楽焼 津田友子さん

使う方に楽しんで頂ける器だと思います。

京都には様々な種類の焼物がありますが、
楽焼の特徴を教えて頂けますか?

おおまかに言うと「手捏ね」と呼ばれる技法で、
手とへらだけで成形する抹茶のための軟質施釉陶器なんです。
一般に焼き物と言うと窯にたくさんの器を並べた後に
時間をかけて温度を上げていき、同じくらいの時間をかけて冷まします。
すると、釉薬がしっかり溶けて生地のしまった良い焼きものになります。
それに比べて、楽焼はまず窯を空焚きして
釉薬が一瞬で溶ける温度まで上げて窯の中の環境を整えます。
それから、釉薬がかかった器を1メートルくらいある
“やっとこ”という道具で挟んで一碗ずつ窯の中に入れて焼成いきます。
短い時間でまわりの釉薬だけを溶かして、
釉薬の色の変化を見て窯から引っ張り出すんです。
窯から出した器はすぐに水につけて急冷します。
※「京焼・清水焼」は、京都でつくられるやきものの総称です。

他の焼き物と比べて焼き方が随分と違うんですね!
それによって焼きあがる器はどのようなものになるんでしょうか?

生地自体はやわらかくてふわっとしているけど、釉薬はしっかりと溶けている器になります。
使うごとに抹茶が生地の中に浸透して
どんどん渋く、風合いのある茶碗に仕上がっていくんです。
作られたものを一から使って育てていくのは使い手の方だと思うんです。
使う方に楽しんで頂ける器だと思います。
欠点は柔らかい焼きものなので割れやすいこと。
でも、割れやすいということを頭に入れて使うことによって、
所作(手の仕草)が美しくなります。
お茶室でも使っている方の所作を美しく見せる器であるのかな、と思っています。

津田さんのお茶碗を拝見していると軽やかさを感じますがなぜでしょう?

見た目と実際に持った時の感じの違いはわたしのこだわりのひとつで、
土作りにこだわっています。なぜ土づくりにこだわりを持つかというと、
一つには急熱急冷に耐えられるくらい強くたくましい土じゃないと焼いた時に亀裂をおこすから。
それに耐えられるくらいにするには年数をかけなくてはいけないんですよ。
寝かせば寝かせるほど良い土になるんです。
でもそれだけではいけなくて、色の反応の出方も考えます。
幅広い質感や、反応が出やすい土がないか色々な実験をしています。

焼きあがった器を見て「楽焼って美しい」と思ったんです。

津田さんが楽焼の道に進まれたのは
どうしてですか?

私は元々一般企業に勤めていたんですが、空調管理されたビルの中で
春夏秋冬が感じられずに死んで行くのかな、とあるとき悲しくなったんです。
自分の仕事を「これです」と見せられる仕事がしたいという想いを周囲の方に言っていたら、
萬福堂、楽入窯の吉村楽入先生に拾って頂いたんです。
普通は学校に通って勉強してから弟子入りをして働くんですけど、
吉村楽入先生からは、

「どうせ学校で一年勉強するなら、
どんな技術を勉強したいのか考えて、分かった上で入る一年は全然違う。
うちでみっちり三年間仕事をして勉強して頭をきっちり鍛えてから受験しなさい。」

と言われたんです。
それで、三年間は楽入窯で基礎を勉強させてもらってから学校に受験して入りました。
そうしたらみんなが自分とは違う焼き物をしていて、
初めて自分がやっていた楽焼が特殊だとわかったんです。
その後、釉薬のことを勉強しにまた学校に行き、
卒業後は楽入窯に帰り数年経ってから独立をしました。
実は、独立してしばらくは楽焼以外の焼き物をやっていたんですが、
しばらくして楽焼に取り組む機会を頂きました。
そのとき焼きあがった器を見て「楽焼って美しい」と思ったんです。
それで、楽焼に戻りました。

