー君、ピオ君、ノアちゃん、セーラー、そしてきつい性格のネコのニャーもいます。それに『ばっちゃん』だけをレスキューするのはとても心が痛みます。でも1匹だけでも・・・。いろいろな思いが頭を巡りました。
でも、縁があったのでしょう。結局『ばっちゃん』は私の運転する車中で、安心しきったように大いびきをかきながら、ペンションへ到着しました。そして今ではすっかり家族の一員となり、家の中で幸せそうに暮らしています。何事にも動じずマイペース。心配していたニャーともすぐに仲良くなり、寒い日は暖炉の前のラリー君のお気に入りの席で居眠り、飽きるとラリー君に貰ったカドラーの中で仰向けに寝ています。遠慮がちなピオ君は床で寝ることが多くなってしまいました。
|

ばっちゃんの仲間たちもみんなきれいに
シャンプーされて嬉しそう
|