ContentsTOPそれいけデッチ!金沢 将悟
 
「目標は…、鞄職人の日本代表ですね。」


2年前のあの日、工房に新しい風が吹いた。

金澤将悟…彼が入社した2年前、工房は主宰の土屋國男をはじめとし、60才以上のベテラン職人で構成されていた。
昨今、日本の皮革業界は様々な要因から廃業となる会社が多く、低迷の一途をたどっている。当然、職人は減るばかりで、高齢化や後継者の不足に頭を抱える状況である。

このままでは日本の地場産業が衰退し、近い将来職人が途絶えてしまうという危機感から、積極的な若手の育成に力を注ぐべく立ち上がったのが2年前の冬だった。

担当:お昼休みのところ、すみません。
金澤(以下金):いやいや、大丈夫だよ。何取材?!恥ずかしいねぇ。(笑)
担:金澤くんが入社して2年ですね、何だかあっという間という印象ですが。
金:そうだね、あっという間だったかもしれない。
担:金澤君は、若手の中で一番初めに入社したんですよね。金澤くんが入社した日のこと、今でもよく覚えていますよ!
最近はどうですか?何か変わったなぁとかありますか?
金:そうだねぇ…、若い人が増えて最近は活気が出てきたなぁと思う。いろんな刺激を受け合えることが嬉しいよ。みんな良きライバルだからね。

現在、4人の若者がデッチとして修行に励んでいるが、金澤はそのリーダー的存在である。彼が入社した日から、工房の中に爽やかな新しい風が吹きはじめた。確かに、私はそう感じた。技術を学びたいという、活き活きした若いまっすぐなパワーに、長い年月をかけて培ってきた技を伝えて行きたいという実直なベテランのパワーが重なり合い、工房の雰囲気が徐々に変わり始めたのだ。
そう、彼が運んだ新しい風は、まるで春一番のように工房に新しい季節の到来を告げたのである。

担:金澤くんは、うちに入る前にもデッチをしていたんですよね。
金:そう、1年間別のところで修行していたんだ。でも、まぁ時代が時代だからね、技術を教えようとか育てようっていう会社ではなくってね。で、そこを辞めて一人で製作を始めたんだけど、やっぱりもっと勉強しなくちゃと思って。
そんな時、ここの募集があったんだよ。
担:どんな事をしても、面接に受かろうとしゃべり倒したと聞いていますけど…(笑)手応え十分だったとも…(笑)
金:そうそう、笑っ。こんなチャンス他には無いってことは、嫌って程知っているからね。だから必死だったんだよ。何としても採用してもらおうと気合いが入ってました。気合いです気合い。(笑)

そう、金澤はとても明朗快活、声も大きい。そして良く笑う。彼が大声で笑っていると、どんな事でも楽しく乗り切れる気がする。
独特の話術でみんなの雰囲気を盛り上げてくれるムードメーカーだ。その一方、仕事中の彼の目は鋭い。真剣な目を見ていると容易には話し掛ける事が出来ないくらいだ。職人としての世界が彼には出来上がりつつあるのをひしひしと感じる。

担:もともとダイビングのインストラクターだったと聞いていますが、どうしてまた職人になろうと思ったんですか?
金:うーーん、実はハッキリとした理由はないんだよね。(笑)
手先は器用だったし物を作る事も好きだったけれど、鞄が大好きだった訳でもないしね…。あっそうだ、鞄を作る若者を紹介する番組を見た事があって、俺にも出来るかもって思ったんだ。面白そうだったし。それくらいかもしれない。
担:鞄を愛しているとか、物作りで生きてい行きたいとか、そういう理由の人が多いだけに珍しいですね。(笑) 金澤くんらしいというか。
金:それでも今は、帰ってから家でも製作しているよ。どれくらい作ったか覚えていないくらいね。ホント、毎日だから。

日々勉強。だから本当に楽しいと彼は話す。毎日勉強出来る場所があり、新しい事を学ぶことが出来るなんて最高だと。だから苦労なんてないよとさらり気持ち良く答える。

そして彼は、帰宅した後も毎日鞄を作っている。完全オリジナルの金澤モデルだ。そうして、昼間はベテランから技術を学び、夜はそれを実践する。鞄作りへの情熱はだれにも負けないのだろう。

担:今後は、どんな職人像を目指していますか?工房の将来とか希望があれば教えてください。
金:そうだなぁ、目標かぁ。鞄職人の日本代表、日本一を目指したいね。(笑)
若手のひとりひとりの個性や技術が確かなものになって、鞄工房土屋のこの職人に作って欲しいと言って貰えるようになりたい。
例えば、今回は金澤のモデルが欲しいなと指名されたら最高だなと思うよ。
担:そうですね。近い将来そんな日がくると信じて頑張りたいですね。
子供の憧れる職業に、「職人」が入るくらい職人の仕事が幅広く知られるようにしていかなくちゃいけませんね。忙しい中ありがとうございました。
金:いやいや、こちらこそ。


日本の職人が激減する中、彼のような明るく前向きな若者が、職人の世界を受け継いでくれる事が嬉しい。2年前彼が運んだ風が工房に優しい変化をもたらしたように、日本の職人の世界も、少しずつ少しずつ元気になって貰いたいものだと思う。少なくとも当工房に彼らがいる限り、その心配はないだろう。たくましい彼の背中と、ゴツゴツと変化し始めたその手のひらに、日本の職人の未来を託したい。

※金沢への応援メールはこちらから

掲載日 2004.3.5
 


 
■社長から一言
金澤くん、彼の一番素晴らしいところは誰にも負けないやる気だね。本当にやる気が溢れているよ。
毎日家でも製作をしているようだから、どんどん技術を学んで経験を積み重ねているようだね。
そして彼は、思慮深く理解力がある。何かひとつ教えても、すぐに理解し実践することが出来る。

元気な大きな声でハキハキと話す姿が気持ち良く好感が持てる。まじめで明るく、陽気だしね。
若手の職人を引っ張っていくリーダ的な良い存在感が出てきたと思うよ。

一部分だけではなく全体が見えるようになった今では、工房を支える柱となってきている。
これから先、彼の柱が経験によって頑丈なものとなって、工房や鞄職人の世界を支えて行ってくれる
ものと信じているよ。ベテラン職人一同、心から期待しています。
 


 
鞄職人の世界とは? 土屋鞄製造所の人気コンテンツ
ベテラン職人の素顔

鞄工房土屋を支える熟練職人軍団の素顔と横顔に迫る、珠玉のインタビュー集。
詳細ページへ
それいけデッチ!

将来の鞄工房土屋を背負って立つ気鋭の若手職人「デッチ」達の夢語りを聴く!
詳細ページへ
職人の道具箱

大きな機械から自身が作った小道具まで、知られざる道具の世界にご招待。
詳細ページへ
職人百景

鞄づくりのひとコマ、熟練からデッチに伝えられる技など、工房の日常をご紹介。
詳細ページへ
コンテンツトップはこちらhttp://www.rakuten.ne.jp/gold/takuminowaza/Ippan/contents.html