釉薬について
身近な落ち葉や枯れ木などを燃やした灰で釉薬を作ることも可能ですが、市販の釉薬も比較的安価で手に入るので初心者は市販の釉薬から始めるのがよいと思います。伝統的な釉薬で、基本やコツを学ぶのも面白いものです。
 釉薬とは

釉薬が生まれる糸口は、燃料の薪の灰が陶器に偶然付着し、高温で土との科学反応から融けてガラス状となったことからでした。基本原料は、長石、石灰、珪石、各種灰類、酸化銅や酸化鉄等で、それぞれに役割があります。調合は意外と簡単で、役割に適した分量を計って掛け合わせることで目的の釉調や色目に近くなります。

釉薬は、掛けたときの厚みによって焼き上がりに違いが出るので、あらかじめ、基準となる濃さに濃度を調節しておかなければなりません。濃度は素焼きのかけらに試しがけしたり、比重計やボーメ計(釉薬の種類によって異なりますが50くらいを目安とします)を使って確認します。

市販されている同じ原料でも、袋によって内容量が違ったり、窯のメーカーによって発色が違ったりするので、同じ配合で調合しても同じ色に出てくることはまずありえません。調合は一応の目安として利用し、オリジナル釉薬を作って楽しむのもよいでしょう。

 下絵付け
施釉の前に、模様や絵を施すことを「下絵付け」と言います。下絵付けをしない作品もありますが、好きな絵や模様が描ける下絵は作陶の楽しみのひとつです。下絵には、酸化鉄などを使用した鉄絵、呉須を使った染付があります。かける釉薬の色によって発色が違うのも下絵の魅力です。
 釉薬の役割

釉薬とはガラスの親戚みたいなものです。
(1)表情を変える。(様々な色があります)
(2)強度を強くする。(ガラス質のものでコーティングすることにより陶器自体の強度が増します)
(3)衛生的安全度を上げる。(釉薬を塗ってないと陶器などにはカビが生えたりします)

 釉薬の名前のつけ方
直接表現 「黒マット(艶消し)釉」「朱赤釉」など
比喩表現 「ナマコ釉(なまこのような色)」「ルリ釉(宝石の瑠璃のような色)」「アメ釉(べっこう飴のような色)」など
状態表現 「亀甲貫入釉(亀の甲羅のような多角形のひび割れ模様の貫入が出る)」など
地名・人名表現 「織部釉(織田信長が好んで作らせた焼き物に使用)」「天目釉(天目山から渡来した黒茶碗に使用)」
 釉薬の種類
 透明・乳白釉
透明釉は、長石と土灰を調合することで、透明なガラスのような仕上がりになる基本的な釉薬です。カオリンを少しまぜることで粘度が増し、素地となじみがよくなります。透明感があり、下地が透けて見えます。
乳白釉は、溶けにくい材料を混ぜ合わせて失透させます。焼成時の温度を上げると透明に近くなるものもあります。濃度が高くなるほどに白濁感が増しますが、薄めに掛けるとした絵付けが淡く透けて見えます。
 織部・銅系釉
美濃で焼かれた焼き物に使用される青緑色に発色する青織部のことをいい、銅を着色剤とした釉薬です。部分的に掛けられることが多いのは、銅が貴重であった昔の名残だそうです。
 天目・黄瀬戸・鉄系釉
天目釉は、中国から伝わった釉薬で、土の薄い口縁や釉薬が薄くかかった部分が飴色あるいは柿色に発色します。薄い部分以外は黒の中に油が浮いたような模様が出る特徴もあります。
黄瀬戸釉は、瀬戸地方の「黄瀬戸」と呼ばれる焼き物に使われる釉薬です。原料の鉄分によって淡黄色に発色します。
アメ釉は、艶のある基礎釉に鉄分を加えます。酸化焼成で飴色(淡茶〜黒褐色)に、還元焼成ではこげ茶系になります。
 志野釉
桃山時代は美濃地方で焼かれていました。原料の大部分が長石でしたが、現在ではカオリンなどを加えて再現されています。
 貫入釉
収縮の差により入ったヒビが特徴の釉薬です。亀甲貫入釉など。
 クリスタル釉
ツブツブの結晶のように出ます。透明釉のように下地が透けて見えるものではありません。
 マット釉
透明釉が基本ではありますが、特定の成分を加えることでマット(つやなし)になります。
 化粧土
液状化した粘土に色付けがしてあるもので、半乾燥した作品にまとわせて使用します。上から透明釉を施さないと器として使用できません。
 色釉
透明釉に着色剤などを混ぜて色味を出す釉薬です。
 その他
 
 施釉前の準備
(1)素焼後の作品の状態を見て、土やざらつきを取るために紙やすりを掛け、かたくしぼったスポンジで粉やホコリを取ります。
(2)釉薬が底にたまっているとうまく色が出ない場合もあるので、しっかりと手で撹拌します。
 施釉
素焼き、下絵付けが済んだ作品に釉薬を掛けます。装飾、彩りの役割もありますが、作品の強度を増す役目もあります。全体にまんべんなくかけるには、それぞれの作品に合った施釉法があります。
 釉薬のかけ方
ドブづけ その一 バケツに釉薬の水位をつくり、高台を指先で持ち真下にズブズブと入れるやり方で、湯のみや茶碗など小さな作品に向いています。湯のみなどの内側にかかる圧力によって、内側・外側同時に釉薬を掛ける方法です。
ドブづけ その二 バケツに釉薬の水位をつくり、器全体を釉薬に入れ、高台まで釉薬を掛ける方法です。畳み付きの釉薬はスポンジで拭き取ります。ズブがけを浸しがけともいいます。
流しがけ 平らな皿や大きい作品には柄杓で施釉します。内外ゆきわたるようにかけ回し、余分な釉薬はバケツに戻します。
かけ分け 2種類の釉薬を使って装飾の効果を出す方法です。
 保存の仕方

釉薬はまとめてたくさん作る場合が多いので、余った釉薬は蓋付ポリバケツや密閉できる容器に入れて水分の飛散を防ぎます。ホコリなどの不純物が入ると釉薬の性質に影響がでることもあるので気をつけましょう。日の当たらない場所に置いておけば長期保存が可能なものもありますが、釉薬の中には長期保存できないものもあります。

釉薬によって発色が違えば、その使用している釉薬原料などの組成も違います。化学反応をゆっくり起こし、成分が変わって言ってしまうことがあるのです。特に長期保存がきかない釉薬を下記にリストアップしておきます

ご注意ください!
長期間保存しておくと品質が変わる釉薬(焼いた際に縮れな貫入が入ってしまうなど)

F−5  長石・石灰立乳白釉 F−6  灰立乳白釉
F−13  天目釉 F−19  酸化志野釉
F−44C  黄瀬戸釉 F−44D  黄瀬戸釉
F−46  アメ釉 F−68  コバルトピーコック釉
F−69  ライラック釉 F−77  ナマコ釉
F−78  均窯釉 F−79  辰砂釉
F−83  ピンク釉 F−84  サクラ釉