雨の季節です。この季節はまた、街に傘の花が咲き誇るシーズンでもあります。
ことしの梅雨入りは、ほぼ平年並みかやや早めであった。梅雨明けの平年値は、関
東甲信、東海、近畿で7月19日〜20日となっている。とかく雨を厭う人もあるようだ
が、春夏秋冬に雨季を別立てして、日本は四季ならぬ「五季」だと唱える人もいるく
らい。雨に咲く花(=傘)で生活シーンを演出し、せっかくのプラスワン・シーンを
エンジョイしたいもの。 (2003年 7月 鈴木)
(イ)夏の雨
俳句の歳時記などて「夏の雨」といえば、梅雨や夕立でない雨をいう。
季節的に夏の区分をすると、陽暦では5月から7月、歳時記では立夏から立秋の前
日までとなっているようだが、気象条件では6月から8月頃までは妥当なところであ
ろうか。
夏の雨はや噴水をふりつつむ 内藤 吐夫
で、夏の雨について拾ってみた・・・・・
【虎が雨】
虎が涙雨とも。陰暦5月28日に降る雨(または、その前後に降る長雨)のこと。こ
の日は曽我兄弟が討たれた日で、兄十郎の愛人・大磯の遊女虎御前がその死を悲しん
で流した涙が雨となって降るという伝説がある。
この日は、気象的にも「雨の特異日」(よく降る日)とされる。
【梅 雨】
ばいうとも。また黴雨(ばいう)とも表記する。
入梅(6月11日か12日)の日から30日間ほどに降るじめじめした霖雨。雨の降る様子
や時期により、荒梅雨、梅雨湿り、走り梅雨、送り梅雨、戻り梅雨などと
もいう。
鐘撞いて僧が傘さす送り梅雨 森 澄雄
梅雨の間にほとんど雨が降らないと「空梅雨」あるいは「早梅雨(ひでりづゆ)」に
なる。
【夕 立】
ゆだち、よだちなどの呼び方も。
また白雨とかいて「ゆうだち」と読ませる。驟雨(しゅうう)とも。積乱雲による夏
の代表的な雨といえる。急に曇ったかと思うと、大粒の雨が落ち、時には雷鳴が響
き、激しい雨になる。大抵は短時間で止み、何事もなかったように晴れたりする。夕
立は馬の背を分けるとともいわれる。
驟雨過の松の点滴浴びゆくや 石田波郷
【 雹(ひょう)】
または氷雨。積乱雲から降ってくる球形の氷塊で、しばしば雷雨を伴う。直径数ミリ
の小粒のものから、時には鶏卵大のものまであり、農作物等に被害をもたらすこと
も。
雹うって摩周湖の藍かげりくる 石原八束
【 喜 雨 】
雨喜び・慈雨。日照り続きになると農作物が被害を受け、梅雨時の雨量が少ないと水
道水に不安が生じる。草木が枯死したような状態になる。そんなところへ、待ちかね
ていた雨が沛然と降ってくる。万象みな生気を取り戻して慈雨に歓喜する・・・・・
・。
足組んで腕組んで喜雨眺めゐし 安藤百竿
(ロ)夏の季語から・・・・・
【パラソル】
歳時記でパラソル(日傘)とビーチパラソルはともに夏の季語に入っている。ビーチ
パラソルは、砂日傘・浜日傘・海岸日傘ともいう。
雨ありしあとの日傘や菖蒲園 鈴木花蓑
日傘さし孤絶の円に安んずる 草村素子
砂日傘ひらいてすぐにジャズ鳴らす 池田秀水
目を戻すたびにはためく浜日傘 横山房子
【 喜雨亭忌 】
7月17日は俳人水原秋櫻子の忌日。紫陽花忌、群青忌とも。
旅にして遭ふ雨も佳し喜雨亭忌 林 翔
【 えでの花 】
えでは高さ3メートル余になる落葉喬木で、葉は卵円形で先端がとがり、わずかに鋸
歯(きょし)がある。6月頃、長さ5〜6センチの白い合弁花が下垂する。この木材
を傘の「ろくろ」に使ったことから「ろくろ木」の名がある。
また、山?ともいう。
【 紫羅傘 】
字面からみると「紫に染めた絹を張った傘」を連想しそうだが、これを「いちはつ」
と読ませる。また鳶尾草とも書く。アヤメ科の多年草で、高さ30〜60センチ。葉はや
や短広で剣状。
梅雨の頃、カキツバタに似た形の白や紫の花が咲く。
紫羅傘に嶺の雷雨の打ちきたる 水原秋櫻子
【 破れ傘 】
生地が破れた傘にあらず。きく科の多年草。若葉は傘を半開きしたような形で、生長
すると破れ傘を広げたように見える。山地の薄暗い樹下に生じる。
滝近きけはひの霧に破れ傘 岡田貞峰
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