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文・著作権 鈴木勝好(洋傘タイムズ)

Y O U G A S A * T I M E S * O N L I N E
◆◆◆夏の雨◆◆◆





雨の季節です。この季節はまた、街に傘の花が咲き誇るシーズンでもあります。
 ことしの梅雨入りは、ほぼ平年並みかやや早めであった。梅雨明けの平年値は、関
東甲信、東海、近畿で7月19日〜20日となっている。とかく雨を厭う人もあるようだ
が、春夏秋冬に雨季を別立てして、日本は四季ならぬ「五季」だと唱える人もいるく
らい。雨に咲く花(=傘)で生活シーンを演出し、せっかくのプラスワン・シーンを
エンジョイしたいもの。                 (2003年 7月 鈴木)


(イ)夏の雨

俳句の歳時記などて「夏の雨」といえば、梅雨や夕立でない雨をいう。
 季節的に夏の区分をすると、陽暦では5月から7月、歳時記では立夏から立秋の前
日までとなっているようだが、気象条件では6月から8月頃までは妥当なところであ
ろうか。


  夏の雨はや噴水をふりつつむ      内藤 吐夫



で、夏の雨について拾ってみた・・・・・



【虎が雨】

虎が涙雨とも。陰暦5月28日に降る雨(または、その前後に降る長雨)のこと。こ
の日は曽我兄弟が討たれた日で、兄十郎の愛人・大磯の遊女虎御前がその死を悲しん
で流した涙が雨となって降るという伝説がある。
この日は、気象的にも「雨の特異日」(よく降る日)とされる。


【梅 雨】

ばいうとも。また黴雨(ばいう)とも表記する。
入梅(6月11日か12日)の日から30日間ほどに降るじめじめした霖雨。雨の降る様子
や時期により、荒梅雨、梅雨湿り、走り梅雨、送り梅雨、戻り梅雨などと
もいう。



  鐘撞いて僧が傘さす送り梅雨     森 澄雄


梅雨の間にほとんど雨が降らないと「空梅雨」あるいは「早梅雨(ひでりづゆ)」に
なる。



【夕 立】

ゆだち、よだちなどの呼び方も。
また白雨とかいて「ゆうだち」と読ませる。驟雨(しゅうう)とも。積乱雲による夏
の代表的な雨といえる。急に曇ったかと思うと、大粒の雨が落ち、時には雷鳴が響
き、激しい雨になる。大抵は短時間で止み、何事もなかったように晴れたりする。夕
立は馬の背を分けるとともいわれる。


  驟雨過の松の点滴浴びゆくや         石田波郷



【 雹(ひょう)】

または氷雨。積乱雲から降ってくる球形の氷塊で、しばしば雷雨を伴う。直径数ミリ
の小粒のものから、時には鶏卵大のものまであり、農作物等に被害をもたらすこと
も。


  雹うって摩周湖の藍かげりくる       石原八束




【 喜 雨 】

雨喜び・慈雨。日照り続きになると農作物が被害を受け、梅雨時の雨量が少ないと水
道水に不安が生じる。草木が枯死したような状態になる。そんなところへ、待ちかね
ていた雨が沛然と降ってくる。万象みな生気を取り戻して慈雨に歓喜する・・・・・
・。


  足組んで腕組んで喜雨眺めゐし       安藤百竿








(ロ)夏の季語から・・・・・

【パラソル】


歳時記でパラソル(日傘)とビーチパラソルはともに夏の季語に入っている。ビーチ
パラソルは、砂日傘・浜日傘・海岸日傘ともいう。


   雨ありしあとの日傘や菖蒲園        鈴木花蓑


   日傘さし孤絶の円に安んずる        草村素子


   砂日傘ひらいてすぐにジャズ鳴らす     池田秀水


   目を戻すたびにはためく浜日傘       横山房子




【 喜雨亭忌 】

 7月17日は俳人水原秋櫻子の忌日。紫陽花忌、群青忌とも。


   旅にして遭ふ雨も佳し喜雨亭忌        林 翔



【 えでの花 】

えでは高さ3メートル余になる落葉喬木で、葉は卵円形で先端がとがり、わずかに鋸
歯(きょし)がある。6月頃、長さ5〜6センチの白い合弁花が下垂する。この木材
を傘の「ろくろ」に使ったことから「ろくろ木」の名がある。
また、山?ともいう。



【 紫羅傘 】

字面からみると「紫に染めた絹を張った傘」を連想しそうだが、これを「いちはつ」
と読ませる。また鳶尾草とも書く。アヤメ科の多年草で、高さ30〜60センチ。葉はや
や短広で剣状。
梅雨の頃、カキツバタに似た形の白や紫の花が咲く。


   紫羅傘に嶺の雷雨の打ちきたる      水原秋櫻子



【 破れ傘 】

生地が破れた傘にあらず。きく科の多年草。若葉は傘を半開きしたような形で、生長
すると破れ傘を広げたように見える。山地の薄暗い樹下に生じる。


   滝近きけはひの霧に破れ傘         岡田貞峰






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