■印鑑 激安への歴史

以前、印鑑がまだまだ高い商品として取り扱われていたころは、印鑑の販売価格に占める材料費(印材代)というのは実はほんのわずかなもので、その販売価格のほとんどが「彫刻費用=技術料」となっておりました。

長い間訓練して体得した技術で、長時間かけて1本1本手作業で彫刻する時代でしたから、その人件費を考えれば、高いとはいえ決してお客様を裏切るような価格ではなかったと思います。

しかし、職人が手作業のみで製造していた印鑑業界にも技術革新はやってきました。

当初は「
光電式」と呼ばれる機械で、筆で書いた文字をあらかた自動的に彫刻する機械が普及し、印鑑の製造工程は飛躍的に効率化されました。

昭和の高度成長期の旺盛な印鑑需要はこの「光電式」彫刻機がなければ供給できなかったであろう、といわれております。

そののち、90年代ころからパソコンの急激な進歩・普及に伴い、光電式からコンピューター制御の「
ロボット彫刻機」へと移り変わってゆきます。

この「ロボット彫刻機」の出現が印鑑屋を非常に「楽」にさせてくれた反面、諸刃の剣となって、アウトサイダーを呼び込むキッカケとなったのです。

ロボット以前の彫刻機は、「彫刻する文字を自分で書かなければならない」という「ハンコ屋の仕事」がまだ残っておりました。
また、細部については彫刻できない部分もあり、そこは手作業で仕上げていたのです。

しかしながら、ロボット彫刻機はコンピューター内臓のフォント文字の利用で、いとも簡単に印鑑が彫刻できてしまうという、専門職を必要としない現象を生み出してしまったのです。

このロボットが出回リ始めた初期の頃が、それまでのハンコ屋の一番よい時代だったと思います。
作業の相当部分を自動化して、価格は手彫り時代とそう変らなかったのですから。

つまり、「大変儲かるハンコ屋さん」が多く出現したのです。

しかし、この夢の時代も長くは続きません。

「今や印鑑は誰にでも彫刻できる」ことを知ったアウトサイダー企業が、印鑑の利益率の高さに目をつけたのです。

たとえばそれまでは、1万円の印鑑の材料代はどんなに高くても千円も掛からない程度が普通でした。
つまり9千円以上が「特殊技術料」=利益だったのです。

「え〜!儲けすぎっ!!」と思われるかもしれませんが、印鑑の職人でしか出来ない仕事だったのですから、これは当然といえば当然の報酬だったのです。

ただし、これは「完全手彫り」であれば、のお話です。

全自動に近い機械でこの価格はどう考えてもおかしいと思います。

ですが、印鑑業界からはわざわざ儲かるものを安くするチャレンジャーはほとんど出なかったようです。

そこに商売上手な企業家が目をつけたわけです。
老舗の印鑑屋にしてみれば「黒船の来襲」です。

彼らが仕掛けたビジネスは
「激安チェーン店」の大量出店です。

「半額で売ってもこれだけ儲かる!!」と派手に宣伝して脱サラのオーナーを数多く募集し、大量の出店攻勢をかけ始めたのです。

「1万円の印鑑を5千円で売る。それでも利益は4千円以上あります。実に8割の利益率です。彫刻は機械がやってくれます。お客様は向こうからやってきます。」

このビジネスモデルの宣伝に実に多くの人が乗りました。
そして企業家はロイヤリティーや材料供給代、機械のリース代で大きな利益を上げたのです。

これで一般的な印鑑の価格は「半額」にまで引き下げられました。

老舗の印鑑屋にとっては大打撃でしたが、世の中の変化はこんなものでは許してくれませんでした。

あらたな印鑑屋「激安チェーン店」にとっても美味しい話が長く続いたわけではありません。
激安とはいえ、実店舗を構えた地域密着のリアルのお店です。

最初は面白いように売れたかもしれませんが、徐々に「印鑑」という商品がもつ特性が彼らのサクセスストーリーの実現をじゃますることとなったはずです。

印鑑は消耗品ではありません。
一度作ると大切に長く使う典型的なものです。


当然ながら、半額などのセールで一時的にお客様が押し寄せたとしても、需要が一巡すると、そうなかなかリピーターがあるわけでもありません。

それに既存の老舗も生き残りをかけて価格競争を挑んだところもあるでしょう。

つまり地域で飽和状態に陥ることになったわけです。

そこに新たに出現した第2の「黒船」・・・
そうです。「
インターネット販売のハンコ屋」の出現です。

地域の概念がないインターネットですから、地域の飽和状態も当分の間はありません。

日本全国どこでもお客様になり得ます。

最初にインターネットでの販売に挑戦した会社はあっと言う間に大きな利益を上げて、業界でも有名になりました。

そうなれば当然、「後追い」組が雨後の竹の子のように次から次へと参入します。

その中に、印鑑屋としての価格体系「彫刻代」=「技術料」という考えを全く持たない会社が出現したのです。

これが「10分の1価格」の秘密です。

つまり、材料代+作業時間給+諸経費で価格を設定するのです。

材料の大量調達で材料代を圧縮したり、中には印材メーカーが参入し、材料代数百円に彫刻時間給として15分なら300円などと、これまでの常識では考えられない価格設定を行って販売するようになったのです。

こうして、今現在では
手彫りの技術を売りにする昔ながらの老舗店激安チェーンの新規参入店、そして大量生産大量販売のコンセプトでネット販売を始めた超激安店の大きく別けて3種類の価格体系が混在しているという状況です。





【機械彫刻と手彫り彫刻】


■機械彫刻の利点欠点について。

機械彫刻の利点はその圧倒的なスピードと、デザインに忠実な彫刻の正確さです。
安定した品質をいつもで得ることができます。

また、100分の1ミリ単位で彫刻針が動きますから、非常に高度な彫刻も可能ですので、
文字デザインの幅が広がります

逆に機械彫刻の欠点は、コンピューターの記憶能力の高さによって「
同じ印影が簡単にできてしまう」という、本来「唯一無二」であるはずの印鑑を、下手をすれば無意味なものにしてしまうかもしれない再現性があるということでしょうか。


当店はその利点を生かして、かつ欠点を補うため、次のような製造方法を取っています。


印影(文字デザイン)は毎回1本1本手作業で作ります。
どんなに多い苗字やお名前(「鈴木」様、「佐藤」様など)であっても同じものが作れないように、デザイン工程には大幅に「人の手」を入れます。

印影デザインが違えば、機械はデザインに忠実に彫刻するだけですので、同じ印影の商品ができることは絶対にございません。





■完全手彫り彫刻の利点欠点について。

完全手彫り彫刻の利点は、作り手の個性が発揮されることと、その細かい彫刻技術=職人技がもたらす高級イメージでしょう。

では手彫り彫刻の欠点はといいますと、まず第一に「
職人ワザにも上手・下手がある」というところです。
上手な職人の手彫りでないと、貧相な印影になりかねません。

また、100%職人の手作業ですから、その職人の状態によって商品にムラがあってもおかしくはありません。

したがって、完全手彫りで常に最高の彫刻が出来る人の印鑑だと、確かにそれだけで価値があるといってもよいかもしれませんが、そのような方の手彫りの品ですと、お値段も最高になって当然です。

値段が高いことは一概に欠点とは言えませんが、気軽にお買い上げになれるものではないとは言っても差し支えないかと思います。



当店では、印鑑はそれを彫刻する手順より、彫刻したあとに捺印した文字の出来栄えがもっとも大切だと考えておりますので、「良い品をより安く」お届けできる機械彫刻の採用に踏み切った次第です。



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