〜Leica Hektor 2.8cm/f6.3 試写レポート〜

※画像はオリジナルから縮小しています。
Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3 絞り:F6.7 / シャッタースピード:1/15秒 / ISO:250 / 使用機材:Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3



『Hektor 2.8cm/f6.3』、ライカ初の28mm広角レンズとして1935年に発売された歴史のある広角レンズ。非常にシンプルな構成ながら暗いF値のお陰か、開放でも驚くほどシャープな像を結ぶと評判のあるレンズです。フィルム時代でも愛用者の多いレンズでしたが、感度の制約が少ないデジタルライカはこのレンズにとっては福音と言って良いでしょう!デジタルとの相性も実に良く、線の細い描写はヌケの良い画像を結んでくれます。今回の試写ではあいにくの曇天でしたが、こうした天気もまた良し。近代的なビルの幾何学的な表面までしっかりと描写してくれました。




Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3 絞り:F6.3 / シャッタースピード:1/90秒 / ISO:160 / 使用機材:Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3

開放での撮影です。周辺減光は少なくないながら、こうしたシチュエーションでは逆に作画に生かせるでしょう。結像面は実にシャープで金属の質感も良く描かれています。ただし、じつはオールドレンズらしい妖しい描写が現れている事にもお気づきになったでしょうか。拡大すると、手前の階段はシャープに描写されていますが中距離でボケ始め、また遠くの人物でピントを結びます。遠景のビルもパッと見るとボケていますが、上の方を拡大するとピントが合っているという実に不思議な描写。像面湾曲や諸収差の関係でピント面が水平に来ていない事が原因と考えられますが、何とも不思議な、騙し画のような描写です。この様な描写は大いに個体差に影響されますが、これが良いと考えられるか、それとも悪いと思えるか。オールドレンズの深みにはまるかどうかの分かれ目です。





Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3 絞り:F8 / シャッタースピード:1/15秒 / ISO:640 / 使用機材:Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3



このように通常使っている上ではあまり収差は感じず、かえって気持ち良いくらいの解像感、コントラストを持っています。開放は暗いですが、広角な分手ぶれをなんとか踏みとどまれる所も有り、そのコンパクトで軽量な事とあいまって使い出は十分あるレンズです。そのスペックから来る印象より、なかなか使いやすいレンズですよ。





Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3 絞り:F6.3 / シャッタースピード:1/45秒 / ISO:160 / 使用機材:Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3

少しアンダーめに振った際の、金属の重さを感じる描写も素晴しいものが有ります。ボディキャップと同じ様なサイズですが、その実力は侮れません。





Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3 絞り:F6.3 / シャッタースピード:1/11秒 / ISO:800 / 使用機材:Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3






Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3 絞り:F8 / シャッタースピード:1/16秒 / ISO:160 / 使用機材:Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3

更に少し絞ると、目を見張る様な描写です。これで1935年製造のレンズなのですから、素晴しいの一言につきるものです。





Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3 絞り:F6.3 / シャッタースピード:1/500秒 / ISO:160 / 使用機材:Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3

いやはや、妖しい描写です。曇天の暗さに開放の周辺減光もあいまって、重く垂れ込めた雲の雰囲気まで伝わってくる様です。雲の流れやわずかな明暗もしっかりと描写しています。





Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3 絞り:F8 / シャッタースピード:1/16秒 / ISO:160 / 使用機材:Leica M9-P + Hektor2.8cm/f6.3








近代的に、実に端正に写るレンズです。最初の印象はそれだけのものでしたが、ただそこはオールドレンズ。その解像力と抜けの良さの裏に、強い個性を隠した1本と言えそうです。古いレンズなので個体差も大いに有るでしょうが、そこまで含めて実に魅力的な描写。コンパクトで取り回しの良い広角レンズという側面も含め、デジタル世代になって更に魅力を増したレンズと言えそうです。



Photo By T.Kimura


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