蒸留器。イメージ的に、ちょっと斜めにカットしてしまっているのですが、左上の人の頭の大きさを見れば、全体の大きさがイメージしていただけるかと。業務用の蒸留器はすごいです。GRAPPA
グラッパは「滓とりブランデー」と呼ばれる蒸留酒で、その名の通り、ワイン製造のために醗酵して、モスト(果汁)を絞った後に出てきた搾りかすを再醗酵し、蒸留します。 そのため、日本の酒税法では【ブランデー】との記載が義務付けられています。
葡萄の搾り滓..."カス"というとちょっと抵抗があるので、ここではイタリア語のヴィナッチェ(VINACCE)と書きますが、その原料はすべてワイナリーから運ばれてきます。蒸留するにもやはり新鮮さが大切で、ワイン醸造のために絞り取った後すぐに運び込まれるためヴィナッチャは発酵を続け、トラックの荷台の中でもあったかいのだそう(※果皮を漬けて発酵する場合のみ)。そうして運ばれたヴィナッチャは銘柄ごとだったり、ブドウ品種ごとだったりと蒸留の前に再醗酵されます。黒葡萄は、マセラシオンすることが多いので、すでに発酵を開始した状態でやってきます。なのでここでは、「再醗酵」という言い方をします。
再醗酵中の倉庫は温度が高く、むんとした匂いが漂うそうです。
次に蒸留器に運ばれるわけですが、グラッパを作る際、このヴィナッチェには一切の添加が許されていません。 水をくわえて水分を多くしたりすることができない他、同じ理由でヴィナッチェの洗浄すらも禁止されています。
ちなみに、ヴィナッチェに水をくわえて再醗酵した飲み物をヴィネッロと呼び、古くはワインが高級品で飲めなかった時代の労働者階級の重要な飲み物だったのですが、 以前はヴィネッロを蒸留したものをアックアヴィーテ・ヴィニカ(Acquavite vinica)と呼び、グラッパと区別します。これは、品質において唯一定められた法律で、残るは体に害を及ぼす成分などの含有量に関して若干の規定を定めるまでにとどまっています。一方酒税を徴収するための規定は事細かに定められています。これに関しては世界共通のようです。
マーケットに流れるグラッパには2通りあり、ワイナリーが自社で生産したものと、グラッパ製造メーカーがヴィナッチェを買取生産したものがあります。
ここでいうワイナリーの自社生産とは、ほとんどが、グラッパ専門の製造業者か、もしくは近隣で蒸留施設を持つワイナリーに、自社ワインのヴィナッチェを運び込み蒸留したものをボトリングして販売しているものです。 というのも、蒸留器は大変特殊で、蒸留器自体は近代化しているとはいえ、蒸留には長い経験が必要です。 そのため、グラッパのためにだけ、蒸留器と技術者を抱えるワイナリーは意外と少なく、ほとんどの場合は業者か、近隣の蒸留器を保有するワイナリーに依頼しています。 特徴があるとすれば、ワイナリー製造のものは、自社の銘柄ごとにヴィナッチェを分けて蒸留した銘柄ものが多く、グラッパ製造業者のものは近郊のワイナリーからブドウ品種ごと、もしくは生産地区ごとに分けられたものを使用するため、品種ごとのグラッパを製造するところでしょうか。
当店では、そのどちらのものも用意しており、もちろん、どちらも非常にすぐれた、逸品とも呼ぶべきものです。
小さなブドウ農家がたくさんあったような時代は、逆に移動式蒸留機で農家を行き来した蒸留業者もいたそうで、リヤカーのようなものに蒸留器が設置されたものも開発されたのだとか。図面でしか見たことはありませんが、イメージ的に「ぽん菓子」という米菓のおじさんみたいな感じかしら、と勝手な想像をしてしまいました。