津田友子の作品だけどいつもと違うのが面白いと思います。

「京とPRODUCT」商品について教えて下さい。
今回の作品は楽のお茶碗とも、
オリジナルで制作されている“baby touch”シリーズとも、
質感が異なるように感じました。

「京とPRODUCT」商品は、パリ在住のプロダクトデザイナー、
芦田秀一さんとのコラボレーションで制作したんですが、
今回、楽焼をそのままコラボ商品にするのはやめようということになりました。
楽の土、焼き方そのままではないんです。
キャンドルホルダー、ワインストッパーの「楽・ひょうたん」は楽の土を使っていますが、
釉薬を使っていないんです。新しい企画なので敢えて釉薬をかけませんでした。
ワインストッパーのゴールド、テーブルウェア4点セットは
“baby touch”シリーズの土を使っています。
ただ、デザインには「楽の茶碗のシルエット」という一貫性を持たせています。
津田友子の作品だけどいつもと違うのが面白いと思います。

キャンドルホルダーはどのように作られたのですか?

この商品は京都の山並みを模した隙間から、
かすかな光が漏れるようになっていて、制作方法としては、
球体を作って、京都の五山を掘り出したんです。
最初は本当に京都の五山の写真を撮って、その通りに線にしていたんですけど、
実際の京都の山はなだらかなんですよね。
五山の特徴が伝わりやすいように少し強弱をつけました。
掘り方の加減によっては上下に外れてしまったり…。
でも、掘り出さなければ光が飛び出してこないので大変でした。

ワインストッパーというのが意外な商品ですね。

そうなんですよ!
これは、芦田さんがパリ在住のデザイナーだからこそのアイデアだと思いました。
私は、種類多くワインストッパーをつくるという発想がなかったので、
パリのデザイナーさんと企画した、というポイントが際立ってよかったです。
中でも、芦田さんのこだわりはクリスタルなんです。
実際のクリスタルを納得いくまで探してくださり、その型をとって作ったんです。
この商品は自分一人ではチャレンジしなかったと思います。

テーブルウェアは
はじめから4点セットということで作られたんですか?

芦田さんから、テーブルコーディネートということで提案がありました。
皆さんにとって手に入れたいと思って頂ける身近なものを作りたかったんです。
シェイカーの腰のあたりは楽茶碗のシルエットをイメージしています。
シェイカーと薬味入れの上を少しへこませたのも、茶碗のシルエットのイメージなんです。
爪楊枝入れも、爪楊枝を入れた時に、
まんなかがへこんで傾斜が出るようにしました。

一番大切なのは、今実際に生きている環境と仕事の両立ですが、
いつかは海外に挑戦したいです。

今後挑戦してみたいことはありますか?

子供を産む前に、京都とイタリアの若手職人の交流事業に参加して
イタリアに行く準備をしていました。
イタリアの職人さんが京都に来て、反対に京都の職人がイタリアに行って
お互いに新しい作品を開発するという企画なんですが、
一度応募して落選してしまったんです。
その年はイタリアの作家さんを受け入れて、その方と一緒に新しい作品を作りました。
そして、「来年は行くで!」と意気込んでいたら、妊娠したんです。
産後も連絡は頂いていたんですが行けなかったので心残りがあります。
一番大切なのは、今実際に生きている環境と仕事の両立ですが、
いつかは海外に挑戦したいです。

最後になりますが、
若い方に楽焼をどのように使ってほしいと思っていらっしゃいますか?

「京とPRODUCT」商品を通じて、
楽焼を身近に感じていただければ嬉しいです。
割れやすい楽焼を扱うことによって所作心持が変わってくるので、
それを感じてもらえたらな、と思います。

(平成27年3月)
リポーター:京もの親善大使“みやびはん”川那辺 藍、尾花 紗也子
カメラ撮影:京もの親善大使“みやびはん”田中 千鶴
京もの親善大使“みやびはん”について、こちらをご覧ください。