ちょっとした、よくある疑問 お答えします。

店長が調べて行きついた答えとは・・・参考にしてください(^o^)


質問1:版画の画面の下に鉛筆で、サインと1/30とかA.P.とか書いてありますが、
     意味を教えて下さい。

質問2:版画の適正な値段や、価値というのは、基準があるのでしょうか。
質問3:リトグラフとかシルクスクリーンなどの技法によって、
    版画は値段は変るものなのでしょうか?

質問4:オリジナル版画って?:最近、すごくたくさんのエディション(枚数)を刷った版画を
    「オリジナルリトグラフ(シルクスクリーン)」として売っているのをよく見かけますが、
    これらは本物の版画なのでしょうか。

質問5:オフセット印刷でなく本当のリトグラフだと見分ける方法があれば教えて下さい。
質問6:そもそも「オリジナル版画」ってなんですか?



質問1:版画の画面の下に鉛筆で、サインと1/30とかA.P.とか書いてありますが、
     意味を教えて下さい。
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回答・解説

版画は基本的に複数枚を刷る物なので、その作品が何枚刷られたかなどの情報を書く
決まりごとがあります。
まず、画面の一番左端に1/30とか、20/50とか書いてあるのは、分母が「刷られた枚数」。
(後述するAP、PPなどの枚数は計算に入れない)
つまり、1/30だったら、30枚刷ったうちの1枚目、20/50だったら、50枚刷ったうちの20枚目
という意味です。
ただし、これは刷った順番とか、刷りの出来不出来とは全く関係がありません。
1/30と書かれていても、最初に刷った1枚目とは限りません。

A.P.とは、(Artist 's Proof)、つまり「作家管理分」の意味です。
P.P.とは、(Printer's Proof)、つまり「刷り師管理分」の意味です。
また、稀にH.C.(Hors Commerce)というのがありますが、これは「非売品」の意味です。

この3つは通常、作家、刷り師、版元の保存用として刷られ、エディションの10%程度の
枚数で刷られるそうです。

もちろん、これはあくまで版画創成期からの慣習だそうです。
現代では刷り師に刷りを任さず、作家自身が刷るケースが多いので、その場合は、
当然「P.P.」(刷り師管理分)は存在しません。
                                                              


質問2:版画の適正な値段や、価値というのは、基準があるのでしょうか。
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回答・解説

版画にせよ絵画にせよ、「適正な値段」など存在しません。(キッパリ)
絵画も商品である限りは、市場の原理によって値段が付けられます。
人気のある作品なら高い値段、そうでない場合は安い値段が付くでしょう。
しかし、絵とは後々時代の変化とともに、その評価も変わっていくものですから、
この作品が「本当に」価値があるかないかなどは、誰にも言えません。

時代の気分や流行で、必ず絵の値段は変化するでしょう。
(もちろん、そんな「時代」や「流行」にも左右されない普遍的な作品が、
後世「芸術」と呼ばれて、ルーブル美術館など飾られていくのでしょうが・・・・。
そして、時代にとらわれずに見抜く事のできる人が、優秀な評論家とか
優秀なコレクターと言われる??・・・。)

したがって、この質問に対しては、版画にしろ絵にしろ、
「自分の目で見て」「自分の価値で」購入する。
というごく当たり前のアドバイスくらいしかできません。
絶対に将来の値上がりなど期待して購入してはいけません。

バブルの時代、日本人は自分の目と自分の価値を使わずに、高額の絵画を買いあさりました。
結果は・・・、ご存知ですね。
                                                              


質問3:リトグラフとかシルクスクリーンなどの技法によって、
     版画は値段は変るものなのでしょうか?
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回答・解説

「シルクスクリーンはリトグラフに比べて安い」とか、「銅版画がリトグラフよりも高い」とか、
または「油絵は版画より価値がある」など、「技法」によって絵の価値が変わるなどとは、
まったく根拠のない話だと思います。

確かに技法によって「作品にかける手間や時間」は変わってくるでしょう。
作品制作にかかった「時間」と作品の「芸術的価値」は全く関係ないと思います。
したがって絵の値段とも関係無いはずです。

