タンナー ニシノレザータンナー ニシノレザータンナー ニシノレザー

土屋鞄のロングセラーシリーズ・トーンオイルヌメの内装やレザーエコトートなどの製品に使われている、豚革のスウェード(ピッグスウェード)。手に吸いつくような独特の優しい質感は、革製品を使う楽しみを教えてくれるようにも思える。土屋鞄で使う豚革の生産を手がけるタンナーは、東京・墨田区にある。手仕事でつくられる革を見学しに、タンナーを訪れた。

タンナー ニシノレザー


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タンナーの工房で必ず目にする、タイコと呼ばれる大きな木の樽。このタイコのなかでの処理を通して「皮」が鞣(なめ)され、私たちが手にする「革」となる。ひとつの工程を追えると、職人の手によってタイコから出され、水洗いされたタイコへ。こうして少しずつ完成に近づく。原皮の状態から石灰を使った毛抜きや水洗いなどをいくつかの工程を経て、鞣し作業が完了するまでには少なくとも1週間はかかる。

タイコは鞣す作業に使うだけでなく、鞣した革の染色にも用いる。このときはちょうど染色が終わって、タイコのなかから革を出しているところだった。2人がかりで、200枚の革を1枚1枚取り出す。

タンナー ニシノレザー

鞣す作業は、年中同じ条件で行っているわけではない。
「私たちが使っている工業用水は、冬は18度くらいで夏は22~23度。17~18度ではとても鞣せない。だから寒い時期は30度くらいまで水温を上げるんです。それでも夏に比べて冬は、鞣す前の処理は倍くらい時間が違いますね」

毎年、時期に応じてどう調整したかというデータを取っていて、季節によって最適な方法を確立しているという。
「日本は季節の違いがあるから、水温や水量、タイコを回す時間の管理やタイミングなどそういったことの調整が難しい。だからデータを基にこの時期はこれでいく、と決めてやっています」

タンナー ニシノレザー


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「バフィング」と呼ばれる工程。長いロールにサンドペーパーが巻かれており、そこに豚革をあてることで、スウェードの毛足を起こして仕上げている。

タンナー ニシノレザー


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こちらは、工房の2階でヌメ革を自然乾燥させている様子。外気に触れる場所で、さらに大きな扇風機で風を当てながら乾かしている。豚革の場合、早く乾くもののほうがきれいで、出来上がりが良いという。 ヌメ革は昔ながらの干し方で、1枚1枚板に釘で張り付ける。こうしないと、乾燥するうちにぎゅーっとするめのように丸まって扱いにくくなってしまうからだ。手間を惜しまず、1枚ずつ手をかけてつくり上げている。おおよそ1日で乾き、バタバタと振って革をほぐす。そして、その後革を漉く工房へと運ばれる。
タンナーでの作業を目の当たりにすると、原皮の状態から普段手にする革になるまで、本当にたくさんの時間とひとの手がかかっていることを実感する。

タンナー ニシノレザー


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今回訪れたニシノレザーがある東京スカイツリー近くの東墨田は、昔から皮革産業が盛んなエリア。今回訪れたタンナーの周囲にも、都立皮革技術センターや皮革関連工場があった。しかし近年では多くが廃業し、同業者は減っているという。
「20年くらい前には、ピッグスキンをやっているところはこのあたりに70軒ほどあったんですよ。いま稼働しているのは4軒のみ。20年前の1/20くらいの量しか鞣していないんです」
製品や素材の背景を追っていくと、時代とともに衰退している現実を感じることがある。ものづくりの分野はつくり手も減少し、厳しい状況だが、こうした多くの方の長年の尽力によって支えられている。



株式会社ニシノレザー
取材時期:2015年12月