国産ミドルクラスSUVの本命

 車名:マツダ CX-5

 試乗グレード:XD L Package 4WD(スノーフレイクホワイトパールマイカ)355万8600円(試乗車359万1000円)(税込)/25S L Package 2WD(ソウルレッドクリスタルメタリック)306万1800円(試乗車309万4200円)(税込)

 

2巡目の先頭打者

 2012年2月に登場した初代CX-5は「新世代商品群」とマツダが呼ぶ、新しいコンセプトのもとに作られたクルマの第一号だった。エンジンやトランスミッション、シャシーを「SKYACTIV」と名付けられた技術でまとめあげ、斬新かつ流麗な「鼓動デザイン」を身にまとった初代CX-5 が、マツダ車の水準とイメージを大きく引き上げた功労者だったことは間違いない。その後に続いた3代目アテンザ、3代目アクセラ、4代目デミオ、4代目ロードスター、そしてCX-3、いずれもが市場から高い評価を受けている。 そんなマツダの躍進を切り開いた「新世代」の2巡目先頭バッターとなる新型CX-5の出来栄えをリポートしよう。

若々しさから大人の味わい深さへ

 2代目となるCX-5は好評だった旧型のコンセプトや技術を基本的には引き継いでいる。このクラスのSUVはいま世界中で最も人気の高いセグメントの一つであり、全長4545mm、全幅1840mm、全高1690mmというサイズも高さがやや低められた以外はほぼ同じだ。なにしろ全世界で販売されるマツダ車の4台に1台はCX-5なので、さすがに大きな冒険はできないし、する必要もないだろう。

 

 

 ただ新旧を並べてみると、新型の方が彫りの深い顔立ちとロングノーズを手に入れたこと、そして若干ながら全高が下げられたことで、伸びやかな印象が増した。やや寸詰まり感のあった初代のデザイン上の弱点をうまく薄めている。デザインの伸びやかさ、という点では、より小さな弟分のCX-3が非常に優れているが、好評だった初代のイメージをキープしつつ、CX-5の2代目としてはいい落としどころではないだろうか。若々しさを躍動感のあるデザインで表現した初代に対して、2代目は「引き算の美」で大人の味わい深さを獲得したかった、というデザイナーの狙いは確かに成功しているように思える。

洗練を増した乗り味

 

 

 今回試乗に連れ出したのは、2.5リッターガソリン2WDと2.2リッターディーゼルターボの2WDと4WDの3グレードである。2.5リッターガソリンエンジンは非常にスムーズに回るようになった。昔からマツダのエンジンはどこかガサついた印象があったが、そのイメージを払拭する出来の良さだ。3000回転以上でのトルクの盛り上がりも好ましく、今度のCX-5はガソリンでも良いかなと思わせる。

 しかしディーゼルに乗り換えると、やはりその圧倒的なトルクの魅力に引き込まれてしまった。クリーンディーゼルにありがちな低回転でのアクセルに対する反応の悪さは、マツダ独自の低圧縮比エンジンと巧みなオートマの組み合わせで、ほぼ気にならない。乗り心地は相変わらず固めであるが初代ほどではない。ただCX-3が比較的柔らかな足を持っているのと比べると、こちらは機敏だが長距離運転では少し疲れそうな乗り心地ではある。4WDのリアサスペンションが2WDより、ややバタツキがあり市街地での軽快感を損ねていることも付記しておきたい。 初代CX-5はクリーンディーゼルで話題を集めた。そしてそれが出来の良いオートマとサスペンションに組み合わされたことで、当時の他の国産クリーンディーゼル、例えばデリカD:5や日産エクストレイルなどとは、走りの洗練さで大きな差をつけていた。クリーンディーゼル先進国の欧州車と比べて遜色のない走りに大いに感動したものだ。そしてこの2代目CX-5は欧州の列強たち、それもプミアムと呼ばれるクルマたちに優るとも劣らないレベルまで到達している。

 

