硯の博物館
硯の用語
古くから伝われた硯には、使用する用語があります。硯の話をするには、最低この知識が必要でしょう。
硯の選び方・使い方
墨は製墨されてから五〇年頃が、使い頃と言います。硯は使いやすく、磨墨、発墨、彫琢が良い物を選ぶのがコツです。
愛硯家
硯の用語を始め使い方、古硯の保存から硯の手入れなどについて紹介します。
中国古名硯
硯が発明されたのは中国です。しかも、二千数百年さかのぼります。ながても、宋代の硯は名品といわれそれらの種類など説明します。
古端渓硯

石硯材は五〇〇種以上もある、その中でも著名なのが、端渓石ときゅうじゅう石他2,3ある。正しい端渓硯の知識を紹介します。中国硯材集成。

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硯のミニ知識

硯の原石
石としては、広東省の斧柯山や北嶺などから採れる端渓石(端石)と呼ばれるものと江西省の龍尾山からの歙州石が中国の二大名石といわれています。
これらの石の名から、それぞれ端渓硯、歙州硯と区別されます。

端渓石(たんけいせき)
この硯石は唐代の初期に発見され、約千三百年にわたって採掘されてきた。
したがって、硯といえば端渓石、端渓石といえば最上の硯、といわれるほど著名な硯石となっている。
同じ端渓硯でも掘り出される抗(硯抗)の違いによって、宋抗端硯、麻子抗端硯などと区別されます。

蘭亭硯(らんていけん)
「蘭亭硯」は書聖といわれた王義之の名筆蘭亭序の一節を絵にしたもので、非常に有名な作硯です。

太史硯(たいしけん)
北宋時代に生まれた制式で、挿手式の長方硯が高じた形制で、厚みが7、8センチもある。
太史硯の名称は清代の頃である。
 
 硯の用語

 まず、頗にあたるところが硯面であり、これを硯表ともいいます。背にあたるところは硯背であり、これを硯陰ともいいます。側面にあたるところは硯側であり、これを硯傍ともいいます。そして、硯面にもそれぞれ部分的なよぴかたがあります。


墨堂と墨池

 まず、墨を磨るところを墨堂とか墨岡といい、古くは磨墨処などといっていました。墨汁をたくわえておくところは墨池とか硯池といい、たんに池ともいっています。近世では、硯に池がないのは人に目がないようなものである、といったことわざもあります。もし、池が墨堂の周囲をめぐっているばあいは、これを石渠とか辟薙とかよぶことがあります。墨堂から硯池へかかるところは、これを落潮とか舌とかいっています。この部分はみすごされがちになりますが、機能のうえからいっても、製硯のうえからいっても、ひじょうに大切なところです。もし、墨堂と墨池がななめにつらなったり、あるいは臼状をなしたばあいは、これを墨海とか、たんに墨池ということがあります。

硯面の周囲のところは、硯縁とか硯純といっています。硯縁はふつう、一センチ前後の幅でほどこされていますが、中にはまったく縁がないものもあります。あるいは、上部と左右の三辺にだけ縁をほどこしたものなど、硯縁には、いろいろ工夫がなされていのす。


硯足・硯脚

 また、硯背にも硯式によっていくつかのよびかたがあります。ふつう、長方形や正方形に一段おとされているものは、これを履手といっています。もし、手前のところが空処に掘りぬかれているものは、これを挿手、あるいは抄手などといっています。そして左右に足がほどこされているものは、これを硯足とか硯脚といっています。硯の背の底面にあたるところは、これを硯底といっています。

 さて、硯の全体からみたばあい、頭部のところを硯首といい、中央のところを硯腹といい、手前のところを硯尾といいます。ついでに、もし蓋付きの硯のばあいは、上部を硯蓋、下部を硯身といっています。


用語集
硯水(けんすい) 墨を磨るために用いる水のことです。
磨墨(まぼく) 墨を磨ることです。
墨汁(ぼくじゅう) 液状になった墨のこと。
下墨(さげすみ) 墨がおりることです。
発墨(はつぼく) 硯で墨をするときの、墨の下り具合。墨色の出具合。
着墨(ちゃくぼく) 墨堂によく墨があうことです。
拒墨(きょぼく) 墨堂によく墨があわないことです。
ざ墨(ざぼく) 磨墨のときに墨がポロポロ欠けることです。
宿墨(しゅくぼく) 磨りっぱなしにした墨汁、磨ってから一夜を経過した墨汁のこと。
離墨(りぼく) 墨汁のおちがよいことです。
洗硯(せんけん) 硯を洗ったり鑑賞することです。
古硯(こけん) 百年以前につくられた硯のことです。
新硯(しんけん) 九十九年まえより現在にいたるあいだにつくられた硯のこと。
名硯(めいけん) 硯の名作のことです。
駄硯(だけん) 硯の駄作のことです。
鑑賞硯(かんしょうけん) 美術性をもった硯のことで。
実用硯(じつようけん) ふだんづかいの硯のことです。
唐硯(とうけん) 中国の硯の代名詞です。
高麗硯(こうらいけん) 朝鮮の硯のことです。
和硯(わけん) 日本の硯のことです。
銘硯(めいけん) 銘文の刻された硯のことです。
官硯(かんけん) 国家機構の中でつくられた硯のことです。
硯工(けんこう) 硯をつくる工人のことです。
製硯(せいけん) 硯をつくることであり、作硯とも言います。
作硯家(さくけんか) 硯をつくる工芸家のことです。
硯材(けんざい) 硯にする素材のこと。
硯石(けんせき) 硯に適した石のことです。
石工(せっこう) 硯市を採掘する工人のことです。
硯坑(けんこう) 硯石の産出する洞坑のことです。
開坑(かいこう) 硯坑を開いて採石すること。
硯式(けんしき) 硯の器形のことであり、制式とも言います。
彫琢(ちょうたく) おもに図案を彫ること。
石質(せきしつ) 硯石のもつ資質のことです。
石色(せきしょく) 硯石の呈している色彩のことです。
石紋(せきもん) 硯石の表面にあらわれている斑紋のこと。
石声(せきせい) 硯石の発する音声のことです。
硯相(けんそう) 人相とおなじく硯の全体からうける相貌のこと。
一面(いちめん) 硯の点数をかぞえることであり、一方とか一枚ともいいます。
用硯(ようけん) じつさいに硯を使用することです。
試墨(しぼく) 硯に墨をあてて磨墨や発墨のぐあいを見ること。
補硯(ほけん) 破損した硯を補修することです。
改作(かいさく) いちどつくられた硯をつくりかえることです。
蔵硯(ぞうけん) 硯を保存ることであり、転じて硯を所蔵することにも言います。
愛硯(あいけん) 硯を熱愛することであり、硯癖とも言います。
硯友(けんゆう) 硯癖をおなじくする朋友のことです。
硯値(すずりね) 硯の価値のことです。
論硯(ろんけん) 硯をあれこれ論じたことであり、評硯とも言います。
硯譜(けんぷ) 硯の文献とか図録のことであり、現在では硯書とも言います。
硯拓(けんたく) 硯の拓本のことです。


以上、これだけ知っていれば、ふつうの硯書を読むのにはまず充分だと思います。