本日は、季節の草花や山野草をモチーフとした樹脂粘土工芸「花実アート」を主催されている、牛嶋君子先生にお話を伺いたいと思います。樹脂粘土の可憐な花に、心和ませていらっしゃるファンの方も多いと思います。お話を伺うのを楽しみにしておりました。どうぞ、よろしくお願いいたします。

道端に咲く、小さくて儚げな、それでいて生命力や強さを持った、可憐な草・花・実に、どれほど多くの方が心癒され、愛しく感じられていることでしょう。それを、樹脂粘土で作ろうと思われたきっかけを、まずは、お話いただけますでしょうか。

幼少より生け花を習っていたこともあり、花はとっても身近なものでした。生け花の師範をしていた頃は造花には見向きもしなかったのですが、ふとしたきっかけで樹脂粘土の存在を知り、これまでの造花とは比べ物にならないほどリアルな質感で草花が作れると解り、それからはあっという間に粘土の世界にのめり込みました。

一昔前は、大きくて立派な粘土のお花作りの人気が高かったように思います。今は、生活環境や流行もあるかと思いますが、可愛らしくナチュラルなお花へと人々の好みも変化してきているように感じますが、いかがでしょうか。

おっしゃる通りだと思います。マンション住まいが増え、大きなお花を飾るスペースが無くなったことが要因のひとつだと思います。またインテリアも洗練されたシンプルなものが増えていますね。それに合わせてお花も少し色調を抑えた、素朴なものが流行しているように思います。

牛嶋先生のお花は、手に触れてみないと作品だということが見分けられないぐらいにリアルで、本物以上にみずみずしい植物に思えます。平面の絵に描くのとはまた違う、立体を表現する上でのポイントは、どのようなところでしょうか。

まず実物をじっくり観察して全体像をイメージしたら、そのあとバラバラに分解して(かわいそうだけど)、パーツ一つ一つの形を観察しています。観察にさえしっかり時間をかければ、あとは見たまま触れたままに作っていくだけです。立体を観察する上で人間の肉眼に勝るものはありませんし、写真じゃ読み取れない情報がたくさんありますので、必ず製作の前には実物を用意するようにしています。

シュゲールでも販売させていただいている本 「1日で作れるクレイフラワー ワンデーフラワー」 をきっかけに、粘土手芸を始められるお客様が増えていると実感しています。とても丁寧でわかりやすい説明、そして、手のひらサイズの可愛らしい作品が掲載されているので、はじめての方にも、取組みやすいことのも理由のひとつだと思います。こういった本などに表現されるときは、どのようなことに心を砕かれますでしょうか。

普段のレッスンでは目の前で作ってみせながら「これをこうしてこうやって」で済みますけど、写真と文章のみで説明するのですから、言葉選びにはとても慎重になりました。しかし編集の方のご協力もあって、初めての方でもわかりやすく解説できたように思います。また掲載したお花も、身近で親しみがあり、初めての方でも作りやすく、なるべく工程の少ないものを基準に選びました。少しでも立体感を伝えるために全編カラー写真にしてもらったことも、こだわった部分のひとつです。

また、型や型紙を使って作る手軽さや、完成度の高さも人気の理由だと思います。便利なツールがあることで、時間短縮にもなりますし、パーツを組み立てながら、植物の成り立ちを勉強できるのも、新たな発見があって、面白いと思いました。
牛嶋先生の、こだわりのツールには、どのようなものがありますか?

ツールとは言えないかもしれませんが、葉っぱを作るとき、葉脈は極力本物の葉っぱから写し取るようにしています。本物の葉が手に入るタイミングでその作品を作るので、本物を観察しながら作れて一石二鳥です。また、半日で作品が完成するオリジナルレシピがあって、その通りに作れば誰でも失敗なく作品が出来上がります。そのレシピが一番のこだわりのツールかもしれませんね。

シュゲールでは、初心者の方から、色付け材について、よくお問い合わせを受けます。カラー粘土、アクリル絵具、油絵具などありますが、練り込みや彩色する場合、仕上がりにどのような違いが出ますか。牛嶋先生は、どのような使い分けをしていらっしゃるのでしょうか。

花実アートでは油絵具しか使用していません。アクリル絵具やカラー粘土を使ってももちろん作ることはできますが、油絵具が圧倒的に色数が豊富、というのが主な理由です。また油絵具は、程よいツヤ感がありとてもリアルに仕上がります。

個人的な好みもあるのかもしれませんが、例えば、ツクシですとか、シロツメクサですとか、野に咲いている素朴な草花を、土ごとすくって、ふわっと器に盛ったような作品に、懐かしさを覚えて、心が温かくなります。作品を作ったら、それを更に素敵に見せるための、相性の良い器も重要かと思います。色、形、大きさなど、器選びのコツはありますか。

器は、割と自由に遊んでいます。合わせてみたら偶然合ったといったこともたくさんあります。器選びよりもむしろ植え方のほうが重要かもしれません。首をすうっと伸ばして咲くような花は線を生かして高めに。地面近くにはびこるように咲く花はそのように…といった感じです。自然の姿をあまり変えずに、目線もそのままに…。それこそ「土ごとすくってふわっと盛る」という表現はとてもしっくりきました。

また選んだ器に、植えたり生けたりするには、お花の向きや、数、高低など、バランス感覚のセンスも大事なのではないかと思います。牛嶋先生は、お子様のころから、いけばなに親しんでいらしたと、伺っておりますが、作品に仕上げるときの表情の付け方など、アレンジの基本みたいなものは、ありますか。

植え込む前にあらかじめ茎一本一本を曲げてニュアンスを付けています。そうすると、適当に植え込んでも割とさまになります。野の花ですので、自然に咲いてる姿のままに無造作に植えてあげるのが一番ですね。とはいっても、花の数を奇数にしてみたり、花の高さをある程度バラバラにしたり、なんとなく正面を決めて生けこんだりと、基本的な生け花ルールは組み込んでいます。

DVDを拝見しますと、熟練された先生の手からは、いとも簡単に、可愛らしいお花が出来上がります。でも、はじめてチャレンジされる場合は、なかなか上手くいかないことも多いと思います。失敗したり、つまづいてしまったりされた、ビギナーの方々に、応援メッセージをお願いいたします。また、ファンの方々へ向けて、今後の予定などありましたら、よろしくお願いいたします。

樹脂粘土工芸 花実アート 公式サイト http://hanami.art.coocan.jp/

樹脂粘土工芸 花実アート Facebookページ
https://www.facebook.com/hanamiart

楽器やスポーツなど、実技といわれるものはどんなジャンルでも一朝一夕にはいかないものです。でもだからこそ上達の喜びは大きいし、のめり込むきっかけにもなります。粘土のお花も同じで、作れば作っただけ技術が身につきます。ぜひ、たくさんたくさん作ってみてください。失敗しても決して無駄になることはありません。一つ目より二つ目、二つ目より三つ目のほうが確実に上手になっているはずです。そしてその成果は、作品となって目に見える形で残るのですから、きっと楽しく続けられると思います。今後も花実アートは、展示会を開催するなどして広く粘土のお花を普及させていきたいと考えています。ホームページやFacebookページなどで最新情報をチェックしていただければ幸いです。

(あとがき)
ホッとできる優しい雰囲気のお花の作品に魅せられ、ご自宅のインテリアに、また、プレゼントにと、心躍らせた読者の方も多いことと思います。インタビューをきっかけに、ぜひとも、チャレンジをしていただけたらと思います。

最後になりましたが、花実アートのご発展を、心よりお祈り申し上げます。
本日は、素敵なお話と、素敵な作品を、ありがとうございました。