たとえば、鼻歌を歌いながら5分で制作した作品でも、名作は名作。
10年がかりで作った作品でも、駄作は駄作なのですから。

さて。上に述べた事柄を大前提として話しを続けると
版画は一点ものの油絵や日本画などよりも、何枚もエディション(枚数)を刷ることができる
という理由からでしょうか、値段は安めなのが一般的です。(これもおかしな話ですが)

特に、日本では、日本画>洋画>デッサン>版画
などと、馬鹿げたヒエラルギーが画壇や絵の値段大系の考え方に未だに残っています。
油絵の作家の版画の値段よりも、版画を主として制作している「版画家」の版画の方が、
全然値段が安い・といった、摩訶不思議な現象は、このヒエラルギーの考え方に、
よるものだと思えます。
いわば専門家の版画作品の方が値段が安い、というのも少々変な話ですが・・・。
でも最近は、油絵などはとても高額で買えないが、部屋にポスターではなくちゃんとした絵を
飾りたい!・・・という方も多く、版画家の作品がとっても人気のようです。
なにせ、若手の版画家の小品作品ならば、一般に2〜3万円*で買うことができるのですから。
我々一般庶民はとても数百万の絵画など買えませんし、とはいえポスターではなくちゃんとした作品
を飾りたいのも人情ですから、これは当然のブームと言えるでしょう。

複数枚を刷ることによって、一つの作品でも沢山の人とコミュニケーションできるのは
版画の良いところでもあります。

また、たくさんのエディションを刷っている版画の場合、リトグラフよりシルクスクリーンの方が、
制作時間が短くコストが安い、量産がきく・・・などと言う事もありますが、
これは一般的ではありません。
先程述べたように、基本的には作品の技法や手間や時間と、価格との間には関係はない、
と覚えていて下さい。

*:当店では絵画をもっと身近にという事で、一般よりマージンを下げて販売しています。
                                                           


質問4:オリジナル版画って?:最近、すごくたくさんのエディション(枚数)を刷った版画を
     「オリジナルリトグラフ(シルクスクリーン)」として売っているのをよく見かけますが、
     これらは本物の版画なのでしょうか。
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回答・解説

「版画」の定義は、版の形式の話で説明した通り、現代では銅版、木版、リトグラフ・・・などだけではなく、
コピーワークやオフセット印刷も版画の技法として使う作家が沢山います。
ですから、「本物の版画」とは何か、について色々な議論がある様です。
質問の趣旨はおそらく、「本当にリトグラフかどうか良くわからない」という事だと思いますので、
説明はそこに絞って書きます。

印刷に比べるとリトグラフの刷りは大変手間がかかりますから、常識的物理的に考えて、
何千枚ものエディション(枚数)を刷っているものは、御購入前に一度、オフセット印刷ではないかと、
疑ってかかる必要があると思います。

リトグラフや銅版画の本当の刷りであれば、せいぜいエディションは2〜300枚くらいのものです。
ただし、シルクスクリーンは、製版、刷りともリトグラフや銅版画に比べると時間がかからないので、
1000枚以上のラージ・エディションでも「本当にシルク?」などと疑う必要はないと思います。

自称「リトグラフ」の中には・・
単に作品の原画を写真に撮って、それをコンピューターなどで四色分解し、オフセット印刷したもの
網点が目立たないように、さらにその上に一版か二版、シルクスクリーンを刷っているもの
インクジェットプリンタで版画用紙に印刷してあるものそれを「リトグラフ」と称して
売っているものも見かけます。

別に私は、オフセット印刷やポスターがいけないとは申しません。
当店では関係なく、販売しています。
もし、それが気に入って、部屋に飾りたい!と考えたなら。
また、価格が自分にとってそれだけの価値があると考えるのならば。
迷うことなく購入すれば良いと思います。

また、オフセットやコピーを使って表現をしている現代美術の作家の方もたくさんいます。
彼らの場合は、版画の複数性や自分の表現をきちんと考えた上でそうしているのですから、
れっきとしたオリジナル版画として認められています。
また、この場合はきちんと「オフセットプリント」とか「コピーワーク」と明記しているはずです。
要は、オリジナル版画とは、技法ではなく作家の制作のプロセスの問題と思います。
なぜリトグラフでなくオフセット印刷で、わざわざ「リトグラフらしく」作るのか。
・・・これはもちろん、時間とコスト節減のためであることは言うまでもありません。
本当に全部手作りのリトグラフがどんなに手間がかかるかはわかると思います。
版画の版について参照

