バルバレスコ村にあるスピネッタのカンティーナを訪ねて、途中、バルバレスコ村のバールに立ち寄りました。
ちょうど、村の中心の交差点の工事中。村の人が、10人以上も交差点のまわりに、立ったり座ったりして工事の様子を見物。
「工事をしているから見て行け」などと声をかけられながら、バールでバニーニと絞りたてのブラッドオレンジジュースを1杯。
リベッティ氏と約束したはず?のバルバレスコ村のカンティーナに向かうと、
「リベッティ氏は、バローロのカンティーナに行ったよ?」とスタッフに言われ、カンペバローロのカンティーナに移動しました。
カンペの丘のふもとに、落ち着いた雰囲気の新しいカンティーナ。車を降りて近づいて行くと、大きな木枠の扉の透明なガラスの扉に
白く、アルベルトデューラーデザインのサイの柄がプリントされていて、とっても涼しげでした。一面に張り巡らされたテラコッタの床。
こんなに、美しいカンティーナであのバローロが造られているのかと、ため息が出ました。
リベッティ氏が外出?しているというので、半ばがっくりしながらも、輸出担当の女性スタッフが造りの説明をゆっくりとしてくれました。
樽の熟成庫では美しい新樽が整然と並んでいて、空気もしんと静まり返っています。
「スピネッタでは、新樽のみを使用し、年に1000個の新樽を購入しています。
2年目の樽は使わないので、まぁ、2年目の樽も売却はできますが、かなりの投資を樽にしているわけです。」
新樽を眺めると、ペトリュースなどの樽を手がける、フランスの樽メーータランショのものも見受けられました。
そして、今回、初めて見ることができたのが、横型の発酵ステンレスタンク。通常縦型の発酵ステンレスタンクはよく見かけますが、横型は初めて見たので興味津々で話を伺いました。 「ブドウの皮や種が入った状態で、このタンクにいれるのですが、皮は上に浮き、種は下沈みます。
そして、不要にタンニンを出さないために、下に沈んだ種はタンクの下の溝の
部分から除去しています。この、大きなはねで1時間に1回だけモストを攪拌しています。
それは、皮から、ほど
よく、色素やタンニンを引き出すためなんですね。」
「そうして、発酵が60%ほどの状態、つまりワインとモストが半々の状態で、横型タンクでの1次発酵はおわります。縦型タンクに移して2回目の発酵にかかるわけです。
この縦型タンクでの発酵は約2週間かかります。その後、バリックへ移し変えて熟成させるわけですね。
うちの製品はすべてノンフィルター。でも、この醸造のプロセスはジョルジョ
(リベッティ氏)に言わせれば1。
ワイン造りを10の重要度に分けるなら、その9割は
畑にあるというわけです。」
「じゃぁ畑に行って見ますか?」
バローロボーイズと呼ばれる、新樽を使った、早くから飲めるバローロの新進気 鋭の造り手たちの間で採用されている醸造を目の当たりにして、少し興奮気味に なりながらカンティーナの外に向かいました。
「スピネッタの社員は現在、65人。そのうちの50人は畑の仕事。
残り15人がカンティーナでの仕事ということで、スピネッタがいかに畑に力を注いでいるかお分かりいただけるかと思います。うちの忙しいエノロゴ(醸造責任者)のジョルジョ(リベッティ氏)も、7月〜8月
そして収穫の時期は必ず畑につめているんですよ。」
畑までの乾いた土を踏みしめながらカンペの丘を見上げると、形よく、丸みを帯びた丘が実際はものすごい傾斜地であることに気が付きました。
ふと、車から降りてくる目つきの鋭い男性をみかけました。
広く胸をあけた白いはりのあるシャツの襟をぴんとたてた小柄な男性。その方がジョルジョ・リベッティ氏でした。
大きく両手を広げると、
「よく、日本から来てくれました」
「登ってみますか?」
と聞かれるので、喜んでうなずく私。ところが、実際に上ってみると、急な斜面は帰りが怖そうと思うほどで、途中、息は切れてくるし、普段の運動不足を痛感。リベッティ氏はというと、度々なる携帯電話になにかどなりつけながら、息切れすることもなく、軽々と上っていかれました。頂上から眺める景色は、のどかな田園の風景で、リベッティ氏は、畑の正面に位置する太陽を指差して、
「この畑のすばらしさは、この方角。南向きだから、太陽の光を正面から受け止め
られるんだ。ネッビオーロは他の品種に比べて小さいんだけど、1本の木に1kgのぶどう
と収穫量を抑えているんだよ。」
その後、丘を下り、カンティーナ2階の応接スペースでの試飲。
バルベラダスティ・カディピアーノ 03
バルベラダスティ・スーペリオーレ ビィオンゾ 03
バルベラダルバ・ガッリーナ 03
ピン 03
バルバレスコ 02(2002年は不作のため、クリュバルバレスコが作られませんでした)
カンペバローロ 01(リリース前)
モスカート 04
をテースティングさせていただきました、とにかくやわらかで、ビロードのような味わいが印象的な赤。
丹念なブドウ作りと、発酵の工夫、新樽の使用の仕方などさまざまなワイン造りへの情熱を感じた後だけにおいしさもひとしお。
特に今回新たな発見だったのは、モスカートの群を抜いたおいしさ。
ミネラルなどの澄んだ香り、アカシアの蜂蜜の香りなど、複雑で上質な香りのあとに、密度のある、わずかに、ドライで、複雑な甘みのある、ぴりぴりとした微発砲のモスカートを口にしました。アフターに透明感のある、それでいて、キャラメルのニュアンス、草原の香りなどの残る、すばらしい飲み口はかつて体験したことのないすばらしいモスカートでした。
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