放射線とは

1.原子核を理解しましょう

まず、原子から説明します。

原子は、正(+)の電荷を持った原子核と負(-)の電荷を持った電子とで構成されています。
放射線を理解するには、この原子核の構造を理解する必要があります。

原子核は、正(+)の電荷を持った陽子と電荷を持たない中性子とで構成されています。
原子核の性質は、この陽子(pで表します)と中性子(nで表します)の組み合わせによって異なってきます。

参照:財団法人日本分析センター

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2.陽子と中性子の組み合わせ

それでは、原子番号が 1(水素)、2(ヘリウム)、6(炭素)、92(ウラン)の場合を例に説明します。

陽子の数は原子番号と同じで、原子核の性質を表すのに重要なカギとなります。

まずは、水素(Hで表します)です。
水素は、陽子1個だけの原子核と1個の電子(eで表します)で構成されています

次に、ヘリウム(Heで表します)です。
ヘリウムは、陽子2個と中性子2個からなる原子核と2個の電子で構成されています。

炭素(Cで表します)は、陽子6個と中性子6個からなる原子核と6個の電子で構成されています。

ウラン(Uで表します)は、じつに陽子92個と中性子146個からなる原子核と92個の電子で構成されています。

参照:財団法人日本分析センター

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3.原子核には安定と不安定があります

原子核には安定なものと不安定なものが存在します。

この不安定な原子核は、安定になろうとして余分なエネルギーなどを放出して別の原子核になります。
こうして放出されたものを放射線といいます。
放射線には、アルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線などがあります。

参照:財団法人日本分析センター

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4.放射線のまとめ

放射線は、不安定な原子核から放出されるものです。
主な放射線の種類と正体は、以下のとおりです。

①アルファ線 ・・・ ヘリウム原子核

②ベータ線  ・・・ 負の電荷を持った電子

③ガンマ線  ・・・ 電磁波

参照:財団法人日本分析センター

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放射能とは

1.放射能とは

放射能とは何でしょうか。

一般に、原子核が放射線を放出する能力(あるいは性質)をいいます。
不安定な原子核は、安定した状態になるために放射線を放出します。
たとえば、三重水素の原子核は、ベータ線を放出して、安定なヘリウム原子核(陽子2個、中性子1個)になります。

このように、原子核は、放射線を放出することにより、性質の異なる別の原子核になっていきます。
これを原子核の 壊変 といいます。放射能の強さを表す単位としてベクレル(Bqと表します)が使われます。
原子核が1秒間に1個壊変する量が1ベクレルです。

参照:財団法人日本分析センター

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2.放射能はどこにある?

信じられないかも知れませんが、私たちの身のまわりのあらゆる物から放射線が出ています。

それは、たいていの物質にはわずかながら放射性核種を含んでいるからです。
私たちの身体にも放射性核種が含まれています。ふだん飲んだり食べたりする食品にも放射性核種が含まれています。
土の中や空気中にも、建物の壁や床にも放射性核種が含まれています。

放射線を出す能力のことを放射能といいます。
そして、私たちの身のまわりの放射能のことを「環境放射能」といいます。

参照:財団法人日本分析センター

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環境放射線

1.自然放射線と人工放射線

放射線は、発生源によって自然放射線と人工放射線に分けられます。
ただし、放射線自体に変わりはありません。
自然放射線だから身体に良く、人工放射線だから身体に悪いというようなことはないのです。

自然放射線には、地球誕生の時から存在する長寿命の放射性核種や宇宙線によって生成される放射性核種からの放射線があります。

人工放射線には、大気圏内核実験により生成され環境へ放出された放射性核種や、原子力発電や産業利用、医療等から発生する放射線があります。

環境放射能を測定することは、私たちの身のまわりの環境を監視し、原子力災害などに適切に対処するために大切です。

自然放射性核種は、地球の誕生のときから存在するもの(地球起源核種といいます)と宇宙線の作用で生成するもの(宇宙線起源核種といいます)とがあります。

宇宙線起源核種は、現在も生成し続けられています。

参照:財団法人日本分析センター

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2.主な地球起源の放射能

地球誕生のときに数多くの放射性核種も生まれました。

その大半は、放射線を出して安定な元素に移行しましたが、寿命の長い放射性核種が今も残って放射線を出しています。

代表的なものは下記の通りです。

名前記号半減期
カリウム4040K12.7 億年
ルビジウム8787Rb475 億年
トリウム232232Th140 億年
ウラン238238U45.0 億年


参照:財団法人日本分析センター

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3.主な宇宙線起源の放射能

地球に降り注ぐ宇宙線によって、常に放射性核種が生成されています。
これらは、固有の半減期で他の元素に変わって行きますので、環境には生成量とバランスしたほぼ一定量が存在します。

代表的なものは下記の通りです。

名前記号半減期主な生成反応
トリチウム3H12.3年窒素の破砕反応 14N(n,12C)3H
ベリリウム77Be53.3日酸素や窒素の破砕反応
炭素1414C5,730年窒素の破砕反応 14N(n,p)14C
ナトリウム2222Na2.6年アルゴンの破砕反応


参照:財団法人日本分析センター

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4.代表的な人工放射性の放射能

主な人工放射性核種としては、核実験により生成され環境中へ移行した放射性核種、ならびに、原子力発電などの産業活動に起因する放射性核種があります。

核分裂により生成される放射性核種は、数100種類に及びますが、
その大部分は半減期が短いか、 あるいは生成量が少ないため、人間の被ばくに関与する核種は限られます。

重要な核種としては、ストロンチウム90(90Sr)、ジルコニウム95(95Zr)、ルテニウム106(106Ru)、 セシウム137(137Cs)、セリウム144(144Ce)などが挙げられます。

核分裂生成物のほかに、原子炉内で、中性子照射で生成される放射性核種があります。

代表的なものとしてコバルト60(60Co)、炭素14(14C)、トリチウム(3H)などがあります。

その他に、夜光時計や煙探知器など微量の放射性物質を含む民生品、また、医療用や研究用の放射線利用施設で扱われるものなどが存在します。

参照:財団法人日本分析センター