また、版画の技法(木版、銅版、リトグラフ、シルク・・・)の中でも、リトグラフというのは、
実際にどんな技法でどんな画肌(マチエール)を持っているものなのか、知っている人が少ないです。
でも、「シャガールのリトグラフ」「ミロのリトグラフ」などと、版画の技法として
「リトグラフ」の名前だけはご存知の方は多いと思います。

「オフセット印刷」というと何となくポスターのようなので、「リトグラフ=版画」と言って
販売しているのではないか・・・と推測されます。

もちろん、版画の値段に書いた通り、手間と時間は芸術的価値と何の関係もありませんし、
コピーやオフセット印刷も、版画の技法として使っている作家もいるのですから、
最初からオフセットプリントとかインクジェットプリント・・・などとはっきり明記して
販売すればいいと思います。
でも、はっきり明記せず、はっきり説明せず、「これはリトグラフだ」といって売っている所が
一部あるのが残念ながら現状のようです。

版画をもっと身近に楽しむためにも、少しだけ版画の知識について学んでみてはどうでしょうか。
                                                              


質問5:オフセット印刷でなく本当のリトグラフだと見分ける方法があれば教えて下さい。
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回答・解説

四色分解印刷の場合。

作品をよく見て、「網点」(雑誌などルーペで見ると、四色の点々で印刷されているのが確認できる)、
が見えれば、それはおそらく、四色分解の「印刷」です。

中には、画面下の作家のサインまで、鉛筆の線らしく見えるよう印刷したものまであります。
サインが本当に鉛筆で書かれているか、良くチェックしましょう。

そのほかにも、四色分解で印刷した上に、網点が目立たないよう、
1版か2版だけシルクスクリーンなどで刷りを重ねてあるものもよく見かけます。
この場合も、画面をよく見ればオフセット印刷の「網点」が見えるはずです。


インクジェットプリンタで印刷したものの場合。

最近では、原画を四色分解して、パソコンにつかうインクジェットプリンタで版画用紙に印刷したものを
「リトグラフ」と言って売ってるものまであるそうです。
ここまでくると・・・
これはオフセット印刷と違って網点が目立たないので、見分けるのが少々厄介です。

特徴としては、
絵の細部がややぼけてピントがあっていないような感じ。
これはインクジェットの特徴、(インクの噴射口から印刷しようとする紙までの距離がある為、
正確に印刷位置を制御できない、どこのインクジェットメーカーも苦労している)

版画用紙の紙の目がぼこぼこしている。
リトグラフでも銅版画でも、版画である以上、プレスの圧力で紙の目はつぶれますから、
あまりに紙の目が残っているのは不自然です。
活字にして説明するのは、ちょっと難しいですね。
一番良いのは、見る目を養うこと!

もし皆さんが本当にリトグラフか、オフセット印刷かを見分けたいと思うならば、
版画を主として制作している、版画家の方の作品を、一度でも見てみるのは如何でしょうか。

版画家の方々の展覧会を見に行くのもいいと思います。

版画とはどういうマチエール(画肌)を持っているのか。
版画でどういう表現ができるのか。
などなど誰でもわかってもらえると思います。

また、現代美術の作家の方のオフセットやコピーワーク作品を見て、
「作家のコンセプトとしてオフセットやコピーを使うとはどういうことなのか・・・・」
というのを知ることも必要でしょう。
現代美術の苦手な方でも、少なくとも、原画をそっくりに複写することとは意味が全然違う、
ということはわかると思います。

そうすれば、網点印刷やインクジェットプリンタで作られた、自称「オリジナルリトグラフ」を見たときに、
必ず違いがわかると思います。
                                                          


質問6:そもそも「オリジナル版画」ってなんですか?
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回答・解説