 一方で正直に告白すると初代ほどの感動はなかった。確かにアクセラから搭載された新たな車両運動制御技術「SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICS」の第1弾「G-ベクタリング コントロール」は、荒っぽいハンドル操作をしたときの揺れ戻しの少なさにその効果を感じる。またレーダー・クルーズコントロールが0〜100km/hの間での追従可能になったこと、衝突回避ブレーキが車両や障害物に加え、歩行者の検知もできるようになったことなどは、旧型オーナーには響くポイントだろう。速度制限・進入禁止・一時停止の交通標識を認識し、ディスプレイに表示するシステムも採用され、安全性能は今日の水準の最前列に並んだ。遮音性能の向上も著しい。80km/hかと思うと実際は100km/hだった、ということが何度もあった。ただ音質自体は低めのドタっという音が聞こえてきて、トンという欧州プレミアムカーのいかにも高剛性感のある音の演出とは方向が違うようだ。 2代目の走りに初代ほどの感動はなかったが、それは初代CX-5が立てた道筋の正しさを証明していると言い換えることができるだろう。2代目は順当にそれを進化させているのは間違いない。

 

進化の大きさは内装にあり!

 初代CX-5の弱点は内装のクオリティだったと言われている。当時は欧州車、というかはっきり言えばVWの内装クオリティに追いついたのではないかと個人的には感じるほど、それまでのマツダとは一線を画するものだった。

 

 

 ただ、それがあくまでも実用車としての内装だったことは、今回の2代目のインテリアを見て改めて思ったことである。ダッシュボードの低い位置に水平基調のラインを作る最新流行を取り入れ、手が触れる部分の素材に柔らかいものを使用するなど、欧州プレミアム並みのインテリアを2代目は獲得している。あえて難癖をつけるとしたらパワーウインドウが運転席しかワンタッチモードが無いのはケチくさいし、そのワンタッチモードの感触が悪かったことくらいかもしれない。

 

 

 カタログカラーであることもあり、ついつい派手な白内装に目がいくが、黒内装もステッチの色使いなど細部にこだわりがあり、写真で見るより洒落ている。

 

 

 リアシートはサイズ相応に十分な広さを確保している。座り心地は格段に進歩を感じる、というより旧型がイマイチだったので水準に追いついたというべきか。旧型より低くなった天井だがシート位置を下げることで頭上空間をキープしている。

 

 

 ラゲッジルームはこのクラスとしては標準的だ。相変わらずタイヤハウスの張り出しの大きさが気になるが、走りを重視したリアサスペンションを持つゆえ、仕方ない部分ではある。

 

 マツダの「SKYACTIV」技術はエンジンやトランスミッション、サスペンション、それぞれの改良もさることながら、それらをまとめ上げる統合技術にこそ真価がある。統合技術、というと難しく感じるかもしれないが、要は乗り味のことだ。国産メーカーの場合。エンジン、トランスミッション、個々の技術は素晴らしいが、この乗り味が欧州メーカーに比べると見劣りすることが多い。味付けに力を入れるマツダの車はクルマ好きでなくても乗ればわかるだろう。いや何年か後にマツダ車から乗り換えた時にこそ気づくかもしれない。 今回のモデルチェンジでは予想を覆して価格はほぼ据え置きに近い。内容を考えると実質値下げではないかと思うほどだ。いずれにしても、このクラスのSUVを検討している人には本命としておすすめできるクルマであることは間違いない。

マツダCX-5スペック

 ボディサイズは全長4545mm×全幅1840mm×全高1690mm。搭載するエンジンは2Lと2.5Lのガソリン、2.2Lのディーゼルターボの3種類から選べる。駆動方式は2LガソリンがFFだけ、2.5Lガソリンと2.2LディーゼルターボはFFと4WDを選べる。トランスミッションは全てトルコン式6速ATだ。 新車価格は20S(2Lガソリン・FF)の246万2400円からXD L Package(2.2Lディーゼルターボ・4WD)の352万6200円まで。

 

マツダCX-5オススメグレードはこれ!

長距離向きはディーゼルだが 街乗り中心ならガソリン車で十分

 CX-5をはじめ現在のマツダ車はスカイアクティブDと呼ばれるクリーンディーゼルエンジンに注目が集まりがちだ。しかし、見過ごすことができないのは車両本体価格の高さ。例えば、CX-5ではガソリンエンジンの25S Lパッケージ2WD車の価格は298万6200円。一方ディーゼルのXD Lパッケージ2WD車の価格は329万9400円で、価格差は31万3200円。これはレギュラーガソリンと軽油に価格差あるとしても、取り戻すためには相当な走行距離が必要となることを意味している。これを踏まえて、オススメグレードを紹介しよう。  とはいえ頻繁にロングドライブをするという人には、やはりディーゼル車のXDがピッタリ。そして都心部に住んでいて、街乗り中心という人には安全装備のアイアクティブセンスを標準装備した20Sプロアクティブで十分満足できる。都心部に住んでいるが、夏は海、冬は山に行くというアクティブな人は電子制御により燃費の悪化を抑えたガソリン車25S の4WDをオススメしたい。

