ContentsTOP細部に宿る、職人のこだわりトーンオイルヌメ ショルダー




このショルダーでいちばん製作が難しい部分は、表用と裏用の2枚の革を縫い合わせるフラップ。オイルヌメ革は、ほかの革よりもオイルを含んでいるため伸びやすく、縫製作業が難しい。

そこで、縫製の際に革の位置がずれないように、2枚の革を補強テープで固定。ひとつひとつテープを使って張り合わせる作業は、とても手間がかかる。しかし、この方法がいちばんきれいに、そしてはやく確実に仕上がるのだ。




縫い合わせる2枚の革は、同じサイズではない。袋状に縫った革を表に返したとき、表面にしわがでないように、それぞれサイズを数ミリ変えてずらして縫っている。

また、フラップの独特のふっくら感を支えているのが、端の「革漉き」。革の厚みや角度を、部分的に調整する「革漉き」は、革製品の仕上がりを左右する大事な工程のひとつ。 革漉きの厚みと幅がずれてしまうと、目指すふっくら感はでない。縫い合わせた2枚の革が膨らんだようになってしまったり、厚みが出すぎてしまう。




縫い合わせたあと、もうひと工夫を。

袋状になったフラップの内側から、職人が手づくりした木の道具を使って革にくせをつける。優しく力を加えながら、手際よく道具に革をすべらすと、革をあわせた部分がぴしっとした仕上がりに。カーブもきれいに整い、フラップが出来上がる。


フラップの開け閉めのためのマグネットは、むき出しにせず、鞄本体になじむようにオイルヌメ革に包む。マグネットは小さなパーツだが、鞄本体がとてもシンプルなつくりのため、とても存在感がある。

本体への取付作業は、ひと針ひと針、革をミシンの上でまわしながら、マグネットのまわりをぐるっと縫う。マグネットと縫い目の間が均一になるよう慎重に、ていねいに。

縫い終わりは、マグネットの上部(時計でいうと12時の部分)にくるように。これは、長年使っていくうちに万が一糸がほつれてしまっても、縫い目がほどけやすくならないようにするためだ。