心斎橋みや竹 我が再生の記

心斎橋みや竹 kasaya.com 我が再生の記 【第五話】 寂 寥 の 音
傘屋の和ちゃん、我が再生の記「そして老舗は甦った・・・」

- 第 5 話 寂 寥 の 音-





    そして…

  刻一刻と
  閉店の日が近づいてきた。

  心斎橋への愛着は
  私にだって父や母に劣らずあった。

  私もここで商売を覚え、
  一人前にさせてもらったのだから。
 
  1ヶ月前には
  店じまいを公にしたが、
  最後の営業日には
  たくさんのお客さんが
  来てくださった。

  その一人ひとりに
    深々と頭を下げ、
      別れを告げた。
 
  この日、97年の1月5日をもって、
  心斎橋での『みや竹』は
  その歴史に終止符を打った。

  店を閉め、
  運送屋が来て、

  什器から何から何まで
  すべて運び去ったあとの
  がらんどうの店舗に
  私は一人佇んでいた。 


ぱーんっ。 


  両手で叩いてみたら、
  ひどく乾いた、そして冷たい音が響いた。 


    これで何もかもなくなった。
    もうこれで、この中に入ることもない。


  自分は脳天気な人間だと思っていたが、
  やはり平静ではいられなかった。

    その寂寥感と同時に、

  あとには引けない思いも
  また
      強く抱いたのだった。 

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 心斎橋にない心斎橋みや竹…なぜ




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