NATIVE SESSIONS: BEHIND THE SCENES OF MOBIUS FINAL FANTASYレポート


5月26日に六本木ヒルズ森タワー内のYouTube Space Tokyoにて行われた 「NATIVE SESSIONS: BEHIND THE SCENES OF MOBIUS FINAL FANTASY」に池部楽器店一の光の戦士であると自負するパワーレックスタッフが行ってまいりました!



Native Sessionsとは?

世界中のアーティスト、ミュージシャンが毎日使わない日はないであろう世界最先端の音楽ソフトウェアデベロッパーNATIVE INSTRUMENTS(ドイツ)がベルリン、ロンドン、ロサンゼルス、東京で開催するイベントです。NIユーザーやエキスパートや世界の音楽コミュニティーが一堂に集まり、KOMPLETE / TRAKTOR / MASCHINEを使う音楽制作の未来を探求し、イベントでは毎回、最新のテーマを取り上げ、ワークショップやディスカッションを行い、NIの製品を使う音楽制作やDJパフォーマンスについての価値ある情報交換を行っております。

MOBIUS FINAL FANTASYとは?

FINAL FANTASYシリーズで有名なスクウェア・エニックスより発売されたスマートフォン用のゲームです。 FINAL FANTASYシリーズの世界観はそのままに、同社ならではの革新的な技術力で据え置き機と変わらない壮大かつ美麗で圧倒的なグラフィックス、ストーリー、そして音楽でユーザーをFINAL FANTASYの世界に没頭させる超大作です。

NATIVE INSTRUMENTSといえば、もはや音楽ソフトウェア界のデファクトスタンダードであり、音楽制作には絶対無くてはならないソフトウェアを多数リリースしています。そんな同社がお送りする、プレミアムイベント「NATIVE SESSIONS」は楽しみにしている方も多いことと思います。私ももちろん楽しみです!

そして、今回のゲストはなんとSQUARE ENIXのコンポーザー 鈴木光人氏と、サウンドデザイナーの小森雄介氏! 近年の鈴木光人氏の代表的な作品といえば、FINAL FANTASY XIII-2、LIGHTNING RETURNS : FINAL FANTASY XIIIやスクールガールストライカーズ。 どれもやったことがある&聞いたことがある大作ばかり・・・そんなスゴイ方の制作手法を聞けるとは、これはまたとないチャンス!

それにしても来場者・・・ハンパなく多いです(汗)


あまりにも人気すぎてステージへ近づくことすら困難ですが、どのモニターで見ていても音の臨場感は変わらない素晴らしいPAです。

INTERACTIVE SOUND - YUSUKE KOMORI (SQUARE ENIX)


サウンドデザイナーの小森雄介氏の登場です!


プロジェクト起動中の画面・・・外でこれを見るのはなんだか新鮮ですね(笑)



こ、これがMOBIUS FINAL FANTASYのムービーのプロジェクト画面・・・!


ムービーに登場する巨大な生物から発せられるうめき声のようなもの。これはスタッフのアクビを思い切りピッチを下げて制作されたものだそうです。そして、こういった巨大な仮想生物から発せられる声をデザインするときのポイントとして挙げていらっしゃったヒントがとても印象的でした。



小森氏「大きなモノ(から発せられる音)は、定位がどこにあるのかわからないようにしておくと効果的。ロー(低音)は指向性が弱くどこから出ているかわからない。例えば雷の光ったあとのゴロゴロという部分もやはり定位がどこにあるかわからない。しかし、音を体で感じる為、人を不安な気持ちにさせます。で、"(音が)低いもの"は、つまり"(指向性が弱い為定位がわかりづらく、耳で聞くのではなく体で感じる音だから)」 怖いもの。"」


なるほど・・・!そういえばウーファーってどこに置いても発生源がわかりにくいですね・・・それに、人間以外の動物達も本能的に低い声を出す他の動物や自然現象を恐れています。本当に目からウロコでした。これから何枚落ちるかわからない予感がします(笑)



その他にも登場人物がマスクをして喋ると少し篭ったような声になるリアルタイム処理が行われたり、


音に特殊なフィルターをかけることによって、プレイヤーが攻撃したときに、かかっているBGMに変化が加わり、攻撃がヒットした際の気持ちよさに繋がることが解説されます。




普段ゲームをしていて、あまりにも自然すぎてなかなか気づかないこういった変化もプロの技術によって入念に作らているのですね。


そしてついに・・・


鈴木光人氏の登場です!
何度も聴いたあの音楽をつくった方が目の前に!感動です・・・

早速公開されるプロジェクト!