搭載エンジン 駆動方式 グレード名 メーカー希望小売価格(円)
2Lガソリン FF(2WD) 20S 2,462,400
20S PROACTIVE 2,689,200
2.5Lガソリン 25S Lパッケージ 2,986,200
4WD 25S 2,689,200
25S PROACTIVE 2,916,000
25S Lパッケージ 3,123,000
2.2Lディーゼル FF(2WD) XD 2,775,600
XD PROACTIVE 3,002,400
XD Lパッケージ 3,299,400
4WD XD 3,002,400
XD PROACTIVE 3,229,200
XD Lパッケージ 3,526,200

マツダCX-5のライバルはこれ!

トヨタハリアー - 価格は高いのに安全装備は見劣り

 

 トヨタハリアーは国内のSUVブームの火付け役となった車種。現在は2013年に登場した3代目モデルが販売されている。実はハリアーはレクサスRXに移行し生産終了となるはずだったのだが、ハリアーブランドの人気の高さにより、3代目モデルが登場したという逸話をもっている。  ハリアーの特徴は(妙に長い鼻先の好みは分かれるが)デザインの良さと内装の豪華さ。特にインテリアはブラックとディープボルドーと呼ばれる赤紫色を採用したツートンカラーとするなど上質感が漂っている。 搭載するのは2Lガソリンエンジンと2.5Lガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載している。  CX-5と比べると、ハリアーは価格が高い。2Lガソリン車の最上級グレードのプレミアムアドバンスドパッケージ4WD車で約36万円高。ハイブリッド車になると約106万円アップとなる。しかもハリアーはCX-5に比べて、プリクラッシュセーフティやレーダー・クルーズコントロールなどの先進安全装備は見劣りする。

 

トヨタハリアースペック

 ボディサイズは全長4720 mm×全幅1835mm×全高1690mm。搭載するエンジンは2Lガソリンと2.5Lガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムの2種類。駆動方式はガソリン車がFFと4WD、ハイブリッド車は4WDのみ。新車価格は2.0グランド2WDの279万7714円~ハイブリッドプレミアム アドバンスドパッケージの459万1963円だ。

スバルフォレスター - 悪路走破性は魅力だが少々古くなった

 

 CX-5のライバル車としてもう1台取り上げたのがスバルフォレスターだ。シンメトリカルAWDを搭載するスバル車の中でも、Xモードと呼ばれる電子デバイスを搭載し、最も悪路走破性が高いのがこのフォレスターだ。雪道や荒れた山道などのラフロードでタイヤが空転する直前に介入し、安定した走行を実現している。そしてアイサイトを搭載した高い安全性能もフォレスターの特徴だ。  現行型フォレスターが搭載するエンジンはスバル独自の2L水平対向で、自然吸気とターボを用意している。ターボエンジンの最高出力206kW(280ps)、最大トルク350Nmは魅力だが、CX-5のディーゼル車と比べると、最大出力は勝るものの、最大トルク420Nmと下回り、燃費性能では圧倒的な差を付けられている。2012年の登場から4年が経過し、フルモデルチェンジの足音が聞こえ始めているのも事実だ。ラフロードによく行くので、高い悪路走破性を求めるというユーザーにはオススメしたい。

 

スバルフォレスタースペック

 ボディサイズ全長4610mm(一部グレードは4595mm)×全幅1795mm×全高1715mm。搭載するエンジンは2L水平対向DOHCとターボの2種類。ミッションは全グレードCVTを採用し、2L水平対向DOHCエンジン搭載車にのみ6MTを設定。駆動方式は全車4WDのみとなる。新車価格は2.0iの214万9200円から2.0XTアイサイトの312万8760円となっている。

今回試乗した車はこちら


マツダ CX-5 4WD 2200cc
XD L Package クリーンディーゼル

総額 3,645,000円

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マツダ CX-5 2WD
25S L Package ガソリン車

総額 3,192,000円

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