ある版画家がこう発言しました。

版画は、製版、刷りの工程も含めての、絵画制作である。

オリジナル性とは、技法ではなく作家と作品の問題であり、プロセスの問題である。
作家が版画を作るコンセプトが版画のオリジナル性と深くかかわっている。

大量生産のためだけに、作家のコンセプトを反映することなく、作品の原画を写真に撮って、
それを四色分解し印刷したものは、「オフセットプリント」「インクジェットプリント」などと明記するべきで、
また、オリジナル版画とは区別するべきである。


作品を制作するために、作家が版画工房と共同で制作したりすることがあります、
作家が少なくとも校正刷り(版画工房が最終的に作った試し刷り)を見て
確認をしたものでなくてはならない。
さらに、刷られた版画作品に作家がすべて自筆でサインを入れていなければ
「オリジナル版画」とは言えない。という意見です。

自分もそう思います。

オリジナル版画について、日本現代版画商共同組合がガイドラインを出しているので、
そちらもぜひ参考にして下さい。 抜粋文は下記に記述しました。

プロセスとかコンセプトとか、難しい事を書きましたが、簡単に解説。

油絵作家やデザイナーが、「自分の作品を版画にしてみたい!」と考えたとします。
でも、版画の技術は習得するのに時間がかかりますし、設備や材料も一から揃えるとなると
大変ですね。
そこで、版画工房に制作や刷りを頼むとします。

(余談)
版画を作ることができるのが、大学などで版画を専攻した知識のある人だけとか、
版画だけを作っている版画家の人だけ、などというのも、つまらなく、版画の世界が狭くなるだけです。
版画工房での制作を、色々なジャンルの作家の方が経験してみるのは大変良いことだと思います。

さて、この場合は、作家の方が製版、刷りすべてをやらないからオリジナル版画
ではないのでしょうか?
もし、単に機械的に作家の方の原画を写真にとって、それを四色分解して印刷で作品をつくる、
というプロセスをふむならば、そこには全く作家の方のコンセプトを版画作りに生かせません。

でも、作家の方が「版画をつくりたい!」と思うからには、
銅版画でいつもと違った線を描いてみたい、とか、リトグラフの解墨で調子を描いたら、
どうなるだろうかとか、「いつもの自分の作品と別な顔のモノを作ってみたい」とかいう、
何かしらやりたいコトがあるはずです。

このような構想(コンセプト)が、「版画のオリジナル性」だと考えます。

こうした作家の構想(コンセプト)を、版画工房のスタッフが自分の経験や技術をうまく生かして
制作に寄与することができたならば、作家のオリジナル性がプロセスに生かされたのです。
もし、技法として作家がオフセット印刷を使っていようが、コピーをつかっていようが、
それはオリジナル版画と呼んでいいと思います。

注)日本現代版画商共同組合のオリジナル版画のガイドライン
オリジナル版画の定義  抜粋
 (1)版画を制作する目的をしっかり定め、作家自身が下絵を描き、作家が木版・銅版・石版・孔版
   その他の版を描き、自刻(製版)したもの。
 (2)作家自身が自らの手で刷るか、機械(プレス機)で刷った作品、もしくは作家の監督下で
   職人がその指示のもとに刷ったもの。
 (3)完成した作品の1枚1枚を作家が容認したもの、もしくは職人が製版し刷り上がった作品を
   作家自身が容認したもの。
 (4)完成した作品の版面左下に限定番号(エディションナンバー)を、右下に自筆署名したものを
   原則とする。番号とサインの位 置については、他の場所でも可とする。
 (5)あらかじめ決定した限定部数を刷り終えた版上には、斜線1本か×印を入れ、
   あるいは版に明白な穴をうがつなどし、原版を廃版とする(これをレイエという)。
    レイエは、海賊版や作家の監修をもたない刷りものが市場に出ることを、未然に防ぎます。

    以上の主な条件のなかでも、その版画がオリジナルなものかどうかを判定する
    最も重要な要素は、 ・の「作家自身が<版画を制作する>という目的と意志を明確に持って、
    版の創造にたずさわったかどうか、この点に集約されます。

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最後に
  どうぞこれを参考に、良いお買い物をなさって下さい。
  くどいようですが、自分の気に入った作品を、納得できる価格で購入するのが1番です!
                                                              

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