音楽制作をされている方は皆思うであろう、聴いてほしいけど見せたくない自分の曲の全部だと思います(笑)


音源紹介
ソフトウェア・ライブラリの母艦になっているのは、やはりNATIVE INSTRUMENTSのKONTAKT。
その中でも一際目立つのは、金管楽器ライブラリのBRASS SOLO & ENSEMBLE。
このライブラリはプロのブラス・ソリスト達の演奏を、細部にまでこだわって録音されたもので、まさに究極のリアリズムを追求したブラス・ソロ音源です。デモを聴いていただければわかりますが息を呑むような美しさで本当に世界最高水準のライブラリであると疑いようがありません。

このような素晴らしいライブラリを手に入れられると、CDまるまる一枚つくりたくなるぐらい創作意欲が掻き立てられ、モチベーションが上がられるそうです。実際に音源から曲が出来上がることも・・・と。


管弦のみならず、世界中のありとあらゆるジャンルのライブラリがズラリ



DAWはCubaseを使用されているとのこと。 抜群の安定性で信頼性も高く、打ち込みもしやすい当店でも一番人気のホストアプリケーションです。 何よりユーザーの分母の数が半端ないのでトラブルに遭っても対処法が見つかりやすいのもメリットだと思います。

パッドはソロで書き出されているそうで某映画音楽作家の名前も出されておられましたが、たったひとつの音で説得力のある世界観を出せる、そういった音が出せる音源は重宝されているように感じました。

そして次はいよいよ具体的な「仕事」の話に。
いま目の前にいらっしゃる方は、間違いなく世界最先端のゲーム・ミュージックシーンを支える方。そのフロントラインに立たれている方の「仕事」。気になりますね。ここから先は鈴木氏の言葉にフォーカスを絞ってお送りします。

仕事の流れについて


コストについて
鈴木氏「仕事を受けるにあたって、一ヶ月にどれぐらいの曲数を作るのか、自分の工数であったり、サウンドデザイナーの稼働数であったり、エンジニア、ボーカリスト等の人件費も含めてわりとざっくりと、その世界観をみて、どういう方向性でいくか大体最初にあたりをつけます。もちろん途中で変わることもありますが、"良い意味で変わっていく"と解釈します。」

「例えばパーカッションを録る予定が無くなったり、かわりに他の楽器になったりすることもあります。 チームとの話し合いで、全体はこういう意見だが自分はこうしたい、等のディスカッションをチームと行っていきます。ここまでをざっくりみたのが『コスト』です。」

制作環境について


開発チームと統一
鈴木氏「これは外部エンジニアとの環境をすべて一緒にしている、ということです。なぜかというと、曲を制作している間、外部エンジニアがミックス作業をし、僕が違う曲を書く、こういう同時進行が何個もあります。作業を分けることによって余計なことを考えず、書くことに集中できるんです。とはいってもDAWで書いた段階でミックスまですることもありますし、そこはまぁ臨機応変に対応ですね。」

エンジニアへのデータ受け渡し方法
鈴木氏「WAVEで書き出すことによって誰に渡しても、どんなDAWでも、同じデータを再現できるのでCubaseのマルチバウンス機能をよく使っています。ここにはとにかく時間をかけたくない。ここに時間をかけるなら、次の曲を書きたい。いや違った、書きたいというか、書かないと間に合わないんです。次にこれをサーバーへアップロードしてエンジニアとやりとりをします。手数工数少なく、かつ確実に。蓄積されたノウハウと環境と言えます。」

「結局便利になってもこだわる部分が出てきたり、細かなことをやりたいと思うとやはり時間がかかる。どれだけコンピュータが高性能になっても、ソフトウェアシンセの音が良くなっても、一曲つくるのにこれだけ時間がかかるんだ。この環境で10年やっていてもそう思います。あぁ、制作って面白いなぁと。辛いけど楽しい、楽しいけど辛いと思うところでもありますね(笑)」

