ステッキの効用と骨の健康管理

 今日ステッキは、おしゃれとして積極的に使用される方はやはり少なく、実際問題として膝などを痛めたことをきっかけに使用される例が多いようですが、

 ステッキは、
 1)歩行の補助のほか、
 2)歩行のバランスをとり易くし
 3)姿勢を正してくれますので、
 4)おしゃれな健康づくりの小道具
として膝や腰などの負担軽減転倒事故防止の点から早めにご使用になっていただくとよいでしょう。
 5)また、外出・散歩が楽しくなります
 
 最近では、花柄やピンク・ワインカラーなどカラフルでおしゃれなものから気遣い機能がたくさんあるものまで数多くでてきています。これからは、TPOに応じてお使いになり、活き活きとした生活をお楽しみください。

 ステッキを突きながら新緑の木漏れ日の中を、また紅葉の頃、逍遥(しょうよう)するのは最高の贅沢といえるのではないでしょうか。

 転んで骨折し車椅子の生活や寝たきりの生活は絶対いやだから、なるべく外出を控えようとする方もいらっしゃるようですが、人の体はいくつになっても、使わないと衰えるという”廃用性萎縮”が生じますので、注意しなければなりません。筋力ばかりではなく、外出に伴う外的刺激を心地よいと受止める気力を萎えさせないようにする必要があります。
 風邪等で2〜3日寝込んでみると、足などが細くなっているのに気づいたりたり、平衡感覚そのものが平常ではなくなっていることなどに驚かされます。

 このようなことが最新の宇宙医学で検証されてきています。
 当初の宇宙飛行では、地上に戻ったときなど訓練を重ねてきたはずの宇宙飛行士が抱えられながらの帰還の光景をよく目にしていましたが、今日ではその原因が判明し、宇宙飛行士は船内でトレーニングを行い、筋力強化、骨量・質の低下を防いでいるのです。無重力では、細胞も楽さ加減に慣れてしまうという、順応性が高いともいえますが、見方をかえますと体内奥底の一つひとつの細胞が短時日で衰えていくと考えますと、おそろしいことですね。

 有名なお話としてよく言われているのが、成田きんさんが99歳になって足の筋肉トレーニングに励まれ、さらにお元気になられたことはいくつになっても健康づくりの重要性の証左なんですね。


 今日では、手軽でかつ合理的な運動として、膝を痛め易いジョギングよりウォーキングを奨励されています。
 これは全身運動で、
 1)足腰の筋力をつけることとあわせて
 2)骨への負荷が骨密度の向上につながるというばかりではなく、
 3)歩くことでお腹が揺れ、それに関連する筋肉も鍛えられ、代謝があがります
 4)さらに足は第二の心臓といわれるように、歩くことにより筋肉で静脈が圧迫され、あたかもポンプのように押し出され心臓に血液が戻されるなど、血液循環が良くなり、体が温まり
 5)むくみが軽減されスムーズに体の隅々に栄養が行き渡り、好循環が促されます
 6)加えて、この好ましいサイクルは脳の活性化ともなります。

 膝などへの負担軽減のための水中歩行などは皮膚への水温刺激に加え、水圧による血行促進は脳への刺激はさらに増し優れた健康維持・増進策といえます。

 いずれにしろ、体の健康維持・増進には水中歩行を含め、歩くことがカギなんですね。日ごろの運動、ウォーキング・散歩は、高齢者の寝たきりの原因として、2番目にある病の予防に優れた方策といわれています。

 具体的な転倒予防策(転倒リスク回避策)は、
 1)歩行・バランスの維持・改善(ステッキなどをついた散歩、運動)
 2)下肢筋力の低下防止(散歩、運動)
 3)骨の健康管理(バランスの良い食事――カルシウムなど必要なミネラルやコラーゲン等を意識的に効果的に摂取)
 4)ヒッププロテクター(左右の大腿骨頚部(股関節部)をシリコンゲルなどの衝撃吸収材装置で保護し転倒時衝撃を緩和させるもの)の着用
などです。
 
 骨元気でいるためには・・・。
   
体の骨は、日々新陳代謝をくり返していますが、例えて鉄筋コンクリートの建造物といわれます。鉄骨がコラーゲン繊維、コンクリートがカルシウムです。年齢を重ねるに伴い骨を構成するカルシウム、コラーゲンなどの代謝が低下してきます。したがって、骨の隙間があき密度が低下し、もろくなってくるのです。その進行したもので、その骨の断面は鬆(す)がたくさん入ったように見えるために、鬆(しょう)の字をあてられた症状例です。
 閉経後の女性に多いのは、女性ホルモンの一種が関係しており、そのホルモン分泌量の減少に伴いカルシウムが溶出しやすくなり骨量が低下してきます。今日では、大豆に含まれるイソフラボンは女性ホルモンに似てカルシウムの溶け出しを抑制する働きをしていると実証され、その摂取の重要性を指摘されています。
 一方、骨を丈夫にするためにカルシウムだけをたくさん摂っても、あたかも糸瓜(へちま)で水をすくように、カルシウムが骨にならないこととなります。
  骨の合成にはコラーゲンが必要です。端的にいえばカルシウムとコラーゲンはコンビで骨の生成にかかわっているのです。正しい食生活に加え、カルシウムやコラーゲンを多く含む食材を日常意識的に摂りその代謝を促すことがとても大切です。体の各機能もやはり低下傾向にありますので、吸収率の高いものが望まれますね。なお、コラーゲンはビタミンCと一緒に摂るとコラーゲンの合成に効果が高いといわれています。
 豆腐、納豆、味噌、しょう油等からなる大豆を中心とする食物と(雑)魚、ヒジキ、ノリ等の組み合わせの和食を振り返りますと、本当に理にかなった食べものと、先人の知恵に感心しますね。


※<参考文献>
『生命力!』(三笠書房 1,400円 全222項):ウォーキングが生命力を高める効果があると、簡潔にまとめられています。
『55歳から駄目になる脳、伸びる脳』(角川書房 1,600円 全221項):脳を活性化させる秘訣を公開しています。
『寝たきりの予防と治療』(保健同人社1,800円 全269項)(財)長寿科学振興財団の12年度の事業研究テーマを取りまとめたもの:これからの高齢化社会における寝たきり予防の重要性と予防のための生活習慣、予防策が詳述されています。専門用語がたくさん使われていますが、医療・福祉関係者だけでなく広く一般の方に「健康寿命」を保ち続ける啓蒙書として通読していただきたいものですね。         (22.10.14更新)

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