NEW DAYS NEW FACE 01ロジックだけでは到達できない境地。
人を触発し心地よく揺らす、ものづくりとものがたり。
渡邉 康太郎さん / takram tokyo / london コンテクストデザイナー


世界には解明できないことがある。人間の頭で理解できることも、できないこともある。だからこそ怖くて、ロマンチックで、面白い。渡邉さんはとてもロジカルだが、それだけでは辿りつけない境地を常に探っている。「人と仕事をするとき、いいビジネスかどうか、という話より先に、その人の中にある一見ナイーブな夢みたいなものの正体の方が気になる。それが先にあって、次にビジネスがあるほうが心地よいなという気が常々しているんです」。どんなに非合理的なことでも、その背景にある物語や熱を面白がってくれそうな渡邉さん。実際にベンチャービジネスの新しいアイデアを審査する機会があるときも、そうした視点を大切にしているそうだ。

渡邉さんの仕事は様々で、一言で言い切れない。ひとつご紹介するならば、とらやさんと作った未来の和菓子「ひとひ」だ。5つで1セットになっており、日の出から月夜まで1日の中でひとつずつ食べていく。それぞれその時間に食するのに最適な成分が含まれており、嗜好品としての和菓子を必需品に寄せて作ってある。その思考プロセスはとても明快で整然としている。が、パッケージにデザインされた時間を表す5つの家紋と、1日の光の移ろいを落とし込んだその存在感はとても詩的で、心にかかる。光や時間という捉えきれない柔らかなものを、硬質なロジックに基づいた「機能食品としての和菓子」に美しく融合させているのだ。
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彼に「これからやりたいこと」を聞いたところ、やはりどこか心にかかるようなプロジェクトがかえってきた。ラリトプールというネパールのオーガニックスキンケアブランドのギフト商品作りに取り組んでいるという。"A message is inside."ソープにはそう書かれている。そう、ソープの中から贈り手のメッセージが出てくるのだ。使い切らないと読めないメッセージ。彼/彼女はいつ使い切るだろうか、そもそも使ってくれるだろうか。そのドキドキは、ゆるやかに長く続く。物語のはじまりだ。

アプローチは違うが、ふたつとも、「時間」がキーになっている。私たちは時間を強烈に意識することもあれば、ただその中をたゆたっていることもある。伸縮するようにも感じるし、透明な水のようにも感じる。渡邉さんは人を触発し、説明しきれない柔らかな感覚を揺り動かす。彼がこれから関わり作っていくものが末恐ろしく、早く見たい。ぜひ作品に出会ったら、触れてみてほしい。きっとあなたも普段意識しない「なにか」が気になり始めるはずだ。
takram design engineering
多様なプロフェッショナルが集うクリエイティブ・イノベーティブ・ファーム。
http://www.takram.com



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