「だからそういう意味では、『今月末が締め切り』と言われれば、それまでは必死でやる。そういう"締め切り"というのがある意味でのブレーキになっている。これが無ければ延々とやってしまうでしょう。そしてリリースされたら、すっぱり忘れて次に行きます。」



制作環境について
鈴木氏「制作環境はそれぞれ近ければ近いほどいい。誰がどこに行ってもスムーズに仕事ができるような。それこそ僕が小森のデスクへ行ってもね。」

ゲーム音楽制作の特徴1


カットシーンについて
鈴木氏「特徴というか、メビウスを例にすると、まず尺が決まっているわけですね。映像が出てこない限りは、音楽も出てこない。カットシーンはお題とタイミングが命なので。」

一筆書き系
鈴木氏「これはつまり即興的に書いたもので、鍵盤に向かってしっかりつくることもあれば、 カットシーンのムービーが出てきた時点で見ながら作ることも多く、そういうときはあまりエディットしないです。ただ、こういうシーンだからこそ出来ることで、普段はもうガチガチにコントロールしてます。まぁ並べた時のバランスと同時に、ユーザーにはあまり見えない要素、方法論の一つかもしれません。」

素材系
鈴木氏「1回ピアノを弾いてみて、足りなければパッドの音を足したり、音符ではなく音色でバリエーションを作っていく。ただし、この手法は本当に成功するか失敗するかでマルかバツか、だけど失敗したやつも"素材"として残しておく。リアルタイムでサウンドをエディットしたりするので、なかなか譜面とかにできないような音なんだけど。目的をもたずにシンセを弾いて録音したやつを組み合わせて一曲にしたりとか、棒を叩いてる音であったりとか、人の声も入りますし、クラップとかも、どさーっと持っていて・・・これもまぁ、マルかバツかです(笑)成功するかどうかで・・・そうやっていくとどんどん素材がたまっていく、これが僕の素材のライブラリ。市販のサンプル素材ではなく、自分で作ったオーディオ素材というのがポイントです。DAWの進化でピッチはどうにでもなりますからね。」

ゲーム音楽制作の特徴2


ミックスと効果音とのバランス「低・中・高」について
鈴木氏「ゴールが決まっていて、そのためのBGMなんですね。で、決して自分が好きな音楽を日々つくっているわけではなく、いかに登場人物たちの感情や景色を補佐したり、勇ましい感じをだすか、ここに紐付いてくるわけです。で、そこは音色と音符の並べ方です。次はやっぱり効果音とのバランスになります。低・中・ 高。僕が好きなライブラリがあって、SPITFIREとかが好きなんですけど。まぁモロにハンス・ジマー系の音といいますか。この空間が全部埋まるぐらい一発ドカーンといったら、もうそれでいいんですよ。もう他に入る隙間がないっていう。でもゲームの中で使いたいから、使ったときにどうするかというと、ミックスの整理になるんです。で、その後の調整っていうのが効果音との整理になって、小森の方で爆発音を出したら、僕の方で爆発みたいなキックを出すとぶつかるんですね。で、これをどうそらすか、というのをやります。これを低とするなら、中といったらやっぱり弦だったり、さっき言ったパッドとか全体を支配しているので、これをどこに逃がすのか、プラスではなく基本マイナスで考えるわけです。」

「普通に音楽のバランスで考えても良いミックスっていうのは上から下まで円に描けるように、キックがあって、ベースがあって、ピアノがあって、ハイハットがあって・・・そうやって分析していくと、だいたいこう音の逃し場っていうのがあるんで、そのへんを考えながらミックスしたりだとか・・・だからね、自ずと音数は減るんですよ。もしくは少なく聴こえる。やっぱりたくさん入れるとゴチャゴチャするっていうのがあるから、意識的に減らすことは多いですが・・・ここは日々勉強って感じですね(笑)ただしPVなどはアタックとインパクトが命なので、基本は派手気味を心掛けていて、また考え方が違うんですよね。」

