こころとからだの健康タイム・対談編28-3

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 このコーナーでは、エヌ・ピュア社長・鳴海周平が各界を代表する人生の達人との対談を通して、「こころとからだの健幸」に役立つ様々な情報をご紹介しています。毎日の健幸にお役立ていただけましたら幸いです。

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Vol.28 ゲスト:青木宏之先生 【3】

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何事も「方向づけ」が大切

青木 効果的に瞑想を実践していただくために「方向づけ」という、とても大切なものがあります。別の言い方をすると「目的意識」ですね。どんな意識の方向づけをしてその事を行なうか、ということでベクトルを定める必要があるわけです。これは瞑想に限らず、武道においても書道においても一緒ですが、私は「天・地・人々・ワレ一体」という方向づけを、最も重要視しています。
人間はもともと自然の一部ですから「天・地」と一体になること、そして自然の中で人々は皆つながっていますから「人々とワレ」も一体なわけです。「気の遠当て」も、人々とワレが一体であるから、意識の交流が可能となって、実現する技です。こうした実感を、理屈ではなく身体で理解するためにも「方向づけ」はとても大切ですね。

鳴海 「人間は自然の一部である」という考えに基づくと、瞑想というのは、いちばん身近にある「自分という自然」に向き合うことなのかもしれません。「天・地・人々・ワレ一体」という方向づけをして瞑想をすることで、いっそうの実感が得られそうですね。

青木 言葉の力も「方向づけ」に大きな影響を与えます。
道場で身体の力みをなくすための体操をしている時には、全身をクニャクニャに動かすのですが、この時「私の身体は硬ーい、硬ーい」と唱えると、すぐに柔らかい動きが出来なくなってしまいます。逆に身体の硬い人が「柔らかーい、柔らかーい」と唱えると、すぐにクニャクニャになってしまいます。この実験をすると「たったひと言で身体がこんなに変わるんだ」と皆さんとても驚かれます。瞑想の時も「天・地・人々・ワレ一体」という言葉を発すると、意識がそういう方向へ導かれますね。

鳴海 言葉ひとつで意識や身体が簡単に変化してしまうんですね。「ありがとう」という言葉をたくさん言っていると、そう言う(「ありがとう」という言葉を使うような)状況が訪れるというのも、言葉の力を活用した「方向づけ」の結果かもしれません。
エドガー・ケイシーという方が「人は、喋った言葉と必ず出会う」と言っていたそうです。「必ず出会う」のであれば、良い言葉しか話せませんね。(笑)

「天・地・人々・ワレ一体」を体現する活動─天真奨学会

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鳴海 青木先生は、海外でも広くご活躍をしていらっしゃいますが、中でもフィリピンとはずいぶんご縁が深いようですね。

青木 15年ほど前ですが、「気」の勉強を兼ねて、各国の民間治療を研究していた時期があったんです。そういった中でフィリピンの一人の神父さんとご縁がありました。この方の教会には連日大勢の人が治療を受けにやって来ます。彼は気功と祈りと薬草で、様々な相談に応えていくのですが、ある時、片足をひねって歩けなくなった若者が、少しの時間さすってもらっているうちにケロリと治って帰ってしまった、というような光景を目の当たりにしました。「これは本物だ!」と思いましたね。それから何度も通って、同様の光景を数えきれないほど見てきました。それだけの腕をもちながら、彼はいつも謙虚で、明るくて、とても大らかなんです。そのうち、教授までしている人だということもわかりました。

鳴海 自然界の力(エネルギー)を活用して行う「気功」ですから、自然の摂理に合った心の持ち主が行うことで、効果がいっそう高まるのだと思います。自然界は共生・共存していて、決してお互いが自己主張をしませんから、そういった神父さんの謙虚な人柄がいっそうの効果につながっているのでしょうね。

青木 力を持っていた気功師が、ある日突然効かなくなってしまう理由に「驕り」があるようです。自然界の摂理に沿った精神状態を、もう長年保ち続けていることが、彼の本当の凄さだと思いますね。
こうして彼とのお付き合いがだんだん深くなっていくに連れて、私たちは衣類や日用品などを日本から持っていくようになりました。現地の皆さんがとても喜んでくれるんです。それである時「今度もまた何か持って来ましょう。何が一番欲しいですか?」と尋ねたら「衣類もお金も、とても有難いです。しかし今フィリピンに必要なのは教育です。」という答えが返ってきました。フィリピンでは、未だに家庭の事情などで学校教育を受けることの出来ない子供たちがたくさんいます。こういう子供たちにも何とか教育を受ける機会を与えてあげたい、というのが神父の切なる願いでした。そこで私たちは、1994年からフィリピンの子供たちに奨学金の援助を行っていくことにしました。初めはほんの数人からのスタートでしたが、少しずつ賛同してくれる方が昨年は202名、今年からは 404名になります。子供達も、神父さんも、とても喜んでくれています。

鳴海 「おかげで無事卒業することが出来ました。」という嬉しいお手紙がたくさん届いていることからも、現地の皆さんのの喜んでいる様子が伝わってきます。青木先生が取り組まれている活動は、まさに「天・地・人々・ワレ一体」ですね。

青木 様々な文化に触れてみて感じることは、土地や歴史などの背景で、宗教や文化が発達し、その違いをお互いに受け入れることが出来ない場合に争いが生じてしまう、ということです。

「天・地・人々・ワレ一体」という方向づけを意識していくことで、皆が一体であることを本当に実感できたら、本当に素晴らしい世の中になっていくのではないでしょうか。
新体道や瞑想、書道の教室、そして、天真奨学会という支援活動などを通して、こういった理想の世界を実現するお役に立つことが出来ればと思います。

鳴海 「天・地・人々・ワレ一体」という方向性に基づいた様々な活動から、社会における青木先生の貢献の大きさを改めて実感いたしました。今日は貴重なお話を聞かせていただき、本当にどうもありがとうございました。

※瞑想教室、書道教室、天真奨学会については、天真会(東京03-5344-9240)へお問い合わせください。

(季刊ぶんぶん通信Vol.28 2008年冬号)

青木宏之 プロフィール

青木宏之先生と鳴海周平

28-9.jpg1936年、横浜市生まれ。
中央大学法学部在学中、日本空手道の故・江上茂師範の指導を受け、空手部で二期連続主将を務める。卒業後も江上師範の要請により各地で空手道を指導。
1963年に最高段位に推挙される。その後、総合的な人間開発のための体術「新体道」を創始。国内外で多数の会員が学んでいる。
2001年 天真書法塾を開講。
現在、新体道協会名誉会長、天真書法塾塾長として、講演や執筆活動を行っている。
著書に「からだは宇宙のメッセージ」(地湧社)「道を創る 道を拓く」(東洋経済新報社)「新・からだ主義宣言」(ビジネス社)「運をつかむ瞑想法」(青春出版社)などがある。