音の配置、音量変化による距離感、広がり
鈴木氏「これは音楽でももちろんそうなんですけど、非常にシンプルな話しで、"デカイ音"は、"近い音"なわけですよ。小さい、こうバイオリンの最後の" キーン"って音とかは、すごい遠くにいくわけですよ。全体的に。で、そういうときに2Mixで、どう音量変化をつけるか・・・ここがキモだと思っています。ダッキング効果とか好きなんですけど、もうどうぞどうぞ、どんどん下げてくださいって。効果として良ければBGMは無しになっても良いと思ってます。」

複数バージョン
鈴木氏「メビウスについては、一個のモチーフから広げている曲がすごく多くて、ひとつのメロディーからどんどん曲が増えていってる。プレイされている方ならわかると思いますが、バトル曲が全部同じメロディで、そこからどんどん数を増やしていっています。さすがに僕一人では手に負えない感じになってきているので、社内のスタッフにお願いしたり、外部に頼んだりだとか、そうやってどんどんアレンジを増やしていくんですが、SNSとかで『今回のアレンジは良かった!』というのをみると、やっぱり"アガ"りますよね。じゃあ、次はこういうジャンルを増やしてみましょう!みたいな。そういうのが日々のモチベーションになっています。」

ゲーム音楽作家を志す方々へ


固定概念を持たずに柔軟な姿勢で
鈴木氏「ゲーム音楽は各社それぞれ特徴があります。打ち込みの曲があったりとか。僕は昔聴いてたような結構ピコってる音が好きだったりとか色々あるんですけど。スクウェア・エニックスといえば、入社する前まではストリングスっていうイメージがあって、ちょっとロックっぽいイメージもあったりとか・・・でも僕はそれまで意識的にそういうのはつくったことがなくて、つくれるつくれないとかじゃなくてやっぱりそういうイメージがあったんですよ。そうやって、"スクウェア・エニックス"はこういうイメージって決めて、作り始める前からそういう風にやっちゃうと、同じ答えしかでないわけですよ。スクウェア・エニックス=こういう音楽っていう。 ゲームという前提があって、チームがいて、その中でお互いの意見を言い合うなかで変化球を打ち込むときもあるんですけど。そうするとむしろ良かったり、何かしらの手ごたえを感じる時が多々あるのですが、そういうときは本当に嬉しいですよね。だからとくに狙ってやるわけじゃないのですが、結果そうなることもあるんです。ここを崩さなければ大丈夫という方法論もあって、もちろんそういうのも入れたりしつつ、ちょっと毒も入れておくか、、と。」

「今は機材もこう進化してきていて、ソフトが手軽に買えるようになって・・・買って満足して曲が完成しない、という人が非常に多いんです。で、もちろん趣味でやる分には全然良いのですが、ゲーム音楽作家を志す方は曲を最後までつくる、というのがとても大事です。短くて良いんですよ。一分でも二分でも全然良いので、つくって、完成して、それを人に聴いてもらったりとかして、自分を客観的な目から見て、且つ人からの意見があって、そうすると完成した曲を聴くと自分で何か足りないな、という部分が出てくるんですよ。で、そうすることによって次に生かすことができたりとか、あるんじゃないかな、と思います。今は簡単にファイルもアップ出来ますしね。インプットがあったら、アウトプットもあったほうがいいよね、そんな感じです(笑)学生さんとかによく話すのは、必ず曲最後までつくってね、完成したら聴かせて、って。どんな言葉を交わすよりも、それが一番の共通言語、トーン・コミュニケーションだと思ってます。」


いかがでしたでしょうか。
私はFINAL FANTASYシリーズの音楽を制作されているアーティストの哲学に触れることができとても貴重な体験ができた・・・と心から感じました。 類まれなるセンスと技術はもとより、厳しいスケジュールのなかでも楽しさを忘れない音楽を愛する心がファンを虜にし続けているのかもしれませんね。

そして、未来のFINAL FANTASYの音楽をつくるのは、今これを読んでくださった貴方かもしれません・・・汝にクリスタルの導きあらんことを!

※楽天市場の仕様上、外部へのリンクは行えませんがゲームアプリ本体は、App Store及びGoogle Playよりダウンロードしていただけます。



お問い合わせ

池部楽器店 パワーレック
池部楽器店 パワーレック鍵盤堂
03-5456-8809
reckb_rakuten@ikebe.co.jp




Author Power Rec, Ikebe Musical Instruments, May